ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

悠「はぁ……客入り悪いなぁ」

左近「すいません、お茶とお団子もらえますかい?」

悠「はい、いらっしゃいませ……って、アンタか」

左近「はは、私ですよ。でも、客の顔見てイキナリ態度を変えないでくださいよ」

悠「……」

左近「おや、どうしたんですかい?私の顔をじーっと見て」

悠「正直にいおうか?」

左近「そりゃまぁ、何か隠されてるよりかわねぇ」

悠「お前は……今誰の下について、おれのなにを探りに来たのかと警戒してる。」

左近「探るだなんて、ただのお客ですよぉ。あはは」

悠「……」

左近「そんなに警戒しないでくださいよ。正直、私だって驚いたんですよ?小鳥遊さんが捕えられたなんて聞いてね」

悠「……あの軒についてはおれは今でも納得はしちゃいない」

左近「そりゃまぁそうでしょうね。私としてはそれよりも大変なことがありましたけど」

悠「あ?」

左近「小鳥遊さんが捕えられて遠山様の激昂たるやもう……なだめたりなんだしりで大変だったんですから、今さらですけどね」

悠「……朱金は相当抗議してくれたらしいしな」

左近「小鳥遊さんの色男っぷりが遠山様を引きつけてるんですかねぇ。あっはっは」

悠「ふん、ヘタなおべんちゃらはいらねぇよ」

左近「おやおや、本心をいったつもりですが?」

悠「茶と団子でいいんだな」

左近「ええ、いやー、よかったよかった。やっぱり、休憩するならこの店がいいですからね。」

悠「お前やっぱりなんか企んでるか探りに来てるだろ」

左近「はい?」

悠「そんなに褒めて気色悪い」

左近「そんなことはないでしょう。私はいっつもこんな感じですよ」

悠「よくよく考えたら雪那の乱のときも姿を見せてなかったよな?」

左近「別件で呼び出されていたもんでね。酉居さんに」

悠「あ?」

左近「ぉっと、勘違いはしないでくださいよ?別にここにきたのはあの方に何か言われて来たわけじゃないですから。そもそも酉居さんが小鳥遊堂を見張って来いなんていうタイプと思いますか?」

悠「全然」

左近「でしょう?あのひとの考え方と策は真っ正面にねじ曲がってますから」

悠「日本語としておかしいぞ」

左近「本当に天の邪鬼な人間とは違うってことですよ」

悠「お前のことか?」

左近「まさか、私ほど清く正しいひとはおりゃあしませんよ。ええ。」

悠「どの口がいってるんだか……」

左近「それに天の邪鬼というのなら小鳥遊さんには負けますし」

悠「あ?」

左近「おや、そういえば綺麗どころのお二人は?」

悠「吉音はまだ来てない。久秀は……知らん。行方不明だがアイツの事だ元気にしてるだろ」

左近「おやぁ、松永嬢は不在ですか。そうそう不在といえば寅さんや風雷のコンビも不在なんですよねぇ。せっかく雇っておこうと思ったのに」

悠「雇う?」

左近「ほら、今執行部の権威強化で人材が必要なんですよ。金でいう事を聞いてかつそこそこ腕の立つね」

悠「けど、そこらのチンピラというわけにはいかないだろ。なにしろ「執行部」名目なんだから」

左近「そう、だからこそ拳で剣徒とも張り合える実力がある方々を集めておきたかったんですよね。」

悠「酉居は気にいらないだろ」

左近「でしょうね。けど、ほら、やっぱりいると心強い方はいてほしいじゃないですか。私の用心棒としてでも」

悠「手駒にいいカードを揃えておきたいのは皆同じってことか……」

左近「何か言いました?」

悠「いいや、寅も風雷コンビのことも知らないって言ったんだよ」

左近「そうですかー、残念です。ズズッ……んっ、やっぱりいい味だ」

悠「そらどーも」
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