ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】
ー大江戸学園:かなうの養生所ー
文「あの、あなたにヨリノブを引き渡したのはこの男でしょうか?」
文は桃子と雪那の間に身体を割り込ませると兄の写真を突きだした。
メガネのレンズが欠けているため雪那は目をすがめて写真を眺めた。
雪那「五十嵐、光臣ですね。はい、確かに彼でした」
文「……兄さん、やっぱり。兄は一体何を……」
失望と安どの入り交じった表情で文は唇を結んだ。
雪那「ヨリノブの開発チームの主任と名乗っていましたが」
文「兄は剣魂システムの保全担当だったはずです」
雪那「ヨリノブの開発は彼を始めとする保全チームが中心となって行われていたんです」
文「兄は、開発チームは今どこに?」
雪那「すみません。そこまではわかりません。お兄様都は剣魂のやりとり死か接点がなかったものですから……」
文「……そうですか」
雪那「そういえばヨリノブの開発で得たノウハウを元にさらに強力な剣魂を製作中だと彼は話していました、おそらく今ごろはその開発のためにどこかに……」
桃子「ヨリノブ以上に強力な剣魂だと?」
かなう「文、お前さんの兄貴、早く止めてやんなきゃなんねぇみたいだな」
文「はい……何があっても私が止めてみせます」
雷太郎「ひとつ解せないんだが」
風太郎「元々保全チームは学園付きだろ?」
雷太郎&風太郎「「そいつがどうして革命家のお前にヨリノブを引き渡すんだ?」」
かなう「ああ、保全チームの独断ってのも考えにくいな。研究者のお遊びにしちゃ規模がでかすぎる」
雪那「もちろんバックはあります」
桃子「やはり黒幕がいたか」
雪那「彼らは「大御所」と呼ばれるし人物の支持を得てヨリノブを開発していました。」
桃子「大御所?何者だ、そいつ?あ、ひょっとして十兵衛のことか?」
かなう「そういや、騒動の間中、ずっと十兵衛がついてたな」
雪那「いいえ。柳宮さんは大御所が私につけた監視役です」
桃子「そうなのか。なら大御所ってのは一体?」
雪那「実は私も彼の正体は分からないのです」
桃子「な、分からないってお前、どういうことだよ?」
雪那「大御所が直接私の前に姿を見せることはありませんでしたから、全て柳宮さんや使いのものを間に立てての接点でした」
かなう「どうやら相当に用心深いヤツのようだな」
雪那「大御所は私の革命思想のシンパを名乗って接触してきました、私の書いた書物を読んだり、街頭でのスピーチを聞いて共感したというのです。ほどなくして大御所が私の謳う学園革命への資金援助を申し出てきました。資金も組織もなかった私には渡りに船でした」
桃子「その援助のひとつがヨリノブってわけか?」
雪那「大御所は買収や脅迫など様々な手段を使い、生徒を保全チームからヨリノブの開発へと引き込んだようです。剣魂のデータの保守を任されていた彼らに、リミッターの解除を行わせる。そうすることでヨリノブのような規格外の剣魂を作りだせたのでしょう」
かなう「それにしても苦心して開発したヨリノブをお前さんにただでくれてやるとはな、その大御所ってヤツも少々気前が良すぎやしないか?」
雪那「その通りです。全ては仕組まれたものでした。それだけの財力を持った人物なら学園の中でも特権階級に居るはずです。そのような人間が自己の既得権益を害する可能性のある革命を支持するのは明らかに不自然です」
かなう「何だよ、そこまで分かってるなら……」
雪那「今なら気づけるのです。ですが、あのときの私は冷静ではありませんでした。五人組事件や執行部の専横などを前に私は焦りを感じていたのかもしれません。私も最初から大御所とやらを信用していたわけではありません。ですが援助を受けて、革命を実行する力を手に入れた私は、いつしか舞い上がってしまっていたのでしょう…………愚かでした。全ては大御所の手のひらの上で踊らされていただけでした」
