ｰ大江戸学園:大江戸城門前ｰ

詠美『徳河詠美です』

吉音「え、詠美ちゃん!?」

詠美『わざわざ来てくれたのに申し訳ないけど、今、手が離せないの。悪いけど今日はお引き取り願えるかしら』

吉音「少しの時間でいいの、話を聞いて!」

詠美『ごめんなさい』

吉音「お願い、詠美ちゃん!」

詠美『…………』

吉音「……詠美ちゃん、そっちはきっと間違った方だよ。そっちへ進んじゃダメだ。辿りついても、そこじゃ誰も笑っていないよ。詠美ちゃん、そんなところを目指してたわけじゃないはずだよ。詠美ちゃんは……」

詠美『あなた、何様?』



ｰ大江戸学園:執行部室ｰ

吉音『え……』

詠美「合ってるだの、間違ってるだの、どうしてあなたが全て決めてるの?ゃっぱり将軍になりたくなったの?」

吉音『え、そんなこと……』

詠美「こんな時に現れて、私の手から取り返しに来たの?」

吉音『ちが……違うっ!違うよ、詠美ちゃんっ!』

詠美「帰ってくれる?言ったでしょう、それどころじゃないのよ!」

吉音『ま、待って……』

詠美「私はあなたの…………あ、くっ!?む、胸が……。」

受話器は意思を持っておかれたのではなかった。突然体勢を崩した詠美の手により叩きつけられたのであった。

詠美はくぐもった声をあげて、その場にしゃがみこんだ。

執行部員E「え、詠美様っ!?」




ｰ大江戸学園:大御所の居室ｰ

酉居「城前広場での公開処刑、ですか?」

大江戸城の奥深く、大御所の居室では酉居が驚きの声をあげていた。

大御所「ふふふ、面白い趣向であろう」

酉居「は、はぁ。しかしそのような懲罰方法はこれまで例がございません」

大御所「だからこそ生徒らに与える衝撃も大きくなるのだ。存分に派手に執り行い、反抗者への見せしめとせよ」

酉居「それはそうなんですが……」

大御所は配給所襲撃で拘束した数人の公開処刑を酉居に命じていた。

その数名の中にはもちろん遠山朱金の名もあった。

大御所「……」

酉居「遺憾ながら遠山めは一般生徒どもと慣れ合い、手懐けております。公開にて貴奴
処刑する事で一層の反発を買いはしませんでしょうか?」

大御所「酉居よ、このたびの処罰はそれこそが真の狙い。処罰を受けるものは囮よ。奪還せんとするものが必ず現れる。その者共を一網打尽にするのだ」

酉居「なるほど。妙案恐れ入ってございます」

大御所「詠美が伏せっている今、お前に逆らえるものはおるまい。この間に功名を立て、信を取り戻すがよい」

酉居「ありがたき幸せにございます」

大御所「うむ。では早急に手配をせよ」

酉居「はっ」

酉居はうやうやしく頷くと部屋を後にした。

大御所「ふん、手間のかかる……」

酉居が退出すると、大御所は嘲るようにいった。

そして携帯末端を取り出すといずこかへとコールした。