ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました

ー北町奉行所ー

北町奉行「昨日夕刻、天狗党員金津倫平、本間興吉の両名は天狗党の所行を報告すべく。当奉行所へと向かわんとしていた坂下英恵を日本橋近くの路地にて誘拐、のち孝岡八郎の屋敷へと運搬。同日夜、英恵の行方を追って現れた城島永太に暴行を加えて負傷せしめたこと。取り調べの結果、明白である。天狗党幹部孝岡八郎よ、しかと相違ないか?」

孝岡「左様なこと、まるで身に覚えがございませぬ。そもそも天狗党とはいったいなんでございましょうか。」

北町奉行「ほぉ、誘拐、暴行に身に覚えがないだけでなく、天狗党すら知らぬと申すか」

孝岡「ええ、断じて記憶にございません。」

北町奉行「左様か。では金津倫平、本間興吉を始め、その方らも孝岡と同じく知らぬか?」

金津「も、もちろんでさぁ。なぁ、みんな?」

本間「お、おう」

北町奉行「そうか。ならばたずねるが昨晩北町奉行所がそなたの屋敷に捜査に入った際、そなたを始め、ここに居並ぶ者共が揃ってうち倒れていたのはいかなる理由か?」

孝岡「そ、それは……そう、遊び人の金さんとかいう狼藉ものの仕業ですよ」

北町奉行「金さん?」

孝岡「はい。我々はそこの英恵からあらぬ中傷を受けましてね。そう、我々が天狗党だとかいいだしまして、それを黙っていて欲しければ金を出せなどと…」

英恵「嘘です!そんなことをいった覚えはありません!」

北町奉行「今、お前には話を聞いておらん」

英恵「は、はい」

北町奉行「すまなかったな、続けてくれ。」

孝岡「は、はい。それを何とかなだめようとしているところへ、永太の一味なんでしょうね。その金さんとかいう女が現れて、大暴れですよ」

北町奉行「ほぉ、その金さんというのは、そなたら10人をのすほどに強かったと申すか」

孝岡「は、はずかしながら…。恐ろしい腕力の女でして、身の丈は二メートル近くあるゴリラのような女で一味も気色の悪い男も…」

新「嘘ばっかりだ!」

真留「と、徳田さん!」

新「金ちゃんはゴリラみたいじゃないよ!悠は……。あたしもゴリラみたいじゃない!」

悠「前にゴリラっていわれたの意外に根に持ってるんだな……って、おい、なんでおれをすっ飛ばしたコラ?」

北町奉行「まずは落ち着いて座るがよい」

新「ううう」

北町奉行「証人、徳田新。そなたは金さんとやらを見たと申すか。」

新「うん!金さんと一緒にこいつら天狗党をやっつけたもん!」

北町奉行「証人、小鳥遊悠。そなたはどうだ?」

悠「……新の言う通りだ。こいつらは嘘をついてる」

北町奉行「証人二人はこのように申しておるがどうだ?」

孝岡「滅相もありません。このような者たち、顔も見たことがありません。」

孝岡に追従して天狗党のやつらもうんうん、とうなずいている。
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