ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました

ー大江戸学園:武家屋敷ー

英恵「や、やめてください!」

英恵は広い座敷の真ん中に投げ出されていた。
その屋敷はまさに以前、御前と呼ばれた男と天狗党の面々が企みを巡らせていた場所だった。

御前「なぜ逃げる。先ほどお前は永太とやらを足抜けさせられるならなんでもすると申したではないか」

英恵「ですが……お願いです。それだけは許してください!」

御前「ならん。思い上がるな、お前のような下賤の娘に他にどのような使い道がある。くっくっくっ、諦めよ。逃げられはせんのだ。」

彼のいうとおり、部屋の出入り口には天狗面の男が居並び、英恵の逃げ場を塞いでいた。

天狗党幹部A「娘。御前からお情けを頂けるなど大変な名誉だぞ。喜んで受けとるがいい」

天狗党幹部B「まこと、そのとおり」

英恵「きゃあ!いやです、いやです!」

天狗御前の太い腕が英恵の肩をがっちりと掴む。
英恵は暴れて御前の手を逃れようとしたが叶うはずもなく。

御前「よいではないか、よいではないか。減るものでもなし」

御前の手が英恵の帯にかかる。
御前が帯を力一杯に引っ張ると英恵の身体はまるでコマのように回転した。
着衣乱れ、力なくその場に倒れこむ英恵。

御前「くくく、楽しもうではないか。」

ずしりと畳を踏み、再び天狗御前は英恵に迫る。
そのとき廊下から声が飛ぶ。

『英恵っどこだ!』

天狗党幹部A「なにごとだ?」

どたばたと廊下を踏み鳴らし、座席に飛び込んできたのは永太だった。

英恵「永太さん!?」

永太「こ、これは…」

着衣の乱れた英恵の姿を見た永太は御前や幹部らを睨み付けた。

天狗党幹部「貴様、今頃、仕置きを受けているはずではなかったのか?」

永太「御前!これはいったいどういうことですか!」

天狗党幹部A「ええい、こやつを抑えろ!」

天狗党員I「はっ!」

幹部の声に天狗党員数名が永太へと飛びかかる。

永太「は、離せ!」

天狗党員I「うわっ」

天狗らの腕を振り払った永太は天狗御前へと掴みかかろうとした。

永太「これが、こんなものが天狗党なのですか!」

御前「目障りだぞ」

御前は腰の刀に手をかけると永太を迅雷の速さで切り伏せた。

永太「うわあああっ!」
英恵「きゃあああ!」

強力な斬撃に吹き飛ばされるように仰向けに倒れてしまう永太。
そしてかさなる英恵の悲鳴。

御前「ふん、つまみだせ。」

天狗御前は倒れた永太を見下ろしながら、一度大きく刀を振るって鞘に収め、党員達に顎で指示をだした。。

党員らは気絶した永太を座敷の外へと引きずり出そうとする。

英恵「永太さん!」

御前「おっと。お前はここに残るんだ。お前の男は俺が斬り倒してやった。これで邪魔者は居なくなった。さぁ、続きを楽しもうではないか。」
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