ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】
ー大江戸学園:武闘場ー
場所は武闘場。
酉居から呼び出しを受けた大神伊都は、手持ち無沙汰に傘を回している。
人払いをしてあるのか、武闘場には他の生徒の姿は無い。
伊都「時は金なり。わたくしの貴重な時間を買ったのですから、それなりの用意はしてあるんですわよね」
扉の外に気配を感じ取った伊都の独りごと。
それに答えるように酉居の姿が武闘場に現れる。
酉居「ふん、なにが貴重な時間だ。どうせくだらないことに時間を浪費しているのだろう」
伊都「あら?くだらないことに時間を目一杯かける。これほどの贅沢が他にあるとは思えませんわ」
酉居「相変わらず適当なやつめ」
伊都「褒めても何もでませんわよ?」
酉居「くっ、減らず口も相変わらずだな……」
伊都「それで?いつも大忙しのヨーちゃんが、この拝神夜さまに何用で?」
酉居「……まぁいい、今日は取引がある」
伊都「あらあらあら。ほんとに拝神夜さまへの依頼ですの?」
酉居「取引だと言っているだろう。大神、お前はこの武道場を見てなにを思う」
伊都「そうね……少し内装が殺風景過ぎますわ。インテリアをもっと可愛く飾ってもいいわね」
酉居「そういうことじゃない!……大神、ここの主になりたいとは思わんか」
伊都「……意味が良く分かりませんわ」
酉居「柳宮十兵衛が不在で空席になっている指南役の座を与えてやろうといっているのだ」
伊都「…………」
酉居「普段は人を小馬鹿にしているとしか思えん飄々とした態度は確かに鼻につくが、剣の腕は柳宮十兵衛に負けず劣らぬ腕前。家柄も申し分ないときている。悪い話ではないだろう?俺がお前を指南役にしてやる。その代わりお前の力、武力を俺に貸せ」
伊都「……お話になりませんわね」
酉居「なに?」
伊都「答えはノーだといっているのですわ。そんな面倒なことお断りだわ」
酉居「なぜだ!お前だって、今この学園がどういう状況なのかわかっているだろう!俺についてさえいれば……」
伊都「葉蔵クンについて、これまで得をした人間がひとりでもいたかしら、ねぇダイちゃん?」
酉居「くっ!」
伊都「それに指南役になんてなってしまったら、アナタのいう、くだらなーい時間もとれなくなってしまうわ」
酉居「どうしても俺の提案は呑まんというのか……」
伊都「しつこい男は嫌われるわよ。ねぇダイちゃん?」
酉居「……ふんっ!物事の大局が見えんとは、名家の出身が聞いてあきれる。卑賤な者どもと関わるうちに、随分落ちぶれたものだな大神」
伊都「……それはわたくしの台詞でもありますわ」
酉居「なんだと?」
伊都「どうも葉蔵クンの行動の影には、他の人間の意思を感じますわ。何かおかしなのに引っかかってるんじゃないの?」
酉居「俺が傀儡になっているだと!愚弄するな!」
伊都「愚弄ねぇ~、わたくしとしては珍しく心配してあげたというのに。まぁいいですわ。話しが終わったのならこれで失礼」
酉居「待て!」
伊都「…………」
酉居の声などもう聞えぬとでもいうように、一度も立ち止まることなく伊都は去っていった。
酉居「くそっ!どいつもこいつも!今に見てろよ……。俺の提案を蹴ったこと、すぐに後悔させてやる……」
場所は武闘場。
酉居から呼び出しを受けた大神伊都は、手持ち無沙汰に傘を回している。
人払いをしてあるのか、武闘場には他の生徒の姿は無い。
伊都「時は金なり。わたくしの貴重な時間を買ったのですから、それなりの用意はしてあるんですわよね」
扉の外に気配を感じ取った伊都の独りごと。
それに答えるように酉居の姿が武闘場に現れる。
酉居「ふん、なにが貴重な時間だ。どうせくだらないことに時間を浪費しているのだろう」
伊都「あら?くだらないことに時間を目一杯かける。これほどの贅沢が他にあるとは思えませんわ」
酉居「相変わらず適当なやつめ」
伊都「褒めても何もでませんわよ?」
酉居「くっ、減らず口も相変わらずだな……」
伊都「それで?いつも大忙しのヨーちゃんが、この拝神夜さまに何用で?」
酉居「……まぁいい、今日は取引がある」
伊都「あらあらあら。ほんとに拝神夜さまへの依頼ですの?」
酉居「取引だと言っているだろう。大神、お前はこの武道場を見てなにを思う」
伊都「そうね……少し内装が殺風景過ぎますわ。インテリアをもっと可愛く飾ってもいいわね」
酉居「そういうことじゃない!……大神、ここの主になりたいとは思わんか」
伊都「……意味が良く分かりませんわ」
酉居「柳宮十兵衛が不在で空席になっている指南役の座を与えてやろうといっているのだ」
伊都「…………」
酉居「普段は人を小馬鹿にしているとしか思えん飄々とした態度は確かに鼻につくが、剣の腕は柳宮十兵衛に負けず劣らぬ腕前。家柄も申し分ないときている。悪い話ではないだろう?俺がお前を指南役にしてやる。その代わりお前の力、武力を俺に貸せ」
伊都「……お話になりませんわね」
酉居「なに?」
伊都「答えはノーだといっているのですわ。そんな面倒なことお断りだわ」
酉居「なぜだ!お前だって、今この学園がどういう状況なのかわかっているだろう!俺についてさえいれば……」
伊都「葉蔵クンについて、これまで得をした人間がひとりでもいたかしら、ねぇダイちゃん?」
酉居「くっ!」
伊都「それに指南役になんてなってしまったら、アナタのいう、くだらなーい時間もとれなくなってしまうわ」
酉居「どうしても俺の提案は呑まんというのか……」
伊都「しつこい男は嫌われるわよ。ねぇダイちゃん?」
酉居「……ふんっ!物事の大局が見えんとは、名家の出身が聞いてあきれる。卑賤な者どもと関わるうちに、随分落ちぶれたものだな大神」
伊都「……それはわたくしの台詞でもありますわ」
酉居「なんだと?」
伊都「どうも葉蔵クンの行動の影には、他の人間の意思を感じますわ。何かおかしなのに引っかかってるんじゃないの?」
酉居「俺が傀儡になっているだと!愚弄するな!」
伊都「愚弄ねぇ~、わたくしとしては珍しく心配してあげたというのに。まぁいいですわ。話しが終わったのならこれで失礼」
酉居「待て!」
伊都「…………」
酉居の声などもう聞えぬとでもいうように、一度も立ち止まることなく伊都は去っていった。
酉居「くそっ!どいつもこいつも!今に見てろよ……。俺の提案を蹴ったこと、すぐに後悔させてやる……」