ｰ大江戸城:城前広場ｰ

クチバミ『マムゥーー!』

朱金「ったくしつけぇな。」

寅「飼い主によく似た剣魂だな。遠山、ソレで行くぞ」

朱金「おっ?よぉーし!」

寅と朱金はニッと笑うと傍らに転がっていた磔柱を掴む。

朱金「う、うおおおおおっっ!!」

寅「はあぁぁぁぁぁっっ!!」

磔柱はもともと朱金達を縛りつけるためのもので一番長い部分で2メートルほどある。

木材を組み合わせて作られていて重量も相当なもののはずだ。

しかし、寅と朱金は雄叫びと共にそれを持ち上げた。

越後屋「なんちゅう馬鹿力……」

クチバミ『マ、マムーー!?』

朱金「くたばれ、マムシ野郎ーーっ!!」
寅「くたばれ、マムシ野郎ーーっ!!」

朱金と寅は磔柱を持ち上げると左右からクチバミに向かって薙ぎ振るった。

クチバミ『マ、マママママムーー!』

寺の鐘を叩くような音が広場に響いた。クチバミのウロコが剥がれ散るのが少し離れたこの場所からでも分かった。

クチバミ『マ、ママ……』

全ての鎖が力なく大地に落ち、コアの光が失われた。クチバミはその駆動を止めた。

そして何度かノイズを走らせながら、輪郭を歪ませてその姿を消してしまった。

寅「ふっ」

朱金「ふんっ」

酉居「ク、クチバミ……!?」

吉音「えぇえやーーっ!」

酉居「うぉっ……と、徳田!?」

背後から銀シャリ号の前脚が落ちてくるのを間一髪でかわす酉居。惜しい!

吉音「悠!」

悠「おう、吉音」

吉音「さぁ、降参する?」

酉居「ふ、ふざけるなっ!」

悠「部隊は壊滅、頼みの剣魂もやられちゃったじゃん。お前ひとりでおれたちや北町奉行所、寅、それに生徒たちとやりあうつもりか?」

酉居「くっ……」

悠「まぁ、大将らしく首かけてやるんだったらおれがタイマンで相手してやるけど?」

今の酉居はおれたちに囲まれてまさに四面楚歌状態だった。

酉居「今日のところは引き下がってやる」

悠「負けてどうしようもないんで逃げさせてくださいだろ。」

吉音「どうする?」

悠「まぁ、こいつの身柄を抑えたところでどうしようもないしな。むしろ手元に置いとくと不幸を呼びそうだ」

吉音「それじゃ、ばいばい」

酉居「ちっ……この借りは必ず!」

酉居は身ひとつでその場から城の方へと逃げ出した。

執行部の部隊も散り散りになって戻っていく。

同時に遠山朱金奪還に参加した生徒たちから勝ち鬨があがった。

悠「ふうー」

おれは大きく息をついて刀を鞘に戻した。

吉音「い、よいっしょ」

吉音も刀を収めて銀シャリ号から飛び降りる。ちなみにピンク。何がとは言わないがピンクだった。

朱金「おーい、悠!新!」

そこに朱金達が駆け寄ってくる。

吉音「金ちゃん!ケガはない?」

悠「トラチー!ケガはない?」

朱金「おう。この通りぴんぴんしてらぁ」

朱金はいつもの明るい笑顔で胸を張って見せた。

寅「死ねッ!」

悠「ごぶっ!?」

寅はいつもの不機嫌な顔でおれの胸を蹴ってみせた。