ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】
ー大江戸学園:かなうの診療所ー
かなう「ふん……なるほど。そいつつとんでもないじゅうろうどうだな」
かなうさんは得心した様子ながら、不機嫌な顔で鼻を鳴らした。
悠「まったくです」
かなう「徳河の身体を、ヤクロウの力も使ってスキャンしてみた。こいつは心臓に疾患があるぞ」
悠「ふむ……」
かなう「なんだ。驚かないのか」
悠「呼吸の感じで……肺か胸。どっちかは患ってると思ってた。」
かなう「学園のデータベースには、保険方しか見られない、本人にも知らされない個人の健康情報というものがある。その中にもしっかりと書かれていた」
悠「悪いのか?」
かなう「いや、ただ血管が一般より細く脆いというだけで、日常生活にはなんの問題もない。ただし過度に激しい運動をさせると、また倒れてしまう可能性がある。もしかすると今後の激戦・激務には少々厳しい身体かも知れんな」
悠「徳河さんはこれから忙しくなってくると思うんだけど……」
かなう「そんなことは知らん。自分の身体とどっちが大切なのかといってやることだな」
過労だけじゃなく、もともと身体が弱かったか……。
悠「その疾患って、治らない?」
かなう「大手術をして、成功すれば治るだろうさ。だがそのためには当然本人の協力が必要だし、失敗すれば最悪のこともあり得る。それを伝えたとして、本人はどう答えるだろうな」
徳河さんの性格を考えると、それを理由に自重するなんてことはなさそうだ。それに……徳河さん自身が、自分の身体のことを知っているという可能性はゼロではない。
でもそうすると知っていながら無理を通し、倒れたという事になるし。
悠「いずれにしても、無理なんてしていない、なんて答えそうだな」
徳河さんは、他人を頼れというと反発してもっとひとりで抱え込もうとするひとだ。
本人にはいわずに、長谷河さんたちへそれとなく伝えておく方がいいかもしれない。
特に吉音にはいわないほうがいいな。あいつは必ずお節介を焼きに行く。
かなう「さて報告は済ませた。今日はもう帰れ。今は安静にさせておくことが必要だからな。金なら心配ない。徳河からふんだくってやる」
悠「すみません、よろしくお願いします。おれも新と長谷河のことが心配だ。落ち着いたらまたお礼に来ますわ」
かなう「おう。そのときは手土産も頼むぞ」
悠「約束します。それじゃ」
予想以上の、気がかりなことを知ってしまった。後ろ髪引かれながらも、おれはかなうさんの養生所を後にした。
ー大江戸学園:南町奉行所ー
やっと着いたか、さすがに疲れた……。
休みたがる身体に鞭打ち、引きずりながらなんとか南町奉行所までやってきた。
逢岡さんに顛末の報告が必要だし、何より吉音と長谷河のことが気がかりだ。何か情報が入っているといいんだけど……。
吉音「あっ、悠だ!おぉーい!」
悠「よしっ……新!無事だったのか!」
奉行所の入り口まで来たところで、中から吉音が駆けだしてきた。
その後ろには、逢岡さんと、朱金の姿も見える。
吉音「うん。ずっと逃げてたら金ちゃんが来てくれたんだ。おにへーも今はお城に居るはずだよ」
悠「そうか……諦めなくて良かったな。なんとかなるもんだ」
朱金「よう。聞いたぜ。てーへんな目に遭ったんだってな」
悠「まったくだ。朱金、ありがとう。助けてくれたんだな」
朱金「夜中にギャーギャー騒いでバタバタしてるって通報があってな。行ってみりゃトンでもねー数でたまげたぜ。どうやらあいつ、由比の手のものだったらしいな。オレたちが駆けつけたらあっという間に逃げてった。ありゃそういう指示がしてあったな」
てことは、あのあたりは北町管轄だったのか。
どこをどう走ったかなんてさっぱり分からなかったな。
かなう「ふん……なるほど。そいつつとんでもないじゅうろうどうだな」
かなうさんは得心した様子ながら、不機嫌な顔で鼻を鳴らした。
悠「まったくです」
かなう「徳河の身体を、ヤクロウの力も使ってスキャンしてみた。こいつは心臓に疾患があるぞ」
悠「ふむ……」
かなう「なんだ。驚かないのか」
悠「呼吸の感じで……肺か胸。どっちかは患ってると思ってた。」
かなう「学園のデータベースには、保険方しか見られない、本人にも知らされない個人の健康情報というものがある。その中にもしっかりと書かれていた」
悠「悪いのか?」
かなう「いや、ただ血管が一般より細く脆いというだけで、日常生活にはなんの問題もない。ただし過度に激しい運動をさせると、また倒れてしまう可能性がある。もしかすると今後の激戦・激務には少々厳しい身体かも知れんな」
悠「徳河さんはこれから忙しくなってくると思うんだけど……」
かなう「そんなことは知らん。自分の身体とどっちが大切なのかといってやることだな」
過労だけじゃなく、もともと身体が弱かったか……。
悠「その疾患って、治らない?」
かなう「大手術をして、成功すれば治るだろうさ。だがそのためには当然本人の協力が必要だし、失敗すれば最悪のこともあり得る。それを伝えたとして、本人はどう答えるだろうな」
徳河さんの性格を考えると、それを理由に自重するなんてことはなさそうだ。それに……徳河さん自身が、自分の身体のことを知っているという可能性はゼロではない。
でもそうすると知っていながら無理を通し、倒れたという事になるし。
悠「いずれにしても、無理なんてしていない、なんて答えそうだな」
徳河さんは、他人を頼れというと反発してもっとひとりで抱え込もうとするひとだ。
本人にはいわずに、長谷河さんたちへそれとなく伝えておく方がいいかもしれない。
特に吉音にはいわないほうがいいな。あいつは必ずお節介を焼きに行く。
かなう「さて報告は済ませた。今日はもう帰れ。今は安静にさせておくことが必要だからな。金なら心配ない。徳河からふんだくってやる」
悠「すみません、よろしくお願いします。おれも新と長谷河のことが心配だ。落ち着いたらまたお礼に来ますわ」
かなう「おう。そのときは手土産も頼むぞ」
悠「約束します。それじゃ」
予想以上の、気がかりなことを知ってしまった。後ろ髪引かれながらも、おれはかなうさんの養生所を後にした。
ー大江戸学園:南町奉行所ー
やっと着いたか、さすがに疲れた……。
休みたがる身体に鞭打ち、引きずりながらなんとか南町奉行所までやってきた。
逢岡さんに顛末の報告が必要だし、何より吉音と長谷河のことが気がかりだ。何か情報が入っているといいんだけど……。
吉音「あっ、悠だ!おぉーい!」
悠「よしっ……新!無事だったのか!」
奉行所の入り口まで来たところで、中から吉音が駆けだしてきた。
その後ろには、逢岡さんと、朱金の姿も見える。
吉音「うん。ずっと逃げてたら金ちゃんが来てくれたんだ。おにへーも今はお城に居るはずだよ」
悠「そうか……諦めなくて良かったな。なんとかなるもんだ」
朱金「よう。聞いたぜ。てーへんな目に遭ったんだってな」
悠「まったくだ。朱金、ありがとう。助けてくれたんだな」
朱金「夜中にギャーギャー騒いでバタバタしてるって通報があってな。行ってみりゃトンでもねー数でたまげたぜ。どうやらあいつ、由比の手のものだったらしいな。オレたちが駆けつけたらあっという間に逃げてった。ありゃそういう指示がしてあったな」
てことは、あのあたりは北町管轄だったのか。
どこをどう走ったかなんてさっぱり分からなかったな。