ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】
ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー
同じころ、小鳥遊堂では……
男子生徒A「新さん、あんただけが頼りなんだよ」
男子生徒B「おうよ。あんたが先頭に立ってくれさえすりゃ集まるやつはいくらでもいるんだよ」
この日、店を閉めると同時に何人かの生徒が吉音を訪ねてきた。
彼らはこれまで目安箱などで吉音が助けたことのある生徒だった。
男子生徒C「こないだの配給所の騒ぎには俺たちも参加してたんだが、ありゃひどいもんだった」
男子生徒B「ああ。酉居のやつは俺たち一般生徒のことを人間だと思っちゃいねぇ」
男子生徒C「猫の集会でも追っ払うみてえに部隊を突っ込ませてきて、あとはよってたかってたこ殴りよ」
男子生徒A「そうさ。あん時金さんが間にはいってくれなきゃ、俺たちゃ今ごろ養生所か牢屋で寝てるところだぜ」
男子生徒B「で、その金さんはといえば奉行をクビになって謹慎中だっていうじゃないか。こなひどいこたぁねえぜ!」
男子生徒A「新さん、俺たちはあんたによく助けてもらった。感謝してもしきれねぇ。だが、最後にもう一回だけ。もう一回だけ助けちゃくれねぇか?」
男子生徒B「ああ。このあたりの貧乏人はみんなアンタのこと気にいってるんだ」
男子生徒A「剣の腕も立つし、正義漢も強い。あんたがひと声かけりゃ一致団結して執行部と戦えるに違いねぇ!」
男子生徒C「頼むよ、新さん!」
吉音「う~ん」
男子生徒A「なんだよ、煮え切らねぇ返事だなぁ」
男子生徒B「おい、悠さんからもいってやってくれよ!」
悠「……どうする新?」
決めるのはおれじゃなく吉音だ。
吉音「あの……みんな?」
男子生徒A「なんだい。受ける気になってくれたかい、新さん?」
吉音「もう少しだけ我慢できないかな?」
男子生徒A「がまん?」
吉音「うん。詠美ちゃんも想ちゃんもたぶんすごく頑張ってると思う。だからもう少しの間、様子を見てあげて欲しいんだ」
男子生徒C「お言葉だが新さん。俺たちゃあ、もう我慢に我慢を重ねて今、ここに至ってるんだぜ?雪那の乱の後、少しはマシになるかと思って期待したが、状況はドンドン悪くなるばっかりじゃねぇか」
他のふたりも合わせてうなずく。
男子生徒B「そうだぜ。俺たちゃもう明日には飯が食えなくなるかも知れねぇんだよ」
男子生徒C「後生だ。新さんの力を貸してくれねぇか?もう一度、雪那の乱みたいな、でかい騒動を起こしてだなぁ……」
吉音「……だめだよ」
男子生徒C「え?」
吉音「もうあんな争いはしちゃいけない。みんなもっと傷つくだけだよ」
男子生徒A「でも、今のままじゃ俺たちゃ、やられっぱなしなんだぜ?そんなの不公平じゃねぇか!」
吉音「分かるよ、分かるけど……でも」
悠「新……」
男子生徒C「分かったよ。どうやら俺たちの見込み違いだったようだ」
吉音「……ごめんなさい」
男子生徒B「なんだよ、肝心なときに役に立たねぇじゃねぇか」
悠「おい、お前ら」
吉音「……いいんだよ、悠」
吉音がおれの服の裾を掴んだ。そしておれにだけ聞こえる声。
生徒たちは皆一様に失望した表情を浮かべて去っていった。
同じころ、小鳥遊堂では……
男子生徒A「新さん、あんただけが頼りなんだよ」
男子生徒B「おうよ。あんたが先頭に立ってくれさえすりゃ集まるやつはいくらでもいるんだよ」
この日、店を閉めると同時に何人かの生徒が吉音を訪ねてきた。
彼らはこれまで目安箱などで吉音が助けたことのある生徒だった。
男子生徒C「こないだの配給所の騒ぎには俺たちも参加してたんだが、ありゃひどいもんだった」
男子生徒B「ああ。酉居のやつは俺たち一般生徒のことを人間だと思っちゃいねぇ」
男子生徒C「猫の集会でも追っ払うみてえに部隊を突っ込ませてきて、あとはよってたかってたこ殴りよ」
男子生徒A「そうさ。あん時金さんが間にはいってくれなきゃ、俺たちゃ今ごろ養生所か牢屋で寝てるところだぜ」
男子生徒B「で、その金さんはといえば奉行をクビになって謹慎中だっていうじゃないか。こなひどいこたぁねえぜ!」
男子生徒A「新さん、俺たちはあんたによく助けてもらった。感謝してもしきれねぇ。だが、最後にもう一回だけ。もう一回だけ助けちゃくれねぇか?」
男子生徒B「ああ。このあたりの貧乏人はみんなアンタのこと気にいってるんだ」
男子生徒A「剣の腕も立つし、正義漢も強い。あんたがひと声かけりゃ一致団結して執行部と戦えるに違いねぇ!」
男子生徒C「頼むよ、新さん!」
吉音「う~ん」
男子生徒A「なんだよ、煮え切らねぇ返事だなぁ」
男子生徒B「おい、悠さんからもいってやってくれよ!」
悠「……どうする新?」
決めるのはおれじゃなく吉音だ。
吉音「あの……みんな?」
男子生徒A「なんだい。受ける気になってくれたかい、新さん?」
吉音「もう少しだけ我慢できないかな?」
男子生徒A「がまん?」
吉音「うん。詠美ちゃんも想ちゃんもたぶんすごく頑張ってると思う。だからもう少しの間、様子を見てあげて欲しいんだ」
男子生徒C「お言葉だが新さん。俺たちゃあ、もう我慢に我慢を重ねて今、ここに至ってるんだぜ?雪那の乱の後、少しはマシになるかと思って期待したが、状況はドンドン悪くなるばっかりじゃねぇか」
他のふたりも合わせてうなずく。
男子生徒B「そうだぜ。俺たちゃもう明日には飯が食えなくなるかも知れねぇんだよ」
男子生徒C「後生だ。新さんの力を貸してくれねぇか?もう一度、雪那の乱みたいな、でかい騒動を起こしてだなぁ……」
吉音「……だめだよ」
男子生徒C「え?」
吉音「もうあんな争いはしちゃいけない。みんなもっと傷つくだけだよ」
男子生徒A「でも、今のままじゃ俺たちゃ、やられっぱなしなんだぜ?そんなの不公平じゃねぇか!」
吉音「分かるよ、分かるけど……でも」
悠「新……」
男子生徒C「分かったよ。どうやら俺たちの見込み違いだったようだ」
吉音「……ごめんなさい」
男子生徒B「なんだよ、肝心なときに役に立たねぇじゃねぇか」
悠「おい、お前ら」
吉音「……いいんだよ、悠」
吉音がおれの服の裾を掴んだ。そしておれにだけ聞こえる声。
生徒たちは皆一様に失望した表情を浮かべて去っていった。