ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】
ー大江戸学園:空き家ー
詠美「……失言だったわね。ともかく、必要で効果的なのは間違いのない施策なのよ。そこに感情は必要ない」
悠「確かに詠美のすることにも正義はあると思う。ただひとによって正義は違うし、正義だと理解しても、感情で受け入れられないことだってある。必要と感情は違うって、詠美の言う通りだよ」
詠美「そう……わかったわ。自分でいったことを否定するわけにはいかないし。でも近いうちに、みんなが感情を超えた先のことで判断してくれるようになるって、信じているわ」
本当のところは、詠美が一番感情のままに行動しているんじゃ?
そんな風に思わなくもなかったけれど、さすがに口にはしなかった。
悠「……」
詠美「それじゃ、今回はお暇させていただくわ。付き合ってくれてありがとう」
悠「……送ろうか?」
詠美「必要無いわ。危険な事なんて起こりようがない……そんな風にしたのだもの」
悠「わかった。それじゃ、気をつけて」
詠美「ありがとう」
悠「……」
そうしておれの横を通り抜け、入口のまえで足を止めて。
詠美「……またこうして呼び出して、話を聞いてもらうことがあると思うわ。構わないかしら」
ためらいがちな、これまでよりも一段細い声でたずねてきた。
悠「詠美が望むなら、いつでも。」
おれがそう答えると、そのまま返事もなく、夜闇の中へ消えていった。
……詠美は、おれのいったことを否定しなかった。
おれを呼び出してあんなことを語るのは、頼って欲しいといったことに応えてくれるんだろうか。
詠美も迷って、苦しんで、恐れながら決断している。おれたちと何も変わらないひとなんだ。
出来るなら、詠美を傷つけない形で最後まで事が進めばいいと願う。
こんな風に思うのも、おれの感情でしかないんだろうけどな……。
ー大江戸学園:小道ー
詠美嬢と別れた後、おれも帰路についていた。今夜は妙に月が明るい夜。
おれの足音しか聞こえない静かな夜。
だからこそ……ソレが前に現れるまで気がつかなかった。いや、違うな……正確にいえば現れてはいたのに視界に入って漸く気が付くことができたのだ。
学園の制服とは違う男性用のアオザイにカンフーパンツ。そして一番目を引くのは顔全面を覆い隠している布。赤い文字で「死」っと書かれていて怪しいを通りこして不気味だ…。
死の面『……』
悠「……」
息が詰まる。なぜかは分からない。分からないが……この不気味な男はおれを狙っている。それが分かってしまう。
死の面『ケヒ…。』
動いた。笑い声とも呼吸ともとれる音。死の面はゆっくりとおれのまえに立ちはだかった。
悠「……なんだ、お前」
死の面『……』
返事はない。だが……奴は構えをとった。見たことは無い構えだが……武術系の構え。
悠「おいおい……なんなんだよ。もし、夜に同心に世話になったら罰があるぞ?」
死の面『……』
ジリッと地面を擦るような歩法で寄ってきた。
悠「やるしか……ないのか?」
死の面『……』
謎の男の異様な気配と夜の闇がおれを包みこんだ。
詠美「……失言だったわね。ともかく、必要で効果的なのは間違いのない施策なのよ。そこに感情は必要ない」
悠「確かに詠美のすることにも正義はあると思う。ただひとによって正義は違うし、正義だと理解しても、感情で受け入れられないことだってある。必要と感情は違うって、詠美の言う通りだよ」
詠美「そう……わかったわ。自分でいったことを否定するわけにはいかないし。でも近いうちに、みんなが感情を超えた先のことで判断してくれるようになるって、信じているわ」
本当のところは、詠美が一番感情のままに行動しているんじゃ?
そんな風に思わなくもなかったけれど、さすがに口にはしなかった。
悠「……」
詠美「それじゃ、今回はお暇させていただくわ。付き合ってくれてありがとう」
悠「……送ろうか?」
詠美「必要無いわ。危険な事なんて起こりようがない……そんな風にしたのだもの」
悠「わかった。それじゃ、気をつけて」
詠美「ありがとう」
悠「……」
そうしておれの横を通り抜け、入口のまえで足を止めて。
詠美「……またこうして呼び出して、話を聞いてもらうことがあると思うわ。構わないかしら」
ためらいがちな、これまでよりも一段細い声でたずねてきた。
悠「詠美が望むなら、いつでも。」
おれがそう答えると、そのまま返事もなく、夜闇の中へ消えていった。
……詠美は、おれのいったことを否定しなかった。
おれを呼び出してあんなことを語るのは、頼って欲しいといったことに応えてくれるんだろうか。
詠美も迷って、苦しんで、恐れながら決断している。おれたちと何も変わらないひとなんだ。
出来るなら、詠美を傷つけない形で最後まで事が進めばいいと願う。
こんな風に思うのも、おれの感情でしかないんだろうけどな……。
ー大江戸学園:小道ー
詠美嬢と別れた後、おれも帰路についていた。今夜は妙に月が明るい夜。
おれの足音しか聞こえない静かな夜。
だからこそ……ソレが前に現れるまで気がつかなかった。いや、違うな……正確にいえば現れてはいたのに視界に入って漸く気が付くことができたのだ。
学園の制服とは違う男性用のアオザイにカンフーパンツ。そして一番目を引くのは顔全面を覆い隠している布。赤い文字で「死」っと書かれていて怪しいを通りこして不気味だ…。
死の面『……』
悠「……」
息が詰まる。なぜかは分からない。分からないが……この不気味な男はおれを狙っている。それが分かってしまう。
死の面『ケヒ…。』
動いた。笑い声とも呼吸ともとれる音。死の面はゆっくりとおれのまえに立ちはだかった。
悠「……なんだ、お前」
死の面『……』
返事はない。だが……奴は構えをとった。見たことは無い構えだが……武術系の構え。
悠「おいおい……なんなんだよ。もし、夜に同心に世話になったら罰があるぞ?」
死の面『……』
ジリッと地面を擦るような歩法で寄ってきた。
悠「やるしか……ないのか?」
死の面『……』
謎の男の異様な気配と夜の闇がおれを包みこんだ。