ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】

ー大江戸学園:日本橋ー

悠「オラァ!」

男子生徒C「ぁぐっ!」

あのふたりには到底及ばないものの、おれだって前に出た以上はやれることはする。

悠「最初(ハナ)っから飛ばしていってやる。すぅぅぅ……弾針剄!」

龍剄気孔が空気を圧縮して針のように鋭く敵陣を貫き立ちふさがる敵を吹き飛ばす。

この先には強敵が待ち構えている。ここでみんなを消耗させ過ぎるわけにはいかない。

男子生徒D「たぁぁぁーっ!」

悠「むっ!」

しまった、前に気を取られてる間に後ろから……

男子生徒D「うぁっ!」

はじめ「まだまだ、遅い」

悠「佐東さん。助かりました、ありがとうございます」

はじめ「別に……」

おれへの対応もそこそこに、佐東さんはまた前へ向かって歩き始めた。

やや頼りない足取り。かと思いきや、敵が近付いた瞬間豹変し、電光石火の抜き打ちを放つ。

誰も触れることができない、まるで見えない壁でもあるかのようだ。

詠美「後ろは気にしなくていいわ。目指すのは由比雪那の首ひとつ。ただ本陣に向かって進むのみ!」

先頭に立つ吉音と鬼島さんが風穴をあけ、続くみんなでそこを押し広げていく。

斬り倒すのはかかってくるものだけ。討ち漏らしがあれば、後から続く仲間がフォローする。

早くも由比軍の先方が崩れ始めた。

悠「みんな強い……これまで手を焼いてきたのが嘘みたいだ」

詠美「もちろんそれもあるけど、相手側も弱いのよ」

悠「どういうことっすか?」

詠美「由比さんの門下生は、結束力はあったけれど武術については素人。組織としての行動にもまったく恋度が足りていないわ。それをトップのカリスマ、および戦略でカバーしていただけのこと。正面からの闘いでは脆いわ」

悠「逆にいえば、これまで由比を長らえさせてきたほど、こちらに結束がなかったってことか……」

詠美「弁解できる余地はないわね。」

そんな会話をしている間も、前衛はどんどん敵を蹴散らしていく。

朱金「あああもう我慢ならねぇ……オレもいくぜぇぇぇ!」

真留「あ、ダメですよ遠山様ぁぁぁあ!」

悠「朱金っ!」

これまで後ろで大人しく控えていた朱金だが、とうとう痺れを切らせたか、最前線へかけだしていった。

寅「やっと動いたか遠山……よし、俺も出るぞ」

久秀「ご勝手に」

朱金にすぐ後に寅が続く、堪えしょうがないというか……久秀も止める気がさらさらない。

真留「うう~、戻るよういってきます!」

詠美「かまわないわ」

真留「で、ですが」

詠美「作戦は全員で休みなく攻め続けることで、敵の根負けを狙う事よ。遠山さん個人の活躍になんて、期待していないわ」

悠「こんなときでもクールなんですね。」

詠美「それに遠山さんにしろ右京山さんにしろ、思うままに身体を動かして高揚してもらった方が、よい結果を出そうな気がしない?」

悠「あ……そうですね、あいつらなら押し込めても腐るだけかもしれません。失礼しました」

詠美「別にかまわないわ。それよりまだまだ戦いは続くわよ。気を引き締めましょう」

悠「うっす!」
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