ｰ大江戸学園:執行部室ｰ

吉音「へーい!詠美ちゃんおひさし～♪」

詠美「……ええ、久しぶりね、徳田さん」

吉音「最近大活躍なんだよねー。たくさん聞いてるよ～」

詠美「何かの間違いでしょう」

吉音「そんなことないでしょ～。だって今は執行部のみんなが言うこと聞くんでしょ?」

詠美「聞いてくれているのよ。聞かせているわけではないわ｣

吉音「みんな詠美ちゃんの事が好きなんだね。いいなぁ～」

詠美「……はぁ。徳田さん。あなたはここがどういう場なのか、理解していないの?」

吉音「むむ?詠美ちゃんなんだか元気ない?」

詠美「少しは話しを聞いて。パーティに招いたわけではないのよ」

吉音「……ごめんなさい」

重ねてたしなめられ、はしゃいでいた吉音がようやく口を閉じた。

徳河さんは一息つき、広間に揃ったおれ達を見まわした。

詠美「みなさん、突然呼びつけて申し訳ありません。集まっていただいてありがとうございます。それぞれにお忙しいでしょうが、しばらくお付き合いをお願いします」

朱金「んな挨拶はいらねぇよ。サッサと本題に入ろうぜ」

想「遠山さんももう少し丁寧な言葉を使えませんか?町奉行の地位にふさわしいとはとても言えませんよ」

朱金「テメェもつまんねぇところにこだわるな。馬鹿にしているわけでもねぇし、いいだろが別に」

真留「遠山様!どうしていつもいつもそうケンカ腰なのですかっ。ここにいる皆さんは、手を取り合っていかなければならない仲間ですよ。それなのにっ」

久秀「クスクス。聞いた?手を取り合っていかなければいけない仲間ですって……身内を無理矢理に失脚させた輩を筆頭に仲間意識……用済みになれば次に消されるのはこっちかもしれないのにねぇ。」

真留「ッ……!」

悠「久秀、挑発をするな」

久秀「挑発なんてなんのことかしら、久秀はひとりごとを呟いただけよ?」

真留「例えひとりごとでも……!」

桃子「あ～、おチビよ。お説教もいいけどそろそろ詠美がキレそうだぞ」

詠美「コホン……まぁ、この状況でも平常心を失わないところは、見習うべきかもしれないわね。」

朱金「へへっ、お前より詠美サマの方が物わかりがいいぜ?」

真留「遠山様っ!」

……いつになったら話しが進むんだろう。こんなので大丈夫なんだろうか。

悠「みんな、徳河さんの話しを聞かない……?」

詠美「んんっ……要望もあったことだし本題に入らせてもらうわ。一時は明らかに劣勢だった由比軍が、また勢力を盛り返してきた。最近になって使い始めた強い剣魂と、協力していることが明らかになった柳宮十兵衛の存在が要因ね。まだ確認していない人は?」

悠「……」

徳河さんの問いかけに手を挙げる人はいない。

由比は、強力な剣魂ヨリノブと十兵衛を戦場に出すようになった。これまで何度か鉾を交えているが、いずれも隙を見いだせず、敗北している。

そのせいでこのまま追い詰められるか、と思った由比軍が、徐々に戦線を押し返して来ている。

今回おれたちが江戸城の執行部室に集められたのは、それへの対策を練る会議を行うためだ。

詠美「奪還した施設のいくつかも、再度落とされてしまった。速やかに対処ができなければ、事態が泥沼化してしまう恐れがある。これまでは辛うじて体制への抗議行動とも言えなくもなかったけれど、今は単なる武力侵攻でしかないわ。もはやかける情けは、ない」

スッと背筋が冷たくなる。

徳河さんは常にクールな装いだけど、今ははっきりと怒りと焦りの感情が表に出ている。

そこまで強く危険視しているってことだ。