ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】
大江戸学園:張孔堂前ー
雪那「なぜだ……なぜお前たちは私の理想を理解しない!」
由比さんは、すべてを失って捕縛されてなお、わめき続けていた。
悠「……」
雪那「徳河の!水都の!酉居のせいでどれだけの有能な士が野に埋もれていると思っている!そいつらは生まれが違うという理由だけで才能を世に開花させることができないんだぞ!こんな世界は作りなおした方がいいんだぁ!!」
これが、学園の三分の一までを手中に収め、猛威を奮った由比雪那なのか。
頼るものが失われると、人はこんなに脆くなれるのか。
想「勘違いはしないでください。私たちもあなたの掲げる理念を悪く思っていません」
雪那「ならこれはなんだ!?」
想「悪かったのはあなたの取った手段です。暴力で制圧し、革命を起こそうなど、どんな立派なお題目を掲げていようと、許すわけにはいきません」
雪那「……」
静かに、諭すように語る逢岡さんのまえに、由比雪那も消沈していく。
想「あなたが活動を始めたのは、ちょうど将軍選挙の開始された辺り……ごくまっとうに考えれば、そこに立候補し、あなたが将軍になればよかったのです。ですが、あなたはそうはしなかった。なぜか……それは、もし自分が選ばれなかったら落選したら……自分は生徒から支持されていなかったことが分かってしまう。あなたはそれが恐ろしくなったのですね」
雪那「違う……わ、私はそんなに……そんなに弱くは……」
想「では改めて問いますが、どうして将軍に立候補しなかったのですか?」
雪那「あ……あ……私は……」
由比は、か細くそう吐いたっきり、うなだれて言葉を失ってしまった。
このひとはヨリノブや十兵衛さんだけでなく、今心まで失ってしまったのだ。
想「……長谷河さん、お願いします」
平良「了解。お前ら、こいつを連れていけ」
火盗役人「は、かしこまりました」
長谷河の指示で、火盗が由比雪那を引っ立てて行く。
その遠ざかって行く背中には、一片の重みすらも感じ取れなかった。
想「やれやれ……これでこちらは片付きましたかね」
悠「お疲れ様です。おれはちょっと……新の様子が心配なんで見てきますわ」
想「ああ、お願いします」
肩の荷が降りた様子の逢岡さんにひと言断って、おれは吉音の方へと駆けよった。
悠「吉音、大丈夫か?」
吉音「あー……ははは、悠かぁ。カッコ悪いところ見られちゃった」
悠「そんなのいつもだろ、ドジっ子ちゃんよ。んで大丈夫か?」
吉音「うん。もう大丈夫だよ。この近くの火は消えたしね。」
悠「お前、火が苦手だったのか」
吉音「まぁね。ちっちゃいのだったらいいんだけど、家が燃えたりすると、ちょっとね……」
ふぅん……昔火事にでもあったことがあるのかな?
悠「それでも、苦手と分かっててもヨリノブに立ち向かったんだな。偉いぞ」
吉音「えへへ、ありがとね。いつまでもこうじゃ駄目なんだけど」
そういって笑う吉音に、こちらも笑みを誘われる。
お互いススや泥でまっ黒だけど、なんとなくそれすら誇らしく見える。
ようやく、この戦いも終わったんだな……。
悠「でもこの戦いで壊れた家やケガをし生徒は多い。……敵味方とわずにな。これからはそれを助けていく仕事が待ってるぞ」
吉音「うん!みんなにお疲れ様でしたをしないとね!」
雪那「なぜだ……なぜお前たちは私の理想を理解しない!」
由比さんは、すべてを失って捕縛されてなお、わめき続けていた。
悠「……」
雪那「徳河の!水都の!酉居のせいでどれだけの有能な士が野に埋もれていると思っている!そいつらは生まれが違うという理由だけで才能を世に開花させることができないんだぞ!こんな世界は作りなおした方がいいんだぁ!!」
これが、学園の三分の一までを手中に収め、猛威を奮った由比雪那なのか。
頼るものが失われると、人はこんなに脆くなれるのか。
想「勘違いはしないでください。私たちもあなたの掲げる理念を悪く思っていません」
雪那「ならこれはなんだ!?」
想「悪かったのはあなたの取った手段です。暴力で制圧し、革命を起こそうなど、どんな立派なお題目を掲げていようと、許すわけにはいきません」
雪那「……」
静かに、諭すように語る逢岡さんのまえに、由比雪那も消沈していく。
想「あなたが活動を始めたのは、ちょうど将軍選挙の開始された辺り……ごくまっとうに考えれば、そこに立候補し、あなたが将軍になればよかったのです。ですが、あなたはそうはしなかった。なぜか……それは、もし自分が選ばれなかったら落選したら……自分は生徒から支持されていなかったことが分かってしまう。あなたはそれが恐ろしくなったのですね」
雪那「違う……わ、私はそんなに……そんなに弱くは……」
想「では改めて問いますが、どうして将軍に立候補しなかったのですか?」
雪那「あ……あ……私は……」
由比は、か細くそう吐いたっきり、うなだれて言葉を失ってしまった。
このひとはヨリノブや十兵衛さんだけでなく、今心まで失ってしまったのだ。
想「……長谷河さん、お願いします」
平良「了解。お前ら、こいつを連れていけ」
火盗役人「は、かしこまりました」
長谷河の指示で、火盗が由比雪那を引っ立てて行く。
その遠ざかって行く背中には、一片の重みすらも感じ取れなかった。
想「やれやれ……これでこちらは片付きましたかね」
悠「お疲れ様です。おれはちょっと……新の様子が心配なんで見てきますわ」
想「ああ、お願いします」
肩の荷が降りた様子の逢岡さんにひと言断って、おれは吉音の方へと駆けよった。
悠「吉音、大丈夫か?」
吉音「あー……ははは、悠かぁ。カッコ悪いところ見られちゃった」
悠「そんなのいつもだろ、ドジっ子ちゃんよ。んで大丈夫か?」
吉音「うん。もう大丈夫だよ。この近くの火は消えたしね。」
悠「お前、火が苦手だったのか」
吉音「まぁね。ちっちゃいのだったらいいんだけど、家が燃えたりすると、ちょっとね……」
ふぅん……昔火事にでもあったことがあるのかな?
悠「それでも、苦手と分かっててもヨリノブに立ち向かったんだな。偉いぞ」
吉音「えへへ、ありがとね。いつまでもこうじゃ駄目なんだけど」
そういって笑う吉音に、こちらも笑みを誘われる。
お互いススや泥でまっ黒だけど、なんとなくそれすら誇らしく見える。
ようやく、この戦いも終わったんだな……。
悠「でもこの戦いで壊れた家やケガをし生徒は多い。……敵味方とわずにな。これからはそれを助けていく仕事が待ってるぞ」
吉音「うん!みんなにお疲れ様でしたをしないとね!」