ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】

ー大江戸学園:張孔堂前ー

想「散開してください!周囲に気を使う必要はありません!」

ヨリノブの巨体が暴れているせいか、由比や手下は遠巻きに見ているだけだ。

桃子「図体がでけぇだけだ!あんなのろまにやられるかよ!」

吉音「うん!行って、マゴベエ!」

桃子「タマ、お前もだ!」

久秀「ダンジョー、集中爆撃」

マゴベエ『ピュイィィーッ!』

タマ『フゴォーッ!』

ダンジョー『ジョォォォー!』

こちらも剣魂のマゴベエとタマが、猛然とヨリノブに向かって突進し、ダンジョーは火薬の塊りを発射する。

ヨリノブは地上のおれたちに気を取られ、頭部ががら空きだ。

雪那「ヨリノブの武器は身体だけではありませんよ」

不敵に言う由比に応じるかのように、ヨリノブの目が光った。

ヨリノブ『ジェェェェアアアアアッ!!』

想「なっ……火を吹いた!?」

追っていたマゴベエとタマが瞬時に消し飛び、火薬の塊りが爆散する。火の勢いも相まって、こちらまで迫ってくる。

悠「あっちぃっ!!もっと距離取れ!」

ヨリノブの射程は尻尾の届く範囲じゃない、もっと長く広い……!

桃子「ちっくしょー!よくもやりやがったな!」

久秀「チッ……この火力。全力のダンジョーだったとしても悪化するだけね」

剣魂は普通の生物じゃない。消えても死ぬわけではないとはいえ、再召喚には時間がかかるし、火薬を媒体とする久秀のダンジョーは自ら引っ込めた……。

その間は自分だけで闘うしかない。

桃子「うぉぉらぁあーっ!」

ヨリノブ『ジャッ!』

鬼島がもう一度殴りかかっていくが、即座にヨリノブが向き直り、火炎攻撃を仕掛けてきた。

吉音「うわっ!たっ、えぇーいっ!」

その隙を突き、背後から吉音が斬りかかるも、尻尾を振りまわされて近づくことも出来ない。

想「くっ……強い!由比さんが常に自信に満ちていたのは、このためですか」

ヨリノブ『……ジャアアァァッ!!』

雪那「フフフフ……威勢のいいのは、口だけですか?」

吉音「うっ、うう……」

ヨリノブの呼吸に合わせて、口からちろちろと炎の舌が垣間見える。

その強力な火炎攻撃で、おれたちは雪那と刀を交えるどころか、近づくことすらできずにいた。

雪那「さぁ、誰か一太刀でも、私に浴びせることができるものは、いないのですか?」

桃子「……抜かせ!剣魂の陰に隠れてこそこそしやがって……正々堂々勝負しろってんだ!」

雪那「これは心外な、私は正々堂々闘っていますよ。剣魂の能力も実力のうち……違いますか?」

桃子「……くっ」

伊都「同感ですわね。戦いに卑怯もくそもないわ。要は、勝てばいいんですもの……」

悠「……あっ?」

今、大神の声がしたと思ったけど……何処にいったんだ?姿が見えない……。

伊都「……はぁっ!!」

雪那「……なっ!?」

悠「なにいぃぃっ!?」

いきなり雪那の側の地面が割れたかと思うと、そこから大神が飛びだした。

伊都「ダイゴロー、土とんの術!その首もらいましたわ!!」

なるほど……大神の剣魂の力で、地中から雪那に接近していたのか!

雪那「ええい……!」

とっさのことで、雪那はヨリノブを戻すことができない……これは、決まったか!?
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