ｰ大江戸城:城前広場ｰ

悠「げほっ……ま、まぁ、よくクチバミ殴り飛ばしたよな」

朱金「わはは。どうだ、かっこよかっただろ?」

越後屋「あない力が有り余ってるんやったら、とっとと縄を千切って逃がしてほしかったわ」

朱金「そういうな、いろいろ思うところがあんだよ、俺にも」

悠「思うところって?」

朱金「ああ。このまま磔になってやろうかとも思った」

吉音「ええっっ!?」

朱金「正直何が正しいのかが分かんなくなっちまってよ。俺が磔になりゃ、真留の奴が出世できんのかな、とかな」

真留「と、遠山様!」

朱金「でも、悠や真留やいろんな連中も助けに来てくれただろ?その顔を見てたら、やっぱ磔は嫌だなって思った」

真留「あ、当たり前です!」

寅「ふんっ」

越後屋「ちょっと、悩むのは勝手やけど、うちまで巻き込まんといてくれる?」

朱金「お前のとこは、イチが助けに来ただろう?」

はじめ「…………」

越後屋「ま、まぁ、そらそやけど」

はじめ「…………」

越後屋「……おおきにな、はじめ。それにみんなも」

はじめ「旦那が無事だったらそれで、いい」

用心棒たちも口々に同意する。

越後屋「よろし。帰ったら宴会にしましょ!小鳥遊さんも遠山さんも来てくんなはれ｣

吉音「わーい、ごつそうだぁ!」

「静まりなさい!」

その時だった。勝利に湧く広場にマイクを通した鋭い声が響いた。

悠「あー……?」

現れたのは飛鳥校長代理だった。

鼎「これは一体何事ですか!よりにもよって大江戸城のおひざ元での、このような騒ぎ。遺憾千万です!」

朱金「なんだ?いつもの飛鳥ちゃんと雰囲気が違うな」

鼎「今回の処罰は執行部の下した正当な処分です。それを不服であるからと妨害するなど法への冒涜以外の何ものでもありません。私は校長代理として、学園秩序を預かるものとして、このようなテロ行為を絶対に許しません」

男子生徒A「裁判もなく磔にするのが正当な処分だと言えるのか!」

男子生徒B「執行部は生徒の代表じゃないのか!」

鼎「黙りなさい!大江戸学園の生徒はすべて大江戸学園に対し忠誠を尽くさなくてはなりません。将軍、執行部への反逆は学園への反逆と同じです」

男子生徒A「一方的すぎる!」

鼎「昨今の学園の治安状況は目にあまります。このままでは学園制度の崩壊につながりかねないと判断しました。ここに校長権限による緊急事態宣言を発令します」

悠「緊急事態宣言?」

越後屋「えらい物騒なことをいいだしましたな」

吉音「…………」

鼎「将軍の権限を強化して治安の正常化を行います」

男子生徒B「その将軍がいないじゃないか!」

鼎「将軍はいます。徳河さん、前へ」

校長代理に促され演台には徳河詠美が姿を現した。