ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【10】

ー大江戸学園:配給所前ー

朱金「……いきなり襲いかかってくるなんざ、ずいぶんなご挨拶じゃねぇか酉居」

酉居「反逆者どもに気を使ってやる必要がどこにある?愚者は愚者らしく身の程をわきまえて大人しくしておけばよいものを、バカのひとつ覚えに騒ぎ出しおって。」

朱金「言わせておきゃ……酉居!とっととテメェの部隊を引きあがらせな!さもねぇと……」

酉居「さもないと、なんだというのだ?」

朱金「テメェをたたっ斬って無理矢理にでもいうことを聞かせてやる!」

酉居「ふん!貴様にソレができるのか?」

朱金「舐めてやがんのか?てめぇぐらい簡単に……」

酉居「これでも、貴様にソレができるのかと聞いている」

朱金「っな!」

酉居の合図に数人の生徒が姿をあらわした。

その手には、打ち壊しに参加した、刀を、戦う力を持たない生徒たちが拘束されている。

酉居「コイツらがどうなってもいいのなら、そのまま暴れ続ければ良い」

男子生徒C「す、すまねぇ金さん……下手うっちまった」

朱金「人質だと!テメェ!どこまで卑怯な事したら気が済むんだ!」

酉居「卑怯?違うな。貴様みたいなやつを拘束するのに、一番有効な手段を打っただけだ。さて、それで貴様はどうする?遠山朱金」

朱金「クソッ!ちくしょおぉぉぉぉぉ~~~~!!」

朱金の雄たけびがどこまでも響いていく。

あっという間の出来事に、真留は口をはさむことすらできず、呆然とその様子を眺め続けていた。

真留「……どうして」

ただその胸の内に、何とも言えない感情を渦巻かせながら……。




ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

男子生徒A「新さん、大変だ!」

吉音「うわっ!?」

息を切らせて小鳥遊堂に飛び込んできたのは派手に擦り傷と青アザをこしらえた男子生徒だった。

悠「あ。あんた、こないだも来てた……」

男子生徒A「おう、覚えててくれたか!」

この顔には見覚えがある。たしか吉音を担ぎ出そうと尋ねてきたやつらの一人だ。

悠「まぁな。で、その後はどうなってるんだ?」

男子生徒A「新さんに断られちまったから、俺らは金さんに頼みにいったんだ」

悠「金さんは協力してくれたのか?」

男子生徒A「おう、もちろんだぜ」

吉音「…………」

悠「だったらどうして今さらまた新に声をかけに来たんだよ?」

男子生徒A「その金さんが、金さんが捕まっちまったんだよ!」

吉音「えっ!?」

悠「どういうことだ?」

男子生徒A「金さんのとこに腹すかせた連中がいっぱい集まったんだよ。明日食うコメもねぇっ奴らばっかりさ」

悠「そんなに酷いのか?」

男子生徒A「何をのんきなことをいってるんだ。あんたみたいに店持ってるような人間はまだマシさ」

悠「む……」

男子生徒A「そこで見かねた金さんが配給所にかけ合ってくれたんだが……役人のやつら素っ気なく追っ払おうとしてよ。あげく腹をすかせた乙っ子を蹴っ飛ばしやがったんだ。そんで、金さんがキレちまって、大暴れさ」

悠「想像がつく……」

男子生徒A「最初は小競り合いだったんだがお互いに頭に血が登って。そのうちに配給所を皆でぶっ壊すことになっちまって」

悠「打ち壊しかよ」

男子生徒A「そこへまた酉居の兵隊が突っこんで来てよ。俺たち刀なしを人質にして金さんを捕まえちまったのさ」

吉音「それで金ちゃんは!?」

男子生徒A「ふん縛られて大江戸城の方へ連れて行かれちまった。酉居のヤツが地下牢へブチ込むとかいってやがった。」

悠「なんてこった」

吉音「行かなきゃ……」

悠「あ?」

吉音「金ちゃんはあたしの代わりに捕まっちゃったんだ」

悠「新……」

吉音「詠美ちゃんと話さなきゃ……もう、逃げちゃ駄目なんだ」
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