ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】
ー大江戸学園:武道場ー
悠「ふうぅぅぅ……」
なんだかもやもやした気持ちだったおれはひとり、武道場へとやって来ていた。
刀を振るってみたものの、心は乱れてどうにも身が入らない。
剣は振るたびに重みを増していくようにすら思えた。
こうしておれが剣を振るうことになんの意味があるんだ……。この巨大な学園が抱える複雑な問題の前でなんの力も持たない一本の剣に何ができるだろう。
執行部のやり方に思うところはある。けれど吉音もあんなだし、おれにどうにかできることじゃない。
そもそも一介の生徒であるおれが考えることじゃない。
どうせ一生続くことじゃない。おとなしく傍観にまわっていればいい……。
おれはため息とともにゆっくりと剣を下ろした。
「……」
悠「はっ?!」
十兵衛「浮ついた気持ちで武道場に足を踏み入れるな」
悠「し、師匠……!」
十兵衛「こんなふぬけた剣を振るう奴から師匠呼ばわりなどされたくないものだな!」
し使用は手を休めることなく連続で斬りかかってくる。
悠「……ぐっ!」
十兵衛「なんだこの濁った太刀筋は?迷いだらけで切っ先が泳いでいるぞ」
悠「所詮こんなもんだったんですよ、おれは!」
防戦一方のおれに剣以上に容赦ない叱咤がぶつけられる。やけっぱちになっておれは叫ぶ。
十兵衛「お前は何かを変えようと再び剣をとったのではなかったのか?」
悠「……おれの剣なんて何かを変えられるようなものじゃなかった」
十兵衛「ほぉ、それは誰が決めた?」
悠「誰かに決められなくたって、おれのことはおれ自身が一番よく分かってます!」
十兵衛「知ったような口を利くな!お前はまだなにもやっちゃいないんだ!」
悠「ぐっ……!」
十兵衛「一体何を変えようとしたというのだ!何と闘った?何を斬ったというのだ?」
悠「少なくともワケの分からん仮面野郎とは戦ったど、おれに何を求めてるんだ!おれはただの生徒だ!あんたのような剣豪生でもなければ、吉音のような特別な生まれてもない!」
十兵衛「それが、何だというのだ?」
悠「うあっ……!?」
十兵衛「なぜ、戦う前から諦めている?」
悠「結果の分かりきった勝負なんてしたくないんだよ!」
十兵衛「そいつは謙虚さに見せかけた傲慢だ。理性に見せかけた臆病だ」
悠「臆病者ほど長生きは出来る!」
十兵衛「なまじ器用で知恵があって、熱くならなくても人並みにこなせる。それがお前の弱点だ!小奇麗に生きようとするな。もっと泥まみれになれ!」
悠「ちっ!」
師匠の剣にかち上げられ、おれは剣を飛ばされた。
そしてそのまま、突き倒され、鼻先に切っ先が突きつけられる。
十兵衛「私の勝ちだ。そしてお前の負けだ。どうだ、悔しいか?」
悠「当然の結果ですよ。師匠とおれの腕の差じゃこうなるのは当たり前じゃないですか」
悠「お前は変わらないな」
悠「あ?」
十兵衛「冷めたふりをするな。悔しさを隠すな。あのときみたいに逃げ出すな」
悠「なにいってる……」
~~
ー???ー
少女『あんた、悔しくないの?』
悠『べつに……そっちのほうが強かった、それだけじゃないか』
少女『嘘だ。アンタも強い。ううん、強かった。だからこそ悔しくないはずがない。本気じゃないふりをして、悔しさから目を逸らしているだけ』
悠『……おれは剣とあいしょーがわるいんだ。もともと剣道もするつもりはなかったし。』
~~
十兵衛「また、剣を手放すのか?こんなに悔しい思いをするくらいならもう熱くならない……か?」
悠「……師匠、アンタはもしかして」
悠「ふうぅぅぅ……」
なんだかもやもやした気持ちだったおれはひとり、武道場へとやって来ていた。
刀を振るってみたものの、心は乱れてどうにも身が入らない。
剣は振るたびに重みを増していくようにすら思えた。
こうしておれが剣を振るうことになんの意味があるんだ……。この巨大な学園が抱える複雑な問題の前でなんの力も持たない一本の剣に何ができるだろう。
執行部のやり方に思うところはある。けれど吉音もあんなだし、おれにどうにかできることじゃない。
そもそも一介の生徒であるおれが考えることじゃない。
どうせ一生続くことじゃない。おとなしく傍観にまわっていればいい……。
おれはため息とともにゆっくりと剣を下ろした。
「……」
悠「はっ?!」
十兵衛「浮ついた気持ちで武道場に足を踏み入れるな」
悠「し、師匠……!」
十兵衛「こんなふぬけた剣を振るう奴から師匠呼ばわりなどされたくないものだな!」
し使用は手を休めることなく連続で斬りかかってくる。
悠「……ぐっ!」
十兵衛「なんだこの濁った太刀筋は?迷いだらけで切っ先が泳いでいるぞ」
悠「所詮こんなもんだったんですよ、おれは!」
防戦一方のおれに剣以上に容赦ない叱咤がぶつけられる。やけっぱちになっておれは叫ぶ。
十兵衛「お前は何かを変えようと再び剣をとったのではなかったのか?」
悠「……おれの剣なんて何かを変えられるようなものじゃなかった」
十兵衛「ほぉ、それは誰が決めた?」
悠「誰かに決められなくたって、おれのことはおれ自身が一番よく分かってます!」
十兵衛「知ったような口を利くな!お前はまだなにもやっちゃいないんだ!」
悠「ぐっ……!」
十兵衛「一体何を変えようとしたというのだ!何と闘った?何を斬ったというのだ?」
悠「少なくともワケの分からん仮面野郎とは戦ったど、おれに何を求めてるんだ!おれはただの生徒だ!あんたのような剣豪生でもなければ、吉音のような特別な生まれてもない!」
十兵衛「それが、何だというのだ?」
悠「うあっ……!?」
十兵衛「なぜ、戦う前から諦めている?」
悠「結果の分かりきった勝負なんてしたくないんだよ!」
十兵衛「そいつは謙虚さに見せかけた傲慢だ。理性に見せかけた臆病だ」
悠「臆病者ほど長生きは出来る!」
十兵衛「なまじ器用で知恵があって、熱くならなくても人並みにこなせる。それがお前の弱点だ!小奇麗に生きようとするな。もっと泥まみれになれ!」
悠「ちっ!」
師匠の剣にかち上げられ、おれは剣を飛ばされた。
そしてそのまま、突き倒され、鼻先に切っ先が突きつけられる。
十兵衛「私の勝ちだ。そしてお前の負けだ。どうだ、悔しいか?」
悠「当然の結果ですよ。師匠とおれの腕の差じゃこうなるのは当たり前じゃないですか」
悠「お前は変わらないな」
悠「あ?」
十兵衛「冷めたふりをするな。悔しさを隠すな。あのときみたいに逃げ出すな」
悠「なにいってる……」
~~
ー???ー
少女『あんた、悔しくないの?』
悠『べつに……そっちのほうが強かった、それだけじゃないか』
少女『嘘だ。アンタも強い。ううん、強かった。だからこそ悔しくないはずがない。本気じゃないふりをして、悔しさから目を逸らしているだけ』
悠『……おれは剣とあいしょーがわるいんだ。もともと剣道もするつもりはなかったし。』
~~
十兵衛「また、剣を手放すのか?こんなに悔しい思いをするくらいならもう熱くならない……か?」
悠「……師匠、アンタはもしかして」