ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】

ー大江戸学園:張孔堂前ー

女子生徒A「さ、歩ける?今は養生所がタダでやってるらしいよ」

女子生徒B「その前に火を……火を、消して……」

女子生徒A「それは専門の人たちに任せて、私たちじゃ、逆に危険になるだけだよ」

男子生徒A「う……ぐっ……あぁっ……!」

男子生徒B「まずいな、こいつは折れてるかもしれない。悪いがもう少しそのままでガマンしてくれよ」

…………

詠美「これが、大江戸学園か。自由自由といい続け、それを免罪符に獣たちを野放しにしてきたツケなのか……やはり鋼鉄の掟が必要だ。徳河の名を持ちながら、私はあまりにも甘すぎた。このままでは学園のすべてが腐り落ちてしまう。急がなくては…………私がやらなければ」

久秀「……」

~~

悠「さてどこから始めるか。かなうさんのところはもういっぱいだろうしなぁ。軽い人ならイオリに任せてもいいかもな。逢岡さんの忙しさを考えたらちょっと申し訳なく思うけど」

吉音「こんな時くらい普通の保健室にもおいてくれるよ、きっと。それに大体、ごはん食べれば元気になるものだし!」

悠「そりゃ超人のお前達だけだろ……」

吉音はもう本調子を取り戻したらしい、普段の天真爛漫さだ。

吉音がこうなら、学園全体にもすぐに明るさが戻ってくるだろう。

久秀「悠」

悠「あー?久秀かそれに風来コンビに寅まで雁首そろえてどうした?」

久秀「……」

悠「なんだ?」

久秀「ちょっと嫌な予感がするのよ。」

悠「……は?」

久秀「という事で……「南町奉行所から特別依頼を受けていた」という名目の久秀と久秀が個人で雇った用心棒は早々に退散させてもらうわ。悠……貴方も甘い考えを持たずに身の振り方を考えなさい」

悠「おい……いったい何を」

雷太郎「俺たちも」

風太郎「あの女が」

雷太郎「何を言っているのか」

風太郎「ワケが分からないが」

雷太郎&風太郎「「あの女の察知能力は本物だ。じゃあな」」

寅「……悠、次はできたら共通の敵じゃなくてお前と闘いたい」

悠「なんなんだ……あいつら?」

吉音「さぁ……疲れたから帰っちゃったのかな?」

詠美「小鳥遊悠、徳田新」

悠「お?あぁ徳河さんに長谷河。おつかれさんした。すごい剣技でしたね」

詠美「あなたたち二人を拘束する。しばらく謹慎者棟で生活してもらうわ」

悠「……あ?なんだって?」

平良「簡単にいえば、お前たちを罪人としてしょっ引くということだ」

ふたりの背後には……いやおれ達を取り囲むように、火盗の面々が立ち並んでいる。

なぜだ?どうしておれ達が捕えられる?

吉音「どうしてなの詠美ちゃん!そりゃあたし、最後はちょっと迷惑かけたけど、でもしっかりがんばったよ!」

詠美「逆ね。最後に少し取り戻したからといって、あなたたちの罪状が消えてなくなるわけではないの」

悠「おれ達の……?」

平良「小鳥遊悠、徳田新の両名は、どの組織にも属さないゲリラ勢力として暴力をふるい続けた。そればかりかさらなる暴徒の由比雪那に対し、なんども襲撃を仕掛けて戦火の拡大を招いた。処罰するには十分すぎる理由だろう」

悠「そんな……確かに由比の打倒に時間がかかって、たくさんの奴らが巻き込まれたのは落ち度かもしれない。でもそれは酉居が無謀な突撃ばかりを繰り返していたことも、原因の一つだろ!」

詠美「だから、彼は既に処分されているわ。あなたたも同様。公平でしょう?」

悠「どうしておれ達だけが……いや、そうじゃない。みんなで協力して掴めた勝利なんじゃないのか?この連携はなんだったんだ?」

詠美「敵の殲滅に、効率の良い方法を取っただけよ」

徳河の表情は凍りついたように変わらない。淡々と「事実」が並べられる。

皆の音頭を取り、吉音を守ってヨリノブを斬った徳河が、腹の底ではこんなことを考えていたって?

そんなことが信じられるわけがない……。
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