ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】

ー大江戸学園:五人組の屋敷ー

五人組:参「チョっ、突然、ななななにをいいだすんですか?!」

五人組:壱「待ってください!倍出します!いやそちらの言い値で構わないので!」

伊都「お金じゃないのよ。それにもう決めちゃってるから。とらちー君はどうしますの?」

寅「……」

伊都「あら、無視ですの。まぁいいですわ、あとは皆さんでがんばってねー。」

五人組:参「あ……ああ……こんなときに!なんって人なんだ!」

五人組:肆「ハッ、最初っからあんなのを信用する方がおかしいだろ」

瑞野「う……う……う……どいつもこいつもわしをコケにしおってぇ……」

寅「…………来たか」

ズバッ!
瑞野「ひええぇ!!ななっなんだぁ!?」

五人組:弐「まさか、追っ手が!?」

五人組:壱「外だ!おい、障子をあけろ!」

桃子「待たせたな、悪党ども」

勢いよく開け放たれた障子の奥に居並んでいる面々を、鬼島は般若面越しに見据えて言い放つ。

五人組:肆「貴様、誰だ!?」

桃子「鬼さ。貴様ら悪党を叩きのめしにやってきた、な」

五人組:壱「なんだとぉ!?」

五人組:弐「そんなことより、町方はどうした!?用心棒どもは何をしている!?」

桃子「今日はいい天気だから、昼寝がしたかったみたいだぜ。全員揃って」

五人組:伍「ひぃ……そ、そんな……あれだけ雇ったのに……!」

桃子「五人組と瑞野校長!私利私欲のために学園を混乱に陥れた悪逆非道の数々、まさに鬼の所業!そんな非道の鬼どもはっ!このあたいが、似合いの地獄に送ってやらぁ!!」

翳していた打ち掛けが鮮やかに翻ったかと思うなり、取り払われた面の下から怒りの眼が現れる!

瑞野「ひひいいいぃぃっ!」

五人組:壱「うぬぅ!鬼島桃子!」

五人組:参「でっ、出合え出合えぇ!誰かいないのかぁ!?」

寅「……」

いつもどおりのド派手な登場を決めた鬼島の艶姿に、瑞野の悲鳴や五人組の怒号が飛び交う。

これだけ盛大に慌ててくれると、鬼島もわざわざ面と打ち掛けを用意してきたかいがあったというものだろう。

……ただ、寅は冷静というか興味なさげに傍観を決め込んでいた。

桃子「よぉっし、テンション最高潮!悠、行くぞぉ!」

悠「おうっ!!」

桃子「うおおおぉ!!」

打ち掛けを放り投げるやいなや、鬼島は抜きはなった刀を片手に部屋へと乗り込む。

悠「おれも行く……うおっ!?」

一呼吸だけ遅れて部屋に駆けあがったおれの目のまえに、早くも最初の犠牲者が吹っ飛んできた。

五人組:壱「うぎゃああぁっ!!」

咄嗟に避けたおれの脇を、ひとりの生徒が吹っ飛んでいく。開け放たれた障子から縁側を飛びこえて、さらに庭でバウンドしてから、転がっていった。

桃子「さあ、次々行くぞぉっ!!」

人間飛行機にされた仲間の姿に凍りついていた連中へ、鬼島は猛然と飛びかかっていく。

五人組:弐「うわああぁ!!」

桃子「ひとつ!ひとの涙と生き血を啜り!」

五人組:参「げっはぁああ!!」

二人目、三人目と立て続けにかっとばしたところへ、一人が破れかぶれに斬りかかる。

五人組:肆「くっ、くそぉ!」

悠「させるか!」

ゴッ!

桃子「ナイスだ、悠……ふたつ!不届き悪徳三昧!」

五人組:肆「ぐはあぁぁっ!!」

桃子「みっつ、醜いお江戸の鬼を……」

五人組:伍「ひっ……いいぃ!!」

桃子「成敗しちゃうぞ、桃子さん!!」

五人組:伍「あああぁ~っ!!」

五人組の最後のひとりが宙を舞って、庭に胴体着陸し、ぴくりとも動かなくなる。

一時的にとはいえ学園の経済を牛耳っていた黒幕たちの最期としては、呆気ないものだった。

いや……ある意味、華々しいか。

桃子「あ、しまった。四番を考えてなかった……まあいっか。とにかく、おまえで最後だ!」

瑞野「ひあぁ……!と、寅君!助けてくれ」

五人組の連中が伸されている間に逃げようとしていた瑞野は、鬼島のひと睨みで腰を抜かし、相変わらず傍観を決めている寅に助けを求めた。
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