ｰ大江戸学園:張孔堂前ｰ

ハナサカ『ワォォオンッ!』

朱金「セィヤァアアアアッ!」

ヨリノブ『ガッ!ジェイッ!』

朱金「うおっとぉ!?」

ハナサカのサポートを受けた、空を切り裂くほどの蹴り。

それをヨリノブは、身をのたくらせるだけで弾き返した。

ヨリノブ『ジェェェ!』

朱金「このバケモノがっ!」

平良「貫くっ!」

その直後、朱金の背後から長谷河が突きかかる。影に隠れての二段攻撃……!

雪那「そんな小細工がっ!ヨリノブ!」

ヨリノブ『ジェアッ!』

平良「うお……おおおっ!?」

しかけた長谷河と、まだ体勢の整わない朱金がまとめて炎に包まれる。

シンゴ『グォォォオオオオッ!!』

その直後、長谷河の剣魂シンゴが飛びこみ、その身を盾にして二人をかばった。

二人が射程範囲から離れるとほぼ同時に、シンゴの身体が光の粒となって散って行った。

雪那「並の剣魂ではただの一撃も耐えきることはできません。まだヨリノブを侮っているようですね。」

平良「チッ……これでも全力のつもりだったんだがな」

桃子「まだまだぁ!こっちからの攻撃は終わっちゃいねぇぞ!」

真留「いきますよ、ガラッ八!」

第一波は退けられた。しかし誰もひるむことなく、次々に攻撃を仕掛けていく。

大きな身体を振り回し、あたりかまわず火炎をまき散らす。

尻尾の触れた家屋が破壊され、炎も燃えうつりはじめた。自陣の中だというのになりふり構わない戦い方だ。

いける。由比は口とは裏腹に、かなり焦っている。チャンスはいまだ!

悠「…………!」

雪那「むっ!?こちらを狙ってきたか!」

悠「うおおおおっ!」

十兵衛「いかに私の弟子でも、まだやらせるわけにはいかんな!」

悠「ちっ……師匠!」

十兵衛「まだ状況は万全ではない。お前の好きにはやらせんぞ」

悠「どうして……どうしてアンタはこうしてまで奴を守る!」

十兵衛「では逆に問おう、小鳥遊。お前は誰のために戦っている」

悠「誰って……」

十兵衛「今由比雪那に付いている生徒で、最初から彼女を指示していた人間がどれだけいたと思う?やつらは目先の情勢で、自分の利益で簡単に身の振り方を変える。そんな愚か者たちのために戦う意義など、本当にあると思っているのか?」

師匠の剛剣に弾き返され、二歩三歩と後退る。

しかし、なんといわれようとここで諦めるわけにはいかない。

悠「ぐっ……うおおおっ!」

十兵衛「おっと。さっきよりはマシな拳だぞ」

悠「師匠……アンタが言ってる事はよく分からない。でもな、おれは誰かのために戦うとかそういうことはどうでもいい。おれが助けたいから、おれがそうしたいから戦う。」

十兵衛「ほう。それで?」

悠「おれは由比雪那のようなやつが許せない!だから倒す!それだけだ!」

十兵衛「いいぞいいぞ、なかなかの気迫だ。しかしその程度では、私を抜くには至らないな」

悠「例えそうでも、おれがあんたを押さえていれば!」

十兵衛「いいのか?お前の相棒は尋常ではない様子だが?」

悠「あっ……?」

師匠の言葉に思わず振り返る。そこで見たのは……

吉音「あ……あ、あぁぁ……」

悠「新……?」

ヨリノブの火炎が周囲の家屋に移り、ゴウゴウと燃え盛っている。

吉音はそのただ中で、自分の身体を抱くようにして棒立ちになっていた。