ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】

ー大江戸学園:地下道ー

唯「あ、ここ左」

時おり猫目から指示が出て、それに従う。

既に方向感覚と、地上なら今どこになるのか、危うい。訓練と経験でその辺りは補えるのか。

由真「来たわよ。もうこの上は由比雪那の本陣に入ってる。外に出たらすぐに戦いになる。準備して」

進む先に上向きの階段と、その先に扉が見えてきた。

その出入り口は、入って来た時のように、きっと街中の目立たないところにまぎれているんだろう。

桃子「おお……そうなのか。へへへ、腕が鳴るな」

吉音「あたしとモココさんが前に出るから、想ちゃんは後ろに居てね」

想「すみません、お願いいたします」

寅「……ちっ、俺も最前線に出たかった。」

テーピングで手を固めつつ寅が愚痴っている。

悠「あ、いいなソレ。おれにも巻いてくれ」

寅「くれてやるから自分で負け」

悠「ありが寅ー!」

寅「死ねッ!」

お礼を言っただけで罵声を浴びせられる始末。

悠「……っか、前線でたかったら出たらいいんじゃね?」

寅「中衛のが敵が多そうだろ」

悠「バーサークタイガー」

寅「死ねッ!」

二度目の罵声。なんか目から汁が出そうになってきた。

軽く隊列を確認し、吉音がドアノブに手をかける。内側からはキー無しで開くらしい……って当然か。

吉音「それじゃあ……いくよ!」

皆の闘志が、その内側で膨れ上がる。

最大にまで高まった緊張が、爆発する瞬間……!

吉音「御用だ御用だぁーっ!」

桃子「雪那ァ!覚悟しやがれ!」

由比軍男子A「うお!?な、なんだ、どこから!」

由比軍男子B「てっ、敵襲だ!みんな応戦しろぉ!」

その声に、周囲からもぞろぞろと由比の門下生たちが出てくる。

ここは敵本陣の真っただ中、時間をかければそれだけ不利になっていく。

悠「やらせるか!一気に決める!」

ドガッ!
由比軍男子B「ぐあっ!」

張孔堂はもう道の先に見えている。あそこにいるはずの由比を捕えれば、この戦いは勝ちだ。

おれたちの後ろからも次々に精鋭が飛びだし、敵中へと踊りこんでいく。

由比軍男子A「いかせるな!食い止めろ!」

的側もこちらの意図を悟り、張孔堂のある方面に人数を集中して固める。

伊都「まぁまぁみんな頑張り屋さんですわねぇ。そんな真面目にならなくてもいいのに。ねぇダイちゃん」

ダイゴロー『チャン!』

悠「あなたはもう少し真面目になってほしいんですが」

伊都「仕方がないわねぇ。ちょっとだけよ?」

のんびり眺めるだけだった大神も、やっと前線に進み出ていく。

悠「……」

伊都「さぁ、お姉さんは何人でもいっしょにお相手してあげられるわよ。まとめていらっしゃいな」

乙級男子A「とっ、止めろ!雪那先生のところに近づけるな!」

そうか、由比はあそこにいるんだな。確信できてよかった。

由真「あっちからもこっちからも人が向かって来てる!急いで!」

屋根の上から偵察している由真の声が飛んできた。

想「徳田さんたちの進行を援護してください!」

「「「「おう!」」」」

逢岡さんの指示で、連れて来た南町の精鋭同心や岡っ引きたちがさっと左右に分かれる。

横合いからの敵増援に備え、吉音たちに前へ集中させる動きだ。
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