ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】

ー大江戸学園:大江戸城執行部室ー

詠美「将軍である徳河吉彦が姿を消してから数ヶ月、未だにその身は発見されず、真相は闇の中です。そこから現在に至るまでの、数々の混乱、治安の低下の原因は、将軍不在にあるのは明らかです。それを受け、新将軍の選抜選挙を執り行う事を決定いたしました。賛否様々あるかと思われますが、ご協力のほどお願いいたします」


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ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

吉音「ほら!見て見て悠!詠美ちゃんが将軍だよ!」

バシバシっ!
悠「痛い痛い、見てるよ。でもまだ決まったわけじゃないんだろ?」

輝「とはいっても他に立候補者もないみたいだし、このままだと信任投票って形になりそうだけどね」

吉音「詠美ちゃんが反対されるわけ無いし!決まりだよ!」

悠「そこのところは同意するがな」

やっぱりというか、徳河家の詠美さんは将軍に立候補するらしい。

吉音はそれを喜んでばかりいるけど、自分はどうするんだろう。吉音のことを知っている人たちから何かいわれたりはしないんだろうか?

まぁ誰であっても、みんながなって欲しいと思うひとがなれば、それでいいんだろうけど。

輝「この選挙戦は順当に終わりそうだし、あんまり特ダネはなさそうだなぁ。誰か対抗で立候補する人はいないかい?」

吉音「詠美ちゃんが嫌な人なんていないもん。でないよ~」

輝「ま、普通に考えりゃそうだよねぇ」

全校行事といえば御前試合のことが思い出される。

あの時はちょっとした騒動があったけど……今度は何事もなく終わればいいなぁ。


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ー???ー

雪那「新たな将軍を立てる……といいつつ、その候補は徳河の血筋ただひとり。結局は何も変わろうとしていない。これでは同じことを何度も繰り返すだけです。学園内での競争がどうだと人はいいますが……それもすべて徳河と、その側近の手の内で踊っているだけにすぎません。本気で時代の先を目指すのであれば、学園の中でも血の入れ替えが必要なのです」

「素晴らしいご高説だな。しかし要は、学園の覇権が欲しいというだけなんだろう?」

雪那「低俗な物言い……あなたと同じにされては困りますね」

「フッ、気にするな。それが悪いといってるわけじゃない。むしろ好ましくすら思っている。力は貸してやるから、安心していろ」

雪那「私は、あなたの真意などに興味はありません。その力が有用だから、利用させていただくだけです。もうすぐです……安穏とした徳河の天下に終止符を打つのは、この私なのですから」



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ー大江戸学園:武家屋敷ー

「裏口の方へ回ったぞ!頼む!」

「おう!こっちは塞いだ!逃げ道はないぞ!」

役人生徒「くぅぅ……なんだお前たちは!どうして俺を狙う!」

「世直しのためだ。お前たちのような腐った部分を放っておけば、健康なところまで蝕まれていく。一刻も早く、切り取って排除しなければならないんだ!」

役人生徒「な、なにが腐っているだっ!これまで学園を支えてきたのは俺たちだぞ!」

「これからは必要無いってことだよ!てぁぁあっ!」

役人生徒「ぐぅああああ!」

「学園は、新しく生まれ変わるんだ」


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ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

想「予想通りといいますか……本当に次々色々と起るものですね。」

やって来た逢岡さんはとても渋い顔だった。その理由はおれでも分かる。最近相次いでいる、役人や有力商人の屋敷への襲撃事件のことだ。

夜襲を仕掛け、屋敷の住人達を無茶苦茶に殴り倒し、また速やかに消えていくのだそうだ。

悠「悪しき古い血を抜いて、学園を生まれ変わらせる、でしたっけ?」

想「ええ。いつも現場にはそんな声明文が残されています。彼らの主張通り……といいますか、襲われているのは確かに、黒い噂のある人物ばかりなのですが……」

吉音「逃げる前に捕まえられないの?」

想「まずどこが襲われるのかが分からないので……不甲斐なく、申し訳ありません。夜回りを強化すると、別の警戒の薄い地区が狙われる始末。どうやら賊には優秀な指揮官がついているようですね。」

手薄な所を遅い、速やかに目的を達成しては撤退していく。間違いなく訓練されたコマンドー……もとい組織の行動だ。

でもそれなら、こんなことを繰り返してどうするつもりだ?本当に学園が良くなると思っているのか?
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