ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】
ー大江戸学園:廃屋ー
詠美「あなたもやっぱり吉音さんを選ぶの?」
悠「誰を選ぶとか、誰の味方とかじゃない、おれはおれの味方だ。」
詠美「私だって本意ではないわ。でもこうするほかないのよ。あなたならわかるでしょう?これ以上反感を煽るようなことはやめて、私の所へ来て。お願い……あの子ではなく、私の側で、力を貸してほしいの……」
悠「……詠美。その気持は単純にとてもうれしいと思う。場面が違ったら何をしでかしてたか分からない。でもそれだけで宗旨替えするわけにはいかない。詠美が決して自分の意思を曲げられないのと同じだ」
詠美「あっ…………」
悠「詠美、病気は本当に大丈夫なのか。そんなに焦らずにゆっくりとやりなおしてみたらどうだ?吉音だってもともとアンタを支持してたんだ。熱狂的にな、よほどのことがない限り、元に戻ってくれるよ」
詠美「……もうそれはできないの。今引き返してしまったら、私に力がなかったと認めることになってしまう。そうしたら僅かでもあったかもしれない信用も、期待も、全て失ってしまうことになる。私には他の道は残されていないのよ」
悠「……」
違う……身体のことは単なるきっかけに過ぎなかったんだ。
詠美が戦っている相手は、家名でも吉音でも学園でも、ましてやおれでもない。
なにか別のもっと根源的な理由があるんだ。いったい何がこんなに詠美を苦しめている?
詠美「あなたがどうしてもというなら、私もどうしてもなの。だから、お願いだから、あなたはせめて出来るだけ、目立ったことをしないで……。私があなたに、剣を向けずに済むように」
その言葉を最後に、詠美は空き家から去っていった。
今日は、また会って欲しいという言葉がなかった。
もしかしたら、こうしてふたりだけで会うのは、これが最後になるのかもしれない。
おれは………もう会わないようにするべきなのか?それとも、また会いたいのか……らしくない。会う会わないじゃない。全部終わらせたらイイだけだ。いつもと同じ、足りない頭で知恵を絞ってとにかく動く……。それだけだ。
ー大江戸学園:城前広場ー
所前の広場にはすでに多くの生徒たちが集まっていた。
広場の中央にはすでに刑場がつくられていて、傍らに見届け人の役人席が設けられている。
そしてそれらと見物人の生徒らを分けるように柵がめぐらされている。
柵に張り付くように生徒たちが刑場を見つめていた。
おれたちはその生徒達の中に紛れこんでいた。
吉音「モココさんはどこにいったんだろうね?」
吉音が漏らす。
おれ達は長屋に鬼島さんを訪ねて協力を仰ごうとしたのだが、あいにく、彼女の姿を見つけることができなかった。
悠「力が借りられれば良かったんだが、仕方がない」
吉音「思ったよりも警備が少ないね」
悠「油断するな。おれたちが来ることを見越して必ず兵をひそませてるはずだ」
はじめ「うん……気配がする」
仕込み杖を地面につけて音を集めていたはじめが頷く。
悠「とはいえ。どのみち出ていかざるを得ないわけだが……昨日、説明した作戦はちゃんと覚えてるな?」
吉音「うん」
はじめ「…………」
ふたりは頷く。
悠「正直、当たって砕けろの作戦だけどな」
吉音「大丈夫だよ、悠の考えた作戦ならきっとうまくいくよ」
悠「ありがとな」
はじめ「来た……」
役人たちに引かれた反乱分子とされた生徒たちが刑場へと連れ出されて来た。
その中にはもちろん朱金や越後屋の姿もある。
皆、手を縄で縛られていて完全に罪人扱いだ。仲間が辱めを受けているのを見るのは気分のいいもんじゃない。
詠美「あなたもやっぱり吉音さんを選ぶの?」
悠「誰を選ぶとか、誰の味方とかじゃない、おれはおれの味方だ。」
詠美「私だって本意ではないわ。でもこうするほかないのよ。あなたならわかるでしょう?これ以上反感を煽るようなことはやめて、私の所へ来て。お願い……あの子ではなく、私の側で、力を貸してほしいの……」
悠「……詠美。その気持は単純にとてもうれしいと思う。場面が違ったら何をしでかしてたか分からない。でもそれだけで宗旨替えするわけにはいかない。詠美が決して自分の意思を曲げられないのと同じだ」
詠美「あっ…………」
悠「詠美、病気は本当に大丈夫なのか。そんなに焦らずにゆっくりとやりなおしてみたらどうだ?吉音だってもともとアンタを支持してたんだ。熱狂的にな、よほどのことがない限り、元に戻ってくれるよ」
詠美「……もうそれはできないの。今引き返してしまったら、私に力がなかったと認めることになってしまう。そうしたら僅かでもあったかもしれない信用も、期待も、全て失ってしまうことになる。私には他の道は残されていないのよ」
悠「……」
違う……身体のことは単なるきっかけに過ぎなかったんだ。
詠美が戦っている相手は、家名でも吉音でも学園でも、ましてやおれでもない。
なにか別のもっと根源的な理由があるんだ。いったい何がこんなに詠美を苦しめている?
詠美「あなたがどうしてもというなら、私もどうしてもなの。だから、お願いだから、あなたはせめて出来るだけ、目立ったことをしないで……。私があなたに、剣を向けずに済むように」
その言葉を最後に、詠美は空き家から去っていった。
今日は、また会って欲しいという言葉がなかった。
もしかしたら、こうしてふたりだけで会うのは、これが最後になるのかもしれない。
おれは………もう会わないようにするべきなのか?それとも、また会いたいのか……らしくない。会う会わないじゃない。全部終わらせたらイイだけだ。いつもと同じ、足りない頭で知恵を絞ってとにかく動く……。それだけだ。
ー大江戸学園:城前広場ー
所前の広場にはすでに多くの生徒たちが集まっていた。
広場の中央にはすでに刑場がつくられていて、傍らに見届け人の役人席が設けられている。
そしてそれらと見物人の生徒らを分けるように柵がめぐらされている。
柵に張り付くように生徒たちが刑場を見つめていた。
おれたちはその生徒達の中に紛れこんでいた。
吉音「モココさんはどこにいったんだろうね?」
吉音が漏らす。
おれ達は長屋に鬼島さんを訪ねて協力を仰ごうとしたのだが、あいにく、彼女の姿を見つけることができなかった。
悠「力が借りられれば良かったんだが、仕方がない」
吉音「思ったよりも警備が少ないね」
悠「油断するな。おれたちが来ることを見越して必ず兵をひそませてるはずだ」
はじめ「うん……気配がする」
仕込み杖を地面につけて音を集めていたはじめが頷く。
悠「とはいえ。どのみち出ていかざるを得ないわけだが……昨日、説明した作戦はちゃんと覚えてるな?」
吉音「うん」
はじめ「…………」
ふたりは頷く。
悠「正直、当たって砕けろの作戦だけどな」
吉音「大丈夫だよ、悠の考えた作戦ならきっとうまくいくよ」
悠「ありがとな」
はじめ「来た……」
役人たちに引かれた反乱分子とされた生徒たちが刑場へと連れ出されて来た。
その中にはもちろん朱金や越後屋の姿もある。
皆、手を縄で縛られていて完全に罪人扱いだ。仲間が辱めを受けているのを見るのは気分のいいもんじゃない。