ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】

ー大江戸学園:五人組の屋敷ー

悠「おっと、させないぞ」

おれは寅のまえに立ちはだかって護衛を遮断する。しかし、寅は相変わらず動かない。

桃子「さぁ、覚悟はいいか!」

瑞野「い、いぃ嫌だぁ……くっくく来るなぁ……わっ、私は校長なのだぞ、分かっておろうな……!?」

桃子「ああ、よぉっく分かって居るぜ。教師の分際で、生徒相手にあこぎな真似をしてくれやがった野郎だってなぁ!」

瑞野「ちち違う!それは違うぞ!価格操作をやっていたのは、あ、あいつら五人だ!私はやっておらん!」

桃子「てめえが、やらせていたんだろうがっ!」

瑞野「ひいいいぃ!!」

桃子「てめえの手を汚すならまだしも、生徒に悪事を唆し、その上前を撥ねてきたたぁ、もはや地獄送りじゃ生ぬるい。てめえは餓鬼道で、その腹ぁ引っ込めてこいやぁっ!」

瑞野「ひいいっやあぁぁ~~っ!!」

情けない悲鳴を漏らして竦み上がった瑞野の頭上へ、鬼島の刀が振り下ろされる!

まさにその寸前だった。

「そこまでだ!」

悠「うわっ?!」

謎の声とともに傍観を決めていたはずの寅がおれを突き飛ばして、鬼島の一刀を横合いからとはいえ掴み止めた。

それと同時にドカドカと足音荒く、部屋に入って来たひとたち。

その先頭に居るのは酉居と左近だった。

酉居は、おれたちを押し退けるようにして瑞野のまえに立ちはだかった。

悠「おい、お前ら今さら何のようだよ」

おれの設問を、酉居は一瞥しただけで無視して、瑞野の方に向き直った。

瑞野「お……おおぉ、酉居君!御伽ヶ島君!助けに来てくれたんだな」

酉居「……」

左近「……」

瑞野「さあ、校長命令だ。早く、この不良生徒どもをひっとらえたまえ!」

酉居「……ふっ、校長命令ですか。おめでたい男だ」

瑞野「と、酉居君?」

左近「失礼、三十分前にですねぇ。学園理事会においてアナタの懲戒免職が決定されましてねぇ」

瑞野「……え」

酉居「ほうら、これが罷免状だ。理事会の花押と透かしでも、じっくり眺めるといい」

酉居は懐から取り出した書状を、ひょいと放り投げる。

その書状を祈るような手つきで受け止めて目を通した瑞野の表情が、みるみる青ざめていく。

瑞野「あ、ああぁ……うぅ、嘘だ……こ、こんなの、偽物に、き、決まっておる……!」

瑞野が呻いているうちに、執行部らしき生徒たちがぞくぞく乗り込んで来て、瑞野を左右から取り押さえる。

執行部生徒A「……」

執行部生徒B「……」

瑞野「お、おい、なんのつもりだ……離せ、私は校長だ……校長なんだぞ……」

酉居「おい、おまえたち。早くこの老いぼれを連れていけ」

瑞野「いぃ嫌だあぁ……頼む、酉居君。後生だから、助けてくれ……酉居君、酉居くうぅん!!」

瑞野は恥も外聞もなく泣きじゃくりながら、執行部員たちに引っ立てられていった。

酉居「ふん、無様な、人間、ああはなりたくないものだ……そう思うだろ、鬼島」

桃子「……なんのつもりだ、てめえ。後から来て、美味しいとこだけ掻っ攫っていくたあよぉ」

酉居「まるで、自分たちがなにからなにまでやって来たみたいな言い草だな」

桃子「その通りだろうが!あたいらが身体を張って、奴らを追い詰めたんじゃねえか!!」

酉居「馬鹿か。おまえらのしたことは、ただの校内暴力だ」

桃子「なッ!」

にべもないひと言に鬼島は絶句する。怒りのあまり声も出せない、という顔だ。

だから、おれが代わりに抗議した。
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