ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】

ー大江戸学園:かなうの養生所ー

乙級男子B「……ありがとう」

ヤクロウ『メェ』

少年から礼をいわれたヤクロウはうれしそうに目を細める。

かなう「文、包帯巻いてやってくれ」

文「はい。手をこちらに渡して?」

かなう「それにしても何だって剣魂を怖がるんだ。学園で暮らしてりゃいやでも見慣れて来るもんだろう」

乙級男子B「……由比先生の、剣魂を思い出すから」

文「ヨリノブ……」

かなう「……そういうことか」

顔を見合わせるかなうと文。

文「……」

かなう「身体だけじゃなく心の治療も考えてやらなきゃならんな」

あの炎を吐いて暴れ狂う巨大な龍の姿を目の当たりにすれば、彼がトラウマを負っていてもおかしくない。

乙級男子A「ヨリノブも元は小さくてかわいかったんだ」

乙級男子B「うん、きれいな白い蛇だったよ。ひとなつっこくて僕ともよく遊んでいたんだ」

かなう「何だと。それがなんだってあんなばかでかい龍の姿に?」

文「……ヨリノブも違法な改造を受けたのかもしれません」

かなう「改造?」

文「はい。剣魂にはレギュレーションがあって、その枠を越えた力はもてないように決められているはずです」

かなう「たしかにヨリノブの能力は桁外れ過ぎる。一介の剣徒が持つ剣魂じゃない。それにしても詳しいな、文」

意外そうなかなう。

文「兄は剣魂システムのメンテナンスをしていたんです。それで兄の手紙には時々剣魂について書かれていて……」

かなう「なるほどな」

乙級男子A「ヨリノブが変わっちゃったのは由比先生が刀を変えてからだよ」

乙級男子B「うん。ある日、寺小屋に男が訪ねてきて先生の刀を新しいのと交換したんだ。これでヨリノブは生まれ変わったっていってた」

かなう「どんな男だったか、覚えてるか?」

乙級男子B「うーんとね、その人、お姉ちゃんにちょっと似てた」

文「えっ……?」

顔を指さされて、ぎょっとする文。

乙級男子A「うん、ボクもさっきから思ってた」

かなう「おい、文」

かなうも気づいたようだ。

文「はい。刀を持ってきた男ってこの人?」

文は頷いて、懐から兄の写真を取り出して少年たちに見せた。

乙級男子A「あ、この人だ!」

乙級男子B「うん、この人に間違いないよ」

かなう「なんてこった……」

文「兄さん……」




ー大江戸学園:???ー

その頃、大江戸学園のどこか一室……。高い建物の場所であるらしく、城下町を見下ろしながら男は腰かけているウッドチェアーを揺らす。

天「いやぁ、ええなぁ。欲しいはこんな島。」

白フード「……」

天「どう?ソレ」

死の面『……』

白フード「問題はありません。いつでも再行動できます」

天「そっか……しかし、小鳥遊悠と遊ぼうと思ったのに横やり入れてくれたなぁ」

白フード「しかし、結果的には問題なかったのでは?」

天「ん?」

白フード「邪魔は入りましたが橙龍の男は小鳥遊悠に打たれ、退場したではありませんか」

天「すぐに戻ってくるよ。それにワイは小鳥遊悠と遊びたい。なのに毎回横やり入れられたら萎えるじゃん」

白フード「はぁ……」

天「ま、邪魔するんなら……こっちも増援呼んで引っかき回すだけやけど……ねっ」

天はパチンッと指を鳴らした。

髑髏柄フード「王蟲(オーム)の龍、推参」

水玉フード「泡翠(ラザー)の龍、見参」

ドット柄フード「猩猩まかり越しました」

トライバル柄フード「焔龍(ティアマット)お傍に」

天「はい、ごくろーさん。」

白フード「猩猩と焔龍は私と行動だ。王蟲と泡翠は……天さんを見張っておけ」

髑髏柄フード「は?」

水玉フード「は?」

天「えっ?」

白フード「私がいないと何しでかすか分かったもんじゃないですからね、」
93/100ページ
スキ