ｰ大江戸学園:かなうの養生所ｰ

桃子「乙っ子たちの話しだと、どうも無理矢理やらされたって感じじゃねぇような気がするな」

かなう「職務としてやってたとなると少々ややっこしい話になるぜ?」

桃子「もしくは好きでやってた」

かなう「どうだ?答えにくいとは思うが」

文「……兄は研究のことになると周りが見えなくなるところがあります。可能性は……あります」

かなう「ありがとよ」

文「……」

かなう「ただな、あれはひとりの力でどうにかできるようなもんじゃないぜ。本人の関わり方はおいとくとして、剣魂システムに関わってる部署が総ぐるみで絡んでることは間違いない」

桃子「するってと、学園側の誰かが反乱側の雪那にヨリノブを与えてたことになるのか!」

かなう「だとしたらとんだマッチポンプだな」

桃子「何て話しだ!」

かなう「ただしこれは全部、かもしれない話しだからな。まずは真実を知っている相手から話を聞かなくちゃならねえ」

文「兄さん……」

桃子「もしくは雪那だな」

かなう「雪那は厳重な監視の下で収監されているはずだぞ。私たちが合いたいと言って会わせてくれるとはとても思えないが」

桃子「まぁな。でも居場所は確かだ。」

かなう「文の兄貴をあてなく探すよりは、多少邪魔が入ろうと居場所がわかっている雪那に会うほうが手っ取り早いか」

桃子「そういうこった」

文「私も行きます」

桃子「わかってる。最初っから連れてくつもりだぜ。兄貴に繋がる細い糸だ、手放すんじゃねぇぞ?」

文「はい!」

「くすくす」

文「!?」

桃子「誰だ!」

久秀「そんないきり立たなくていいわ。少なくとも味方ではあるのだから」

かなう「お前さんは松永の……」

久秀「松永久秀でございますわ。刀舟斎先生。最強剣徒の鬼島桃子殿と密入者の五十嵐文さんは獲物を置いて下さらないかしら。私怖くて怯えてしまいますわ」

文「……」

桃子「何しに来やがった。お前さんは姿を消してたんじゃないのか」

久秀「えぇ、居ると理不尽な刑を受けそうだったからね。けれど、もう観客ごっこは飽きたから久秀も舞台にあがることにしたの」

桃子「なにワケの分からない……」

かなう「待て、味方といったようだが?」

久秀「えぇ、味方よ。私たちはね｣

桃子「信用ならねぇ」

文「私もです」

久秀「あらそう。別にいいのよ。それならそれで」

かなう「私「たち」といったようだが?」

久秀「この松永久秀を筆頭に右京山寅、疾迅雷太郎、疾迅風太郎、あとは貴方たちの大好きな小鳥遊悠。」

桃子「悠がお前の味方だァ?!」

久秀「まぁ、そんなことはどうでもいいわ」

桃子「よくねぇだろ!」

かなう「そっちの用件を聞こうか」

久秀「連絡護衛用に風雷コンビを貸して、由比雪那が収監されている場所へ辿りつくことが出来る可能な限り安全なルートも調べてあげるわ。」

かなう「随分といたせりつくせりだな。」

久秀「その代わりあのイレギュレーション剣魂の情報が入り次第、久秀に提供して。」

文「個人でどうにかできるようなものではありませんよ。」

久秀「あら、そうかしら。少なくとも由比雪那という実験例はあるんだし……」

文「……」

久秀「くすくす、そんな怖い顔をして睨まないで。久秀は別にあそこまでの進化には興味がないわ。ただ、久秀の剣魂に課せられた制限を解除したいだけ。本当にそれだけよ。」

かなう「……どうする?」

桃子「こいつに頼らなくても問題は無いだろ。」

文「……信用していいんですね?」

桃子「文?!」

久秀「えぇ、もちろんよ。」

文「分かりました。協力しましょう」

かなう「いいのか?」

文「はい、悠……コホン、小鳥遊くんが味方に居ると思うと心強いですから」

久秀「あらあら、久秀ではなくて悠なのね。いいわ、それじゃあ、協力同盟の印に悠の情報も定期的に送るわ」

桃子「なんだかなぁ……」

久秀「鬼島殿はいらないのね。」

桃子「なっ!」

かなう「いいから、さっさと由比雪那のところに行くぞ」

久秀「くすくす。」