ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

はじめ「奉行所の……」

真留の存在に殺気をみなぎらせる佐東は仕込み杖に手をかける。

悠「ひとりで来るのは珍しいな、真留」

真留「そうですね」

はじめ「……今度はボクを捕まえるのかい?」

真留「今日来たのは私用ですが、もし剣を抜くというのならば……」

はじめ「…………」

悠「まぁまぁ。私用なんだろ?真留もお茶でも飲んで行けよ。最近忙しいんだって?」

真留「はい。遠山様がいませんから……」

はじめ「ふん、自分で捕まえたようなものだろう」

真留「……そういわれても仕方はないですね」

吉音「ねぇ、まるる?金ちゃんのこと、嫌いになっちゃったの?」

真留「あの人はいい加減な人です。だらしないし、下品だし、後先考えずに行動するし。役人にはまるっきり向いていない人です」

吉音「……やっぱり嫌い?」

真留「無駄にまっすぐで、無駄に強くて、無駄に熱くて、無駄にやさしくて……遠山様ほど、お奉行に向いた方はいらっしゃいません!」

吉音「まるる……」

真留「なのに私は……」

悠「いいや。真留が取った行動はけして間違いではなかった。法と秩序を守ることは大切な事だ。それは一番朱金が分かってるさ。正反対の性格のふたりだったからこそこれまで名コンビでいられたんだ。もし真留の歯止めがなかったら朱金は遊び人から奉行に戻って来れないと思うぞ」

真留「…………」

悠「ただ法を守るのは法が健全なときだけだ。「悪法も法なり」なんていうけどそんなの老人の言葉だ。おれたちは戦わないと。そのためには朱金や越後屋の力が必ず必要だ」

はじめ「…………」

吉音「まるるもいっちゃんもふたりとも大事な人を助けたいんだよね?」

はじめ「うん」

真留「私は……」

悠「答えなくてもいい。真留は今の立場でいてほしい。今は俺たちに任せてくれ。必ず力を貸してもらう時が来る。」

真留「分かりました……。ただ、公開処罰は罠です。遠山様や越後屋の身柄を奪還を求めて集まってくるものを捕えようとして……」

悠「もちろん分かってるさ。それを逆手に取ってやる」





ー大江戸学園:???ー

その頃……

ドゴォォォン!

桃子「配給所の騒ぎに手が取られてるせいで警備が甘くなってるようだな。ま、朱金達には悪いけどな」

桃子は得物を収めながら足元で気を失っている衛兵たちを見下ろした。

文「……天井が崩れるかと思いました」

桃子「あれ?」

雷太郎「いくら警備が手薄になっているとはいっても」

風太郎「こんな派手にやってたらみんな集まってくるよ」

桃子「あたいの武器ってこういう狭いところで戦うには向いてないんだよなぁ」

文「片っ端からぶっ飛ばす必要はないんです」

雷太郎「一番槍をまかせてらこれだ……」

風太郎「だから、俺と雷で先行するといったのに……」

タマ『フゴッ』

桃子の剣魂タマまでも文達の意見に調子を合わせる。

文「次からは私がやります。私なら静かに倒せます」

風太郎「俺がやってもいいよ?金はちゃんと貰ってるし」

文「貴方たちは静かでも「やり過ぎる」じゃないですか。」

雷太郎「万が一追ってきたりしたら厄介だろ」

風太郎「骨の一本や二本壊れても死なないし」

文「私がやります」

桃子「分かった、分かった、次からは文に任せるよ。そんじゃタマ、明かり頼むわ」

タマ『フゴフゴ』

タマは頷くと全身を発光させる。さながらその姿は提灯のようである。
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