ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】
ー大江戸学園:とある武家屋敷ー
とある武家屋敷の庭。銀に輝く月明かりを浴びて、柳宮十兵衛が空を見上げていた。
十兵衛「くっ……月明かりが染みるのか……疼く」
十兵衛は小さく呻き、眼帯の上から目をさすった。
呟くと十兵衛はゆっくりと目を閉じた。
~~
十兵衛の父『どうであった、兜馬殿の後継ぎは?』
幼い十兵衛が京の小鳥遊道場から片目を押さえて出てくる。それを待ち構えていた十兵衛の父。
十兵衛『散々に打ちのめしてやりました』
十兵衛の父『はっはっは。容赦がないな。』
十兵衛『全力で当たらねば、真の実力など見えはしません』
十兵衛の父『ふふ、母親譲りの烈しさよ。む。十兵衛、お前、目を怪我しているのか?』
見れば押さえた手から溢れるように鮮血が滴り落ちていた。
十兵衛『……はい。奴めの突きを受けました』
十兵衛の父『油断か?』
十兵衛『いえ。これはあいつの実力。カウンターとは言え、その鋭さにかわすこと叶いませんでした』
十兵衛の父『そうか』
十兵衛『父上、あいつは強くなります!』
~~
十兵衛「どうだかな……ふふっ」
十兵衛は再び眼帯を撫でながら笑った。
ー大江戸学園:大通りー
悠「はっくちゅん!てやんでー……」
吉音「大丈夫?くしゃみ……だよね?」
悠「くしゃみだよ。誰かが噂でもしたかな?」
吉音「誰かな?」
悠「さぁ?怖い人じゃないなら良いけど」
吉音「ふふっ」
おれと吉音はかなう先生の養生所からの帰りだった。
おれたちの足取りと吉音の引く銀シャリ号の蹄の音だけが人通りの無くなった夜道に響いていた。
悠「あん?」
指先に触れてきた吉音の指におれは声をあげた。
吉音「手をつないでもいい?」
悠「もちろん。」
吉音「えへへ♪」
吉音はうれしそうにおれの手をにぎりしめた。
柔らかな手だった。
悠「……」
吉音「今日はお月さまが綺麗だね」
悠「そうだな……」
ふたりはそれだけ黙って歩いた。
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
悠「それじゃあな。送ってくれてありがとうな」
吉音「うん。あたしは悠の用心棒だからね。」
悠「それだけか?」
吉音「え、えっと……」
悠「…………」
吉音「あっ……」
おれは黙って吉音の唇を奪った。
ほんの一瞬で、ほんの少しかすっただけのようなキスだった。
悠「……」
吉音「あ、あ、あ、ありがとう?」
悠「ありがとうは変だろ。むしろこっちがご馳走様だ」
吉音「あは、あはは……そうかな?」
悠「全部……終わったらこの続きをするか?」
吉音「え……」
悠「あー、もちろんお前が嫌じゃなくて、色々と受け入れてくれるんならだけど」
吉音はしばらく落ち着かなく俯いていた。
そしておもむろに顔をあげると、
吉音「イヤじゃない……よ」
悠「そか……よかった」
吉音「それじゃ……おやすみ」
悠「おやすみ……」
ぎこちない二人をまぶしいぐらいの月が照らしていた。
とある武家屋敷の庭。銀に輝く月明かりを浴びて、柳宮十兵衛が空を見上げていた。
十兵衛「くっ……月明かりが染みるのか……疼く」
十兵衛は小さく呻き、眼帯の上から目をさすった。
呟くと十兵衛はゆっくりと目を閉じた。
~~
十兵衛の父『どうであった、兜馬殿の後継ぎは?』
幼い十兵衛が京の小鳥遊道場から片目を押さえて出てくる。それを待ち構えていた十兵衛の父。
十兵衛『散々に打ちのめしてやりました』
十兵衛の父『はっはっは。容赦がないな。』
十兵衛『全力で当たらねば、真の実力など見えはしません』
十兵衛の父『ふふ、母親譲りの烈しさよ。む。十兵衛、お前、目を怪我しているのか?』
見れば押さえた手から溢れるように鮮血が滴り落ちていた。
十兵衛『……はい。奴めの突きを受けました』
十兵衛の父『油断か?』
十兵衛『いえ。これはあいつの実力。カウンターとは言え、その鋭さにかわすこと叶いませんでした』
十兵衛の父『そうか』
十兵衛『父上、あいつは強くなります!』
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十兵衛「どうだかな……ふふっ」
十兵衛は再び眼帯を撫でながら笑った。
ー大江戸学園:大通りー
悠「はっくちゅん!てやんでー……」
吉音「大丈夫?くしゃみ……だよね?」
悠「くしゃみだよ。誰かが噂でもしたかな?」
吉音「誰かな?」
悠「さぁ?怖い人じゃないなら良いけど」
吉音「ふふっ」
おれと吉音はかなう先生の養生所からの帰りだった。
おれたちの足取りと吉音の引く銀シャリ号の蹄の音だけが人通りの無くなった夜道に響いていた。
悠「あん?」
指先に触れてきた吉音の指におれは声をあげた。
吉音「手をつないでもいい?」
悠「もちろん。」
吉音「えへへ♪」
吉音はうれしそうにおれの手をにぎりしめた。
柔らかな手だった。
悠「……」
吉音「今日はお月さまが綺麗だね」
悠「そうだな……」
ふたりはそれだけ黙って歩いた。
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
悠「それじゃあな。送ってくれてありがとうな」
吉音「うん。あたしは悠の用心棒だからね。」
悠「それだけか?」
吉音「え、えっと……」
悠「…………」
吉音「あっ……」
おれは黙って吉音の唇を奪った。
ほんの一瞬で、ほんの少しかすっただけのようなキスだった。
悠「……」
吉音「あ、あ、あ、ありがとう?」
悠「ありがとうは変だろ。むしろこっちがご馳走様だ」
吉音「あは、あはは……そうかな?」
悠「全部……終わったらこの続きをするか?」
吉音「え……」
悠「あー、もちろんお前が嫌じゃなくて、色々と受け入れてくれるんならだけど」
吉音はしばらく落ち着かなく俯いていた。
そしておもむろに顔をあげると、
吉音「イヤじゃない……よ」
悠「そか……よかった」
吉音「それじゃ……おやすみ」
悠「おやすみ……」
ぎこちない二人をまぶしいぐらいの月が照らしていた。