ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】
ー大江戸学園:???ー
大御所「復旧作業の手際の良さ、さすがであった。まさに名奉行逢岡の面目躍如といったところだな」
想「いえ。私は何もしていません。現場のみんながよくやってくれたのです」
大御所「謙遜する事はない。導く者がおらずば人は動かぬ。すべてはこれまでの奉行としてのおまえの実績によるものだ。積み重ねてきた信頼より生徒からの人気は絶大。徳河詠美と並んで逢岡想の名は現在の執行部の高い支持率を支える」
想「ならば、私より吉音さんを……」
大御所「詠美と吉音は並び立たぬ」
想「…………ひとつお聞きしたいことがあります」
大御所「何か?」
想「吉音さんを由比雪那の共謀者として誹謗するうわさがあります。この噂を流しているのはあなたではありませんか?」
大御所「そのようなことはない」
想「……吉音さんを陥れるようなことだけはどうかしないで下さい。私はどうなろうと構いません。けれど吉音さんだけは」
大御所「もちろん分かっておる。それがお主の条件だからな」
想「……はい」
大御所「しかしそれもお主の働き次第だ」
想「……分かっています」
大御所「これも学園のためだ、何も恐れることはない」
想「…………」
大御所の間を後にして廊下に出た想は待ち構えるように立っていた男に気づく。
酉居「大御所に日参か。ご苦労な事だ」
想「私は呼び出しを受けて……」
酉居「出世のために親友まで売るとは、微笑みの名奉行もその実は恐ろしいものだな」
想「私は……」
何か言いかえそうとしたものの、想は途中で口をつぐんでしまう。
酉居「……」
想「失礼します……」
腋を通り過ぎる想と、その背中を忌々しげに見送る酉居。
~~
酉居「何ゆえ、逢岡のような者をお使いになられます?」
挨拶を済ますのもそこそこに酉居はすだれの向こうの大御所に不満をぶつけた。
大御所「逢岡の人気は侮れぬ。そしてそれはお前にはないものだ」
酉居「げ、下賤の者どもの人気など……」
大御所「何を焦っておる、酉居よ」
酉居「焦ってなどおりません」
大御所「くく、そなたの気持ちはわかるぞ。雪那の乱で随分と名を落としたからな」
酉居「機会さえあたえられればそのようなもの、すぐに取り戻せます!」
大御所「ふふふ、安心せよ、信頼しおるのはおまえだ。詠美も逢岡も人気のための看板にすぎぬ。」
酉居「あ、ありがたき幸せ!信頼に応えるべく、この酉居、大御所様へのより一層の忠節をお見せ致す所存にござります!」
大御所「うむ。それでこそ執行部に復帰させてやった甲斐があるというもの。これよりも忠義を尽くすが良い」
酉居「ははっ!」
大御所「して本日の報告とは?」
酉居「は。先日、大御所様よりご指示を頂いた案件についてですが……本日の執行部案にて治安部隊の増強案が認められました。治安部隊は執行部所属の塀となりますが、実質的には私が自由に使えるものとなる予定です」
大御所「うむ。もうひとつの件はどうなっておる?」
酉居「そちらも抜かりはございませぬ。徳河吉音とその一派に対する情報操作もご指示の通り勧めておりまする」
大御所「うむ、よいぞ」
酉居「それでは、これにて失礼いたします。今後もしっかりと務めさせていただきますゆえ!」
大御所「大いに期待しておる」
酉居「ははっ!」
大御所の期待の言葉に酉居は意気揚々と部屋を後にした。
大御所「復旧作業の手際の良さ、さすがであった。まさに名奉行逢岡の面目躍如といったところだな」
想「いえ。私は何もしていません。現場のみんながよくやってくれたのです」
大御所「謙遜する事はない。導く者がおらずば人は動かぬ。すべてはこれまでの奉行としてのおまえの実績によるものだ。積み重ねてきた信頼より生徒からの人気は絶大。徳河詠美と並んで逢岡想の名は現在の執行部の高い支持率を支える」
想「ならば、私より吉音さんを……」
大御所「詠美と吉音は並び立たぬ」
想「…………ひとつお聞きしたいことがあります」
大御所「何か?」
想「吉音さんを由比雪那の共謀者として誹謗するうわさがあります。この噂を流しているのはあなたではありませんか?」
大御所「そのようなことはない」
想「……吉音さんを陥れるようなことだけはどうかしないで下さい。私はどうなろうと構いません。けれど吉音さんだけは」
大御所「もちろん分かっておる。それがお主の条件だからな」
想「……はい」
大御所「しかしそれもお主の働き次第だ」
想「……分かっています」
大御所「これも学園のためだ、何も恐れることはない」
想「…………」
大御所の間を後にして廊下に出た想は待ち構えるように立っていた男に気づく。
酉居「大御所に日参か。ご苦労な事だ」
想「私は呼び出しを受けて……」
酉居「出世のために親友まで売るとは、微笑みの名奉行もその実は恐ろしいものだな」
想「私は……」
何か言いかえそうとしたものの、想は途中で口をつぐんでしまう。
酉居「……」
想「失礼します……」
腋を通り過ぎる想と、その背中を忌々しげに見送る酉居。
~~
酉居「何ゆえ、逢岡のような者をお使いになられます?」
挨拶を済ますのもそこそこに酉居はすだれの向こうの大御所に不満をぶつけた。
大御所「逢岡の人気は侮れぬ。そしてそれはお前にはないものだ」
酉居「げ、下賤の者どもの人気など……」
大御所「何を焦っておる、酉居よ」
酉居「焦ってなどおりません」
大御所「くく、そなたの気持ちはわかるぞ。雪那の乱で随分と名を落としたからな」
酉居「機会さえあたえられればそのようなもの、すぐに取り戻せます!」
大御所「ふふふ、安心せよ、信頼しおるのはおまえだ。詠美も逢岡も人気のための看板にすぎぬ。」
酉居「あ、ありがたき幸せ!信頼に応えるべく、この酉居、大御所様へのより一層の忠節をお見せ致す所存にござります!」
大御所「うむ。それでこそ執行部に復帰させてやった甲斐があるというもの。これよりも忠義を尽くすが良い」
酉居「ははっ!」
大御所「して本日の報告とは?」
酉居「は。先日、大御所様よりご指示を頂いた案件についてですが……本日の執行部案にて治安部隊の増強案が認められました。治安部隊は執行部所属の塀となりますが、実質的には私が自由に使えるものとなる予定です」
大御所「うむ。もうひとつの件はどうなっておる?」
酉居「そちらも抜かりはございませぬ。徳河吉音とその一派に対する情報操作もご指示の通り勧めておりまする」
大御所「うむ、よいぞ」
酉居「それでは、これにて失礼いたします。今後もしっかりと務めさせていただきますゆえ!」
大御所「大いに期待しておる」
酉居「ははっ!」
大御所の期待の言葉に酉居は意気揚々と部屋を後にした。