ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました

ー大江戸学園:武家屋敷ー

絶望の嗚咽を漏らす英恵。そのとき…

「待ちやがれ悪党ども!」

力強い声がふすまを貫き響いた。御前は不機嫌にいった。

「ええい、今度はなんだ!」

「庭の方からです!」

「何者か!」

天狗党がふすまをあけると、そこには遊び人の金さんが立っていた。
腰に手を当てて声を張る。

「ようやくあえたなぁ。天狗の親玉さんよぉ」

「貴様何者だ」


「オレは金さん、遊び人の金さんさ」

「遊び人、だと?」

「オレは女を泣かせる奴が一等嫌いでなぁ。今夜も泣き声を聞いて飛んできたってわけさ。」

天狗党幹部のひとりが叫んだ。

「貴様、御前に対して無礼であるぞ!」

金さんは打って返した。

「知ったことかよ。何が御前だ、偉そうに。やってるこたぁ、手下の女を手込めにしようとしてるゲス野郎じゃねぇか。天狗の世直しだぁ?はん、聞いて呆れるぜ。世直しにかこつけたてめぇらの悪事の数々、いろいろ耳に入って来てるんだぜ?」

「おのれ…言わせておけば…」

「永太みてえな単純な奴をだまくらかしてはいいように使いやがって。まずはそこのふたりは返してもらうぜ。」

御前はいった。

「それは出来ぬ相談だな」

「悪いなぁ、金さんは、はい、そうですか、っと引っ返すえすような諦めいい人間じゃ無いんだよ。」

「なら、力づくで追い返すまでだ」

天狗御前は傍らに控えた幹部に目配せする。
頷く幹部。

金さんは嬉々していった。

「力ずくか、そいつはオレも好きなやりかただぜ。てめえら全員まとめてかかってきやがれ。」

「いわわれずとも!けしてただでは帰すまいぞ!皆のもの、かかれ!」

ふすまが開いて、十人余りの天狗面の男達が現れた。金さんを取り囲む中、おれは声をあげた。

「いきなり立ち回り中かよ。」

新は金さんのすぐそばで騒ぐ。

「金ちゃん、ひょっとしてピンチ?大ピンチ?」

おれたちに気がついた金さんはキョトンとしていった。

「お?なんでお前らが一緒にいるんだ?」

「え~だって、また喧嘩が起きそうな気がしたんだもん」

恐ろしいことにその勘はたしかに当たっていた。
喧嘩かどうかは別にしてだけど。
天狗党幹部がおれたちにいった。

「なんだ、貴様らもこの遊び人の仲間か?」

おれはどう返事をしようかと考えようとしたが、新は二つ返事でそうだといった。頼むから脊髄反応で喋るのは勘弁してほしい。

「ひとり相手によってたかって斬りかかるなんて卑怯だぞ!あたしは金ちゃんを助太刀する!」

「おいおい、そんなの頼んでねぇぞ。」

「いいから、いいから。」
「ま、いいか。」

あくまでマイペースな新と軽い金さん。
おれは頭が非常に痛くなってきた。
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