ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】

ー大江戸学園:???ー

「はい、もしもし~瓦版の催促?ん~と、もぉちょっと待ってくれる?もう版下までは出来てるからさ。今回も自信作だよ!これさえ読めば全ての災いの元が徳河吉音だって思いこませること請け合いさ。完成したらすぐにデータをを送るから、一応チェックして返事ちょうだい」

電話に出た少女は肩と頬にケータイをはさみながらディスプレイに向かっていた。

部屋には大量のパソコンとディスプレイが並び、青白く照らされていた。

少女の眼鏡に映るディスプレイには瓦版のレイアウトが組まれている。

そしてレイアウトの中心には吉音が今回反乱を起こした生徒たちと話しあっている写真が大きく載っている。

それは先日、吉音の協力を仰ごうと生徒たちが小鳥遊堂にやって来た時の写真だった。

しかも瓦版のあおりはまるで吉音が今回の襲撃を仕組んだかのような挑発的な文章が踊っている。

実際本文の内容も生徒らの不満を全て詰め込んだような罪状がねつ造されていた。

大御所『ふふふ、期待しているぞ。ところで例のモノはいつ動かせるようになる?』

「あ、今日はそっちの催促ね。もういつだって暴れさせられるよ。ただし、中身さえ提供してくれればだけどね」

大御所『近いうちに引き渡してやる。』

「あ、前にも言ったけど誰でも良いってわけじゃないからね?」

『ああ、分かっている。システムはコアの能力に大きく左右されるのだろう?』

「そういうこと。出来のいいのを回してよ?」

大御所『ふふふ。それではまた連絡する』

「あいよ~。へへへ。とうとうおいらの大発明が大暴れする時が来たぞ~♪」

無邪気に笑う少女。




ー大江戸学園:執行部室前ー

想「待ってください、酉居さん!このような蛮行、許されるものではありません!」

公開処刑の実行を一方的に伝えて執行部室を後にした酉居を想いは追いかけた。

酉居「これは蛮行などではない。反抗分子をあぶり出すための策だ」

想「徒に生徒たちの恨みを買い、さらに反乱を誘発します。もしこれを策と言われるなら大いに下策です。反抗分子といえども同じ生徒です。話しあいの場を設けるべきです。公開処罰など行うなら、臨時の全校集会を開くほうがよほど上策です」

酉居「下賤の者どもと話しあう余地などない。」

想「まだそのようなことを仰っているのですか?それは問題から目をそむけているだけだとお気づきなさい」

酉居「ええい、黙れ!これは大御所よりの示達だぞ」

想「関係ありません。決定権は将軍にあります。つまり今将軍代理の徳河さんの許可を青がない命は無効です。徳河さんの体調が戻るのを待って、正式な執行部会を開くべきです。そこでの決定でなくてはこの度のような特例を認めるわけにはいきません」

酉居「逢岡、貴様、大御所の命令に背くというのか?」

想「はい。私は学園に仕える身。大御所であろうと学園のためにならぬことには従えません。これから大御所に談判に行ってきます。」

酉居「愚かな!大御所に逆らってただで済むと思っているのか?」

想「思いません。もちろん逆らう者には何らかの力を行使してくるでしょう。それでも今のような傀儡でいるくらいなら私はいつでもこの身分を捨てる」

酉居「ま、待て、逢岡!あの方は、大御所は実は……」

想「酉居さん。大御所の正体はおそらくあなたの思っている方ではありませんよ」

酉居「何っ?」

想「それでは失礼します」

酉居「逢岡っ!」
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