雪那は唇を噛んだ。
文「あの、あなたにヨリノブを引き渡したのはこの男でしょうか?」
文は桃子と雪那の間に身体を割り込ませると兄の写真を突きだした。
メガネのレンズが欠けているため雪那は目をすがめて写真を眺めた。
雪那「五十嵐、光臣ですね。はい、確かに彼でした」
文「……兄さん、やっぱり。兄は一体何を……」
失望と安どの入り交じった表情で文は唇を結んだ。
雪那「ヨリノブの開発チームの主任と名乗っていましたが」
文「兄は剣魂システムの保全担当だったはずです」
雪那「ヨリノブの開発は彼を始めとする保全チームが中心となって行われていたんです」
文「兄は、開発チームは今どこに?」
雪那「すみません。そこまではわかりません。お兄様都は剣魂のやりとり死か接点がなかったものですから……」
文「……そうですか」
雪那「そういえばヨリノブの開発で得たノウハウを元にさらに強力な剣魂を製作中だと彼は話していました、おそらく今ごろはその開発のためにどこかに……」
桃子「ヨリノブ以上に強力な剣魂だと?」
かなう「文、お前さんの兄貴、早く止めてやんなきゃなんねぇみたいだな」
文「はい……何があっても私が止めてみせます」
雷太郎「ひとつ解せないんだが」
風太郎「元々保全チームは学園付きだろ?」
雷太郎&風太郎「「そいつがどうして革命家のお前にヨリノブを引き渡すんだ?」」
かなう「ああ、保全チームの独断ってのも考えにくいな。研究者のお遊びにしちゃ規模がでかすぎる」
雪那「もちろんバックはあります」
桃子「やはり黒幕がいたか」
雪那「彼らは「大御所」と呼ばれるし人物の支持を得てヨリノブを開発していました。」
桃子「大御所?何者だ、そいつ?あ、ひょっとして十兵衛のことか?」
かなう「そういや、騒動の間中、ずっと十兵衛がついてたな」
雪那「いいえ。柳宮さんは大御所が私につけた監視役です」
桃子「そうなのか。なら大御所ってのは一体?」
雪那「実は私も彼の正体は分からないのです」
桃子「な、分からないってお前、どういうことだよ?」
雪那「大御所が直接私の前に姿を見せることはありませんでしたから、全て柳宮さんや使いのものを間に立てての接点でした」
かなう「どうやら相当に用心深いヤツのようだな」
雪那「大御所は私の革命思想のシンパを名乗って接触してきました、私の書いた書物を読んだり、街頭でのスピーチを聞いて共感したというのです。ほどなくして大御所が私の謳う学園革命への資金援助を申し出てきました。資金も組織もなかった私には渡りに船でした」
桃子「その援助のひとつがヨリノブってわけか?」
雪那「大御所は買収や脅迫など様々な手段を使い、生徒を保全チームからヨリノブの開発へと引き込んだようです。剣魂のデータの保守を任されていた彼らに、リミッターの解除を行わせる。そうすることでヨリノブのような規格外の剣魂を作りだせたのでしょう」
かなう「それにしても苦心して開発したヨリノブをお前さんにただでくれてやるとはな、その大御所ってヤツも少々気前が良すぎやしないか?」
雪那「その通りです。全ては仕組まれたものでした。それだけの財力を持った人物なら学園の中でも特権階級に居るはずです。そのような人間が自己の既得権益を害する可能性のある革命を支持するのは明らかに不自然です」
かなう「何だよ、そこまで分かってるなら……」
雪那「今なら気づけるのです。ですが、あのときの私は冷静ではありませんでした。五人組事件や執行部の専横などを前に私は焦りを感じていたのかもしれません。私も最初から大御所とやらを信用していたわけではありません。ですが援助を受けて、革命を実行する力を手に入れた私は、いつしか舞い上がってしまっていたのでしょう…………愚かでした。全ては大御所の手のひらの上で踊らされていただけでした」
雪那は唇を噛んだ。