ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】

ー大江戸学園:執行部室ー

桃子「この騒ぎは雪那ひとりさえ倒せれば決着がつく、無理にヨリノブと十兵衛を倒さなくても、なんとかかいくぐる方法さえ見つければ良いんじゃないのか?」

南町側からは奉行の逢岡さんと、主力の吉音、鬼島さんが参加している。仲村さんなんかは……頼まれても来ないんだろうな。

平良「ヨリノブは由比に使われているだけだし、十兵衛さんは自分で軍を立ちあげたりする人じゃない。それは間違っていないだろうな」

幕府からは徳河さんと長谷河さんが。

朱金「でも由比のそばにゃいつもべったりと柳宮がへばりついてやがるぜ」

北町からは朱金と真留が。

真留は大いに尻ごみしたものの、左近の代わりにこの先北町をまかせるつもりだ、など強引に説得され、連れて来られた。しかし、左近はどういうわけかここに参加していない。

本当は猫目も参加させるか検討したのだが、さすがにこの場はマズイということでお流れに。

そしておれは、どの方面もよく知っているからという理由で、どこの所属というわけでもないが久秀とともに参加している。

ここは事実上、現在の学園の最上層部か集まっていることになる……。

真留「(い、いまだにものすごく場違いな気がするのですが。がががが)」

悠「(おれだって同じだよ……せめて堂々としていよう)」

詠美「由比さんを討つには十兵衛さんが障害になる。十兵衛さんに気を取られれば、ヨリノブへの対処がおろそかになる。……なかなか難しいわね。」

吉音「ヨリノブよりも強い剣魂を作っちゃえば?」

想「ヨリノブは攻撃の出力も、施設を破壊できることも、あるべき剣魂のレギュレーションを超えています。通常のカスタマイズでは、あらゆる知恵を絞っても到底かなわないでしょう」

吉音「じゃあこう、マゴベエタケチヨ合体っ!とか!」

想「ゲームではないんですから、そう簡単にはいきませんよ」

吉音「むぅ~っ、それじゃあえっとぉ……」

想「剣魂方面から考えるとすれば……そうですね。まず一番手っ取り早いのは、すべての剣魂をコントロールしているスカイタワーを掌握する事でしょう。破壊するなりシステムを落すなりすれば、ヨリノブの脅威は無くなります」

詠美「それは出来ないわ。無関係な生徒を大量に巻き込むうえ、さすがに理事会も黙ってはいない」

いかに原則生徒自治とはいえ、そこまで大がかりなことをすればオトナの介入も必至だ。

その場合は最悪両成敗となって、大規模な学園の運営耐性再編にもつながりかねない。

想「ではその代替手段として、教師人に頼みこみ、剣魂のシステムをこちらに都合の良いよう操作してもらう」

朱金「テメェには一片のプライドもねーのか。雪那を倒すためにセンセイの力を借りるだぁ?馬鹿げてるな」

想「ええ、いずれの方法も、生徒たちの信頼を大幅に損ねることになるでしょう。とても望んでとるような手ではありませんね。となれば二択です。自力でシステムを解析し、ヨリノブを弱体化させるか、あるいは上回る能力の剣魂をつくるか。比良賀さんあたりなら、可能かもしれません。」

輝か……なにか懐かしい名前を聞いたな。

こんな大事が起こらなければ、今もアイツや由真たちとにぎやかにすごしていただろうに。

詠美「……彼女に頼るのは気が進まないけれど、事態が事態だけに仕方ないわね。でもその開発は進行に間に合うの?」

想「もちろん相談してみなければわかりませんが……まあすぐにというわけにはいかないでしょう」

桃子「そもそもなんでヨリノブはそんなになったんだ?あいつはちょっと前までちっこいへびだっただろ」

想「それは……まだわかっていませんね。そもそもあれが以前のヨリノブなのかどうか」

朱金「まぁあいつが自分で作るとか無理だろうし、誰かが手を貸したんだろうが」

詠美「……可能性としては、その比良賀さんが、ということもあり得るわけね。もちろん他にも電子系を専攻している生徒は何人もいめけれど、一日二日でできることではないでしょうし。由比雪那はこの反乱のために以前から力を蓄えていた、という事かしらね……」

平良「ともかく剣魂方面から攻めるには時間がかかるということか。既にヨリノブをみた生徒の中から、寝返った方が安全ではないか、という声も聞こえてきている。その作戦だけに頼るのは反対したい」

詠美「そうね。酉居ではないけれど、出来れば正攻法で破りたいところだし」

相手が違反剣魂を使っているからといって、こちらも違反していいという道理はない。それはいわゆる最後の手段にすべきことで。
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