ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】
ー大江戸学園:とある境内ー
往水「あたし、逢岡様から借りてる飲み代が結構な額になってるんですよねぇ。もうちょっとだけお手伝いしたらそいつをチャラにしてくれたりしませんかねぇ?」
光姫「それは逢岡と直接交渉したらよかろう……ふふっ」
往水「へへっ」
左近「この場合……私はボランティアになるんですかねぇ」
銀次「そいつはお嬢と交渉したらいいんじゃねぇか?」
光姫「こき使うぞ?」
左近「なるほど、それじゃあ久秀のお嬢さんのところに泣きつくのはもうちょっと後にしますかねぇ。」
光姫「お主が届けてくれたこの封筒じゃが……」
往水「はい。そいつにゃ一体何が書いてあるんです?」
光姫「ここに入っているのは手紙ではない」
往水「へ?」
光姫は封筒の封を切ると中からビニールの袋を取り出した。
左近「なんです、そりゃ?」
光姫「毛髪じゃ」
往水「髪の毛ですか?いったい誰の?」
光姫「校長代理、飛鳥鼎」
往水「えっ、なんだって飛鳥先生の髪の毛なんか必要なんです?」
光姫「正確には飛鳥鼎のものではないがな……」
往水「飛鳥先生の髪であって、飛鳥先生の髪ではない?あの、ちょっと何をいってんだか、分かりませんけど?」
左近「はっはーん、そういう事ですかい」
往水「え?分かったんですか?」
銀次「飛鳥鼎が大江戸学園の卒業生なのは知っているな?」
往水「ええ。それはもちろん」
光姫「その当時の飛鳥鼎と今の飛鳥鼎は別人じゃ」
往水「えっ!?」
由佳里「わたし、デジタル化されるまえの生徒名簿の原本を全て照会したんです。現在運用されているデジタルのデータでは、飛鳥先生と卒業生の飛鳥鼎は一致しますが、原本では明らかに別人なんです。」
左近「つまり、別人を同一人物に見せるようにデータが改ざんされている……と」
由佳里「はい!」
往水「なんてこった。あれが本物の飛鳥先生じゃないんだとするなら、ありゃ何ものです?」
光姫「大御所と呼ばれる学園の黒幕……」
往水「大御所?」
光姫「いや……日本の敵じゃ」
ー大江戸学園:とある廃屋ー
詠美「こんな日でも、呼べば来てくれるのね」
悠「立場と感情は別、だろ?」
詠美「少なくとも、嫌われてはいないという事かしら……安心したわ」
もう詠美は、おれの前で強がることすらなくなっていた。
権力を集中させ、反乱分子を片づければ片づけるほど、詠美は弱っていく。
そこまで神経を削ってまで、性急な結果を求めなくてもいいのに……。
悠「それでも、抗議を容れてもらえなかったことについての不満はある。話しは詠美のところにまで、通じていたんだろう?」
詠美「……ええ。ついにあの吉音さんが、私の批判を始めたようね。でも仕方がないでしょう?暴動を起こされたらそれを鎮圧する。首謀者が重要な役職を持っていたら、それを剥奪する。当然のことじゃない……」
悠「朱金に関しては、仕方のないこともあるかと思う。でも原因になったのはまた別だろう?詠美はおれたちの方のことを、理解しようとしたことがあるか?反感を持っているだけで弾圧されて、目先を誤魔化すために都合のいい罪人を仕立てて、それじゃあ生徒たちが腹を立てるのも当然じゃないか?」
詠美「それは違うわ。執行部のことを嗅ぎまわったり、吉音さんに決起を促すようなことをいうひとがいるから、性懲りもなく学園を乱そうと画策する人が絶えないのが悪いのよッ……」
表面上ですら平静を保てない詠美を見るのは、心が痛む。
往水「あたし、逢岡様から借りてる飲み代が結構な額になってるんですよねぇ。もうちょっとだけお手伝いしたらそいつをチャラにしてくれたりしませんかねぇ?」
光姫「それは逢岡と直接交渉したらよかろう……ふふっ」
往水「へへっ」
左近「この場合……私はボランティアになるんですかねぇ」
銀次「そいつはお嬢と交渉したらいいんじゃねぇか?」
光姫「こき使うぞ?」
左近「なるほど、それじゃあ久秀のお嬢さんのところに泣きつくのはもうちょっと後にしますかねぇ。」
光姫「お主が届けてくれたこの封筒じゃが……」
往水「はい。そいつにゃ一体何が書いてあるんです?」
光姫「ここに入っているのは手紙ではない」
往水「へ?」
光姫は封筒の封を切ると中からビニールの袋を取り出した。
左近「なんです、そりゃ?」
光姫「毛髪じゃ」
往水「髪の毛ですか?いったい誰の?」
光姫「校長代理、飛鳥鼎」
往水「えっ、なんだって飛鳥先生の髪の毛なんか必要なんです?」
光姫「正確には飛鳥鼎のものではないがな……」
往水「飛鳥先生の髪であって、飛鳥先生の髪ではない?あの、ちょっと何をいってんだか、分かりませんけど?」
左近「はっはーん、そういう事ですかい」
往水「え?分かったんですか?」
銀次「飛鳥鼎が大江戸学園の卒業生なのは知っているな?」
往水「ええ。それはもちろん」
光姫「その当時の飛鳥鼎と今の飛鳥鼎は別人じゃ」
往水「えっ!?」
由佳里「わたし、デジタル化されるまえの生徒名簿の原本を全て照会したんです。現在運用されているデジタルのデータでは、飛鳥先生と卒業生の飛鳥鼎は一致しますが、原本では明らかに別人なんです。」
左近「つまり、別人を同一人物に見せるようにデータが改ざんされている……と」
由佳里「はい!」
往水「なんてこった。あれが本物の飛鳥先生じゃないんだとするなら、ありゃ何ものです?」
光姫「大御所と呼ばれる学園の黒幕……」
往水「大御所?」
光姫「いや……日本の敵じゃ」
ー大江戸学園:とある廃屋ー
詠美「こんな日でも、呼べば来てくれるのね」
悠「立場と感情は別、だろ?」
詠美「少なくとも、嫌われてはいないという事かしら……安心したわ」
もう詠美は、おれの前で強がることすらなくなっていた。
権力を集中させ、反乱分子を片づければ片づけるほど、詠美は弱っていく。
そこまで神経を削ってまで、性急な結果を求めなくてもいいのに……。
悠「それでも、抗議を容れてもらえなかったことについての不満はある。話しは詠美のところにまで、通じていたんだろう?」
詠美「……ええ。ついにあの吉音さんが、私の批判を始めたようね。でも仕方がないでしょう?暴動を起こされたらそれを鎮圧する。首謀者が重要な役職を持っていたら、それを剥奪する。当然のことじゃない……」
悠「朱金に関しては、仕方のないこともあるかと思う。でも原因になったのはまた別だろう?詠美はおれたちの方のことを、理解しようとしたことがあるか?反感を持っているだけで弾圧されて、目先を誤魔化すために都合のいい罪人を仕立てて、それじゃあ生徒たちが腹を立てるのも当然じゃないか?」
詠美「それは違うわ。執行部のことを嗅ぎまわったり、吉音さんに決起を促すようなことをいうひとがいるから、性懲りもなく学園を乱そうと画策する人が絶えないのが悪いのよッ……」
表面上ですら平静を保てない詠美を見るのは、心が痛む。