ｰ大江戸学園:???ｰ

大御所「…………ふふ」

「酉居もあわれなヤツだな」

大御所「む……?」

十兵衛「ひとを欺こうとしているときは己も欺かれやすいものだ」

大御所「十兵衛、お前か。いつからそこに?」

十兵衛「さあな」

大御所「ああしておだてておいてやれば従順で扱いやすい男だ」

十兵衛「奴はアンタを信頼しきっているようだが、一体何を吹き込んだんだ」

大御所「わしは何もいっておらぬ。やつがそれをどう解釈しようとあずかりしるところではない。ただその忠義はせいぜい利用させてもらおう」

十兵衛「捨て駒……か」

大御所「ふふ……」




ｰ新宿:茶屋小鳥遊堂ｰ

店の清掃と補修には思いの外時間がかかってしまった。

ただ店は綺麗になっても、お茶やお菓子の材料がない。これは別で仕入れに行かないと。

……身に覚えのない中傷なのに、営業を停止してしまっては、それを認めたも同然だ。ここは意地でもやり通さなければならないところだからな。

また同じようなことやられたら、とっ捕まえて有刺鉄線で縛り上げてやればいいし。

「こんばんわ、お茶をいただけないかしら。」

悠「すいません、ちょっと今日はやってなくて……って、お前は久秀!」

久秀「そうよ。松永久秀よ?」

悠「フルネームで自己紹介されなくても分かってるよ!っか、お前いままで何処でなにを?」

久秀「徳河詠に拘束されたくないから身を隠してたのよ。隠していたというよりしばらくは潜伏するつもりだけど」

悠「お前は分かってたのか?こうなることを」

久秀「分かっていたじゃなくて、嫌な予感はしていたって所かしらね。けど、一手遅かった感じかしら。こうなる前に相手の弱みに付け込める材料を用意しきれずにいたから。まぁ、手駒に右京山寅と風雷コンビを押さえられたのは不幸中の幸いだったわ。」

悠「その三人は?」

久秀「学園外に逃がしてるわ。あの子たちは今ヘタに騒がれて監禁されても困るし」

悠「そいつらを逃がしておれは逃がしてくれなかったんだな」

久秀「あらあら」

悠「あらあら……じゃねぇーよ!」

久秀「だってどうせ無駄だったでしょ?」

悠「あ?」

久秀「あのタイミングで悠を誘ったとしても、徳河吉音の事を放置できた?」

悠「それは……」

久秀「さらにいえば徳河吉音を連れて逃げ出せるわけがない。でも、逆にいえば徳河吉音をいつまでも監禁するはずがない。そう考えれば悠と徳河吉音は捨て置いた方がいいと考えたのよ」

悠「うーむ……納得したくない」

久秀「クスクス。イイじゃないの同じ檻で数夜を共にできたんでしょ?」

悠「何も嬉しくねぇし!檻は近くでもちゃんと別れてるし!」

久秀「元気そうで何よりだわ」

悠「……これからどうするんだよ?」

久秀「様子見ね。とりあえず学園外で遊んでるわ」

悠「おいおい…」

久秀「安心しなさい。私の店守る役は悠にやらせてあげるから。」

悠「お･れ･の･店･だ!」

久秀「クスクス。あら?電話じゃない?」

トゥルルル!トゥルル!
悠「誰だよ。こんな時間に……もしもし、ドッピォじゃなくて小鳥遊……あっ?」