ｰ大江戸学園:大御所の間ｰ

大御所「公開処刑に失敗した上、罪人を取り戻されたというのか?」

穏やかながら重い声がすだれの向こうから響いた。

酉居「申し訳ございません。弁解の言葉も……」

大御所「もおよい、酉居。顔をあげよ」

酉居「はっ……」

大御所「過ぎたことを責めても仕方がない。どれだけ頭を下げたところで時間は巻き戻らぬ。お前は精いっぱいよくやった」

酉居「もったいないお言葉……」

大御所「精いっぱいやった結果がアレなのだ」

酉居「大御所……?」

大御所「つまりお前とはその程度の器だということ。これまで目をかけてやったが、これで踏ん切りがついたわ」

酉居「は……?」

大御所「ハッキリ言わぬと分からぬか?お払い箱ということよ」

酉居「なっ!?お、お待ち下さい、大御所!今一度のチャンスをお与えください!次こそは必ず期待に添う……」

大御所「もおよい。お前のその言葉はとうに聞きあきておる」

酉居「し、しかし!今、大御所に見捨てられては私は……」

大御所「知らぬ」

酉居「大御所、大御所とは……初代将軍徳川出雲様なのではございませんか?」

大御所「…………」

酉居「私はそう信じて大御所につき従ってまいりました。出雲様の言葉であるが故……」

大御所「出雲、出雲とうるさい奴よ」

酉居「出雲様……ではないというのですか?わ、私を欺していたのですか?」

大御所「欺した?酉居、お前が勝手に勘違いをしていただけであろうが」

酉居「馬鹿な……馬鹿な……ならば俺はなんのために今まで!?出雲様と共に……士族による学園の再興を行うという俺の希望は!?」

大御所「フフフ。とんだ独り相撲を取っていたようだな、酉居よ」

酉居「な、ならば……あなたは、いや、お前は何者だっ!?」

大御所「名乗る必要があるか、お前に?それより先ほどのお前の願いをかなえてやろう」

酉居「願い、だと?」

大御所「お前はもう一度チャンスをと哀願したろう。くれてやろうというのだ。役立たずには役立たずなりの別の使い道がある」

酉居「くっ……愚弄するか!」

酉居は剣を抜き、すだれに手をかけた。

大御所はパチンと指を鳴らした。

その瞬間だった。

酉居「ぐ、ぐわっ!?な、何を……」

背に強烈な衝撃が走り、酉居は言葉半ばにその場に崩れ落ちた。

輝「ふふふん。ナイスエレキだぞ、キガイ♪」

キガイ『ウナー』

白フード「こちらも十分動きますね。」

死の面『……』

横たわる鳥居を愉快そうに見下ろすのは、何と瓦版屋の比良賀輝と白フードを被った者であった。

大御所「お前の欲しがっていた魔神のコア、その男の身体をくれてやろう」

輝「え、マジで?」

大御所「不服か?」

輝「とんでもない!老中酉居様ならコアとして申し分ないよ!」

大御所「すぐに動かせるか?」

輝「もちろんさ!いい手伝いと部品が沢山届いたからね」

白フード「いえいえ、こちらもおかげで剣魂のコアシステムや生態コアシステムを学ぶことができましたから」

輝「ふふん、もう陰口新聞には飽きててね。そろそろ大暴れしたかったんだよ。あはははは!おいらのライフワーク、大魔神いよいよ始動だぁ!」