ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました

ー大江戸学園:寺の境内ー

金「ん、なんだ?」

真留「ここは私に任せて下さいませんか?代わりに遠山様は永太さんを助けて下さい。彼の証言は大きな証拠になります」

金「なるほどわかった。じゃあそっちの天狗二匹はお前に任せるぜ。あの程度ならいい稽古がわりになんだろ」

真留「ありがとうございます」

天狗党員B「何をごちゃごちゃいってやがる!」

天狗党員D「こんなチビに舐められてたまるか!」

金「おい、真留を見た目で判断すると痛い目に遇うぜ」

天狗党員B「ふん。こんな小娘になにができる」

金「だとよ、真留。遠慮なくやっちまいな。」

真留「はい。お任せください。ガラッ八!」

真留は帯に差していた十手の柄を握ると掛け声をあげる。
真留の前の空間がかすかに揺らいだかと思うと、そこには空飛ぶ金魚が一、二、三…合計八匹も出現していた。

銭を構えた真留が再び声をかけると金魚たちは真留の指に挟まれた銭の近くに整列する。

天狗党員B「ど、どうせ数に頼った弱々しい剣魂、おそるるにたらず!」

天狗党員D「面を砕かれた恨みはらしてやる!うおりゃー!」

先ほど銭を喰らった方が真留に殴りかかる。

真留「いけ!イチ、ロク、サン!」

突っ込んでくる天狗に対して真留は番号を呼びながら銭を投げつけた。
番号を呼ばれた金魚たちは投げられた硬貨を抱えるようにして男に向かって飛ぶ。

天狗党員D「なんだ、こいつら?!」

金魚と共に飛んでくる銭を振り払おうとする天狗面だったが、金魚らは鋭い角度で銭の進路を変えて、その腕をかわす。

真留「そこだ、打て!」

真留はさながら楽団指揮者のように腕を振り上げた。指揮に合わせて金魚たちは一気に加速して突進する。そしてギリギリで銭を離すと急上昇して離脱した。

その姿はまるで急降下爆撃機のようだった。

天狗党員D「ぐ、ぐおぅ…」

急所三ヶ所に正確に銭を叩きつけられた天狗面は獣のようなうなり声をあげるとその場に崩れ落ちた。

天狗党員B「こ、このぉ!!」

仲間を倒されたのを見て冷静さを失ったもうひとりの天狗が闇雲に飛びかかってくる。

真留「次はお前たちだ。いくよ。二、ハチ、ヨン!」

真留が再び銭を投げつけ、そして金魚たちがそれにのる。

天狗党員B「うわあぁ!?」

機動力を誇る小さな爆撃機になすすべもない。
手をばたつかせて銭をかわそうとするが、空中自由に泳ぐ金魚たちは容易くすり抜ける。

真留「打ち倒せ!」

天狗党員B「ぎゃうっ!?」

金魚たちは再び男の急所へのピンポイント爆撃を成功させた。

いいぞ、みんな戻れ!と呼び掛けに応えて金魚たちは真留の近くに再び整列した。

真留「ふぅ、これじゃあ稽古にもなりません。」

天狗党員A「な、なんだと…」

金「おい、お前の相手はこっちだ……ぜっ!」


真留とその剣魂の活躍に気をとられていた男のこれまた死角より、 金さんの上段回し蹴りが側頭部へと叩きこまれた。
着けていた面が吹き飛ぶほどのすさまじい蹴りの威力。

金「ちょろいぜ。さて天狗どもは倒したぞ。あとは永太を…」

真留「どうしました?」

金さんが振り返ったときにはすでに永太は寺の境内から抜けようとしていた。

金「あいつ逃げやがった!」

真留「ええー!?なにやってるんですか!」

金「何やってるもなにも助けてやったのにあいつがにげて…」

真留「この場はわたしが押さえておきますから遠山様は後をおってください!」

金「お、おう、わかった。あとは頼む!」
72/100ページ
スキ