ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました

奉行所を出たおれと新はケガをした城島永太が手当てを受けているという養成所によって帰ることにした。ほぼなし崩しだったとはいえ今回の騒動に関与することになったわけだし、見舞いくらいはいっておきたかった。

それを伝えると朱金は、永太のいる養成所の場所を教えてくれた。
養成所の所長は刀舟斎(とうしゅうさい) かなうという人らしい。

朱金の名前を出せば永太に会わせてくれるだろうということだった。



ー養成所ー

新「すみませーん」

「おう、今、ちょうど手が離せないんだ、ちっとばかし待っといてくれ。」

新の呼び掛けに少女の声で返答があった。

悠「養成所も生徒がやってるんだな」

新「そうだよ。職員棟には大人のお医者さんもいるけどね。命に関わらないケガや病気なら、お医者の勉強をした子が見てくれるんだよ」

悠「つまり保健委員みたいなもんか」

「おう、待たせたな。」

声に顔を向けるとそこには明らかにサイズのおかしい白衣を羽織った小柄な少女が立っていた。

新「わぁ、かわいい」

白衣の少女「ん?見たところ、悪いとこがありそうには見えないんだが……」

悠「君はこの養成所の子か?所長の刀舟斎さんを呼んでもらいたいんだけど?」

白衣の少女「は?」

悠「あー?だから…」

かなう「だから。私が所長の刀舟斎だ!」

悠「……えっ?」

新「ずいぶんとちっちゃな所長さんだね。」

かなう「お前さん、何年だ?」

新「甲級二年め組だよ」

かなう「私は甲級三年だ」

新「えっ、じゃあ先輩なの?見えなーい!」

かなう「さっきから失礼な奴らだなぁ」

悠「えーと、刀舟斎さん」

かなう「用件はなんだ?病気か?怪我か?」

悠「いや、どっか悪いわけじゃなくて見舞い。」

かなう「ああ見舞いか。誰の?」

新「城島永太ってひとなんだけど」

かなう「城島ぁ?」

悠「なにっ…」

かなう「帰れ帰れ!」

悠「うぉ見た目に合わず強い力…」

新「ちょ、ちょっと待ってよぉ」

かなう「どうせお前らも執行部か火盗の手先なんだろ!」

悠「違うって。」

かなう「だったらなんでここに永太がいると知ってるんだ!」

悠「おれたちは北町奉行の遠山さんから紹介されて」

かなう「うん?朱金がどうしたって?」

悠「おれたちは城島永太がケガをした事件の関係者だ。」

かなう「なんだよ。そんならそうと先にいえよ。さっきから事情聴取だなんだと執行部や火盗の奴からひっきりなしに来やがってな。たしかに永太は事件の重要な参考人かもしれないがその前にケガ人だ。その辺の配慮がやつらにゃまるでありゃしねぇ」

悠「そうだな。」

かなう「ただな、その永太だがいまさっきやっと寝ついたところだ。」

新「それじゃ会えないね。起こしちゃかわいそうだ。」

悠「だな。」
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