ｰ大江戸学園:配給所ｰ

酉居「遠山!貴様何のつもりだ!」

朱金「あぁあっ!そいつはこっちの台詞だぜ酉居!騒ぎの理由も聞かずに、一般生徒に突然切りかかるだぁ!これが幕府のやることか?どうなんだおい!」

騒ぎが止まったそのちょうど中央で、朱金と酉居がにらみ合う。

酉居「ふん、道理をわきまえぬ愚者を斬って捨てただけだ。どんな事情があろうが我ら幕府にたて突いたのだ、相応の報いを受けるのは当然だろう」

朱金「テメェ……いつから幕府ってのはそんなに偉くなりやがった!何さまのつもりだ!」

酉居「ふん!それよりも、お前こそ町奉行のくせに暴動を起こした生徒につくとは……正気か?」

朱金「ったりめぇだ!テメェらみてえに理不尽な力で押さえつけられるなんて正しいわけがねぇ。悪ぃが、幕府がそんな事を続けるのなら、オレはこっち側につかせてもらう」

朱金の宣言に周囲がどよめく。

酉居「……まさかここまで愚かだったとはな。遠山、自分自身がいった言葉、忘れるんじゃないぞ」

酉居はそう言い残すと部隊を引き連れて帰っていった。

朱金「だれが忘れるか……」

遠くなっていく酉居の背中を睨みつける朱金に、真留が静かに声をかける。

真留「……遠山様」

朱金「……なんだ」

その声色には今までのような親しみは無く、ただただ責めるようなニュアンスだけが含まれている。

真留「どうしてこのようなことをなさったのですか」

朱金｢……オレが何したって?｣

真留「惚けないでください!私たち奉行所に属するものは、問題を起こした生徒を取り締まらなければなりません!ましてや遠山様はお奉行様!その遠山様が騒ぎを起こした生徒側につくなんて言語道断です!」

朱金「じやあなんだ?お前は、理由も聞かずにこいつらを力ずくでしょっ引くのが正しいってのか?」

真留「それは……。で、ですが!どんな事情があろうと、騒ぎを起こしたひとを正すのが私たちの仕事です!遠山様の今の行動は、重大な職務違反です!」

朱金「正す……ね。はんっ!馬鹿らしいっちゃありゃしねぇな」

朱金は真留に背中を向けて歩きだす。

真留「ど、どこにいくのですか?」

朱金「さぁな。お前はお前のいうところの正しい事をせいぜい頑張るんだな」

真留「くっ、言われなくても!」

真留も朱金に背中を向けて駆けだしていった。

そうしてふたりは違う道を進んでいく。



ｰ大江戸学園:執行部室ｰ

酉居「遠山朱金は更迭、謹慎処分とする。コレを受けて町奉行職は一時停止とし、南北町奉行所は執行部の管轄に入ることとする。なお南北奉行所の戦力は執行部直属部隊に統合。直属部隊の司令官である私酉居がその指揮を預かる。以上。よろしてか、将軍代理?」

詠美「…………」

詠美は目を閉じたまま静かに頷いた。

酉居「人事など詳細は手もとの書類に各自目を通しておいてくれ」

旧北町奉行所第一部隊の隊長として銭方真留の名が記されていた。

想「中央に力が集中し過ぎではないでしょうか?」

酉居「奉行の職を失うのが気にいらないのか?逢岡。もっと座り心地の良い執行部員の椅子を用意してやっているではないか」

想「そういうことをいっているのではありません。これでは武力によって生徒たちを押さえつけているだけです」

酉居「その通りだが、何か?何度もいっている。衆愚は賢者によって導かれなくてはならない」

想「そんな傲慢な理屈が!」

酉居「校長代理の飛鳥先生よりも承認を受けている。今さら、お前が異議を申し立ててもなにも変わらん。」

鼎「えっと、緊急事態ですから……」

想「……っ」

詠美「………………」

唇を噛み、幾ばくかの期待を待って詠美を見た想だが、詠美はやはり目を閉じたまま沈黙を守ってた。

想「…………」