ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】

ー大江戸学園:五人組の屋敷ー

悠「おい、そのいい方は聞き捨て出来ねーぞ。訂正しろ!」

酉居「ほう、なぜだ?俺は事実をただしくいったまでだぞ」

悠「おれ達は、おれ達の学園生活を守るために頑張ったんだ。それのどこが悪い!」

酉居「なんの権限もない一般生徒の威力的自治行為を、暴力、テロリズムと呼ぶんだ。覚えておけ」

悠「テロ……だと?」

酉居の嘲笑に、おれまで絶句させられた。

ここぞとばかりに、酉居はずらずらと言葉を並べたてていく。

酉居「学園の平和を守りたいのなら、おまえたち一般生徒は飼い犬のように大人しく待っていろ。物事を正しく解決できるのは、俺のように理事会にも顔が利く身分の者だけなのだからな、ふははは!!」

左近「あのぉ、酉居の旦那。そろそろ」

酉居「ふはははっ!」

酉居は一方的に捲し立てると、高笑いを残して悠々と立ち去っていった。

左近「さてさて、寅さんもご苦労さんでした」

寅「ふん」

悠「寅……お前はなんだったんだ?」

寅「俺はコイツに雇われてただけだ、五人組の用心棒をやりつつ、万が一に瑞野が逃げだしそうになったら足止めをしろとな」

左近「ダブルスパイみたいなもんですかねぇ。ま、悠さんも鬼島殿もご苦労様でした。それじゃあ失礼しますよ。」

悠「……」

桃子「……」

おれにも鬼島にも、アイツらを追いかけてまで文句を言いかえす気力は残っていなかった。



ー大江戸学園:船着き場ー

瑞野「ひぃ……ひぃぃ……わしはどうなるんだぁぁ……」

酉居「大江戸学園の校長を務めたほどの人間なら、もう少し威厳というものを見せたらどうだ。もっとも、今それを見せたところで何か変わるわけでもないが」

瑞野「し、し、知って居るぞ。酉居君、キミも大御所の指示を受けているんだろう?学園の体制を作りかえるという、大御所の意思の元にやっただけなんだ。わかっておるだろう?」

酉居「何を言い出すかと思えば、他人の指示だった?妄言も大概にしろ」

瑞野「な、な、なんだとぉ!?」

酉居「仮に大御所なる人物がいたところで、失敗したお前を許すと思っているのか」

瑞野「それは……それは……しかしぃ……」

酉居「あぁそうだ、執行部から水都を消すことが出来たことだけは、お前のお手柄だったな。ヤツの考えは底が知れん。退場していただくことに越したことはない」

瑞野「おお、では……」

酉居「そういうわけで、お前は用済みだ。精々必死に次の職を探すことだな。おい、その肉ダルマを船に乗せろ。二度と学園関連施設へ立ち入らせるな」

瑞野「ぬぉぉお!裏切る気かこの若造がぁぁあ!わしがどれだけ学園のために尽力したのかをぉぉ!!まてぇぇえ!ああ、ああぁあああ~~」

酉居「まったく、俗物が。貴様など最初から捨て駒だということが分からんのか、誰にも成功など期待されていない。学園の膿を吸い上げればそれでいい。そして膿のたまったゴミ袋は、廃棄されるのが運命だ」



ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

瑞野校長は、不正金銭を受け取り、特定の学生に有利になるように計らっていた。

そのかどで免職・校外への追放となり、代わって教頭の飛鼎が、暫定的に校長代理となった。

悠「……か。随分なおおごとになったもんだなぁ」

吉音「明日香先生が校長先生だって。なんだかすごいねぇ」

悠「まぁ心配は心配だけど人気はあるし、瑞野みたいにはならないと信じたいな」

想「しばらくは物価も執行部の方で監視するといいますし、混乱も長くは続かないでしょう。ちいさな事件であれば、目安箱が機能してくれますしね」

吉音「うん!大きいところは詠美ちゃん。ちいさいところはあたしが!」

吉音はいつも変わらず、活力をみなぎらせている。この学園にも吉音と同じように、絶えない前向きがあるはずだ……と信じていよう。
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