ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】

ー大江戸学園:五人組の屋敷ー

桃子「シオン……てめえ、まだ性懲りもなく、悪党の味方をしてやがったのか!」

シオン「前にもいったはずだが、そんなこと知るか。私は誰に味方する気もない」

桃子「ぬかせ!現にこうして、瑞野の野郎を助けてるじゃねぇかっ!」

シオン「ふっ、違うな」

桃子「違ってねぇだろ!!」

シオン「私は瑞野を助けてるんじゃない……桃子、おまえの邪魔をしているんだ」

桃子「……相変わらず意味不明だが、あたいを怒らせたってのだけはよく分かったぜ……!」

シオン「それだけ分かれば上出来だ」

鬼島が金棒を投げ捨てて、収められていた刀を露わにする。

一方シオンの刀は下段から緩やかな弧を描き始める。

たちまち膨れ上がった一触即発の空気に、膝が震えたけれど、今は怖がっている場合じゃない。

悠「鬼島、いま助太刀を……」

だが遅かった。

「「うぉぉおおーーっ!!」」

青天の空を揺るがすような轟音と衝撃が一度きり。大きく短い残響が消えたあとに立っていたのは……

悠「鬼島!」

立っていたのはただひとり、鬼島だけだった。シオンは、庭のかなり離れたところに倒れ伏していて、その横には真っ二つに折れた刀が転がっている。

シオン「う……っ、うぅ……っ……」

桃子「……やっぱ分かんねぇ」

鬼島は、シオンを見下ろしながら独り言のように呟く。

悠「……」

桃子「あの構えのどこが必殺なのか、あたいにはさっぱりだ。普通に戦われてたら、一発当てる自信もないってのに」

シオン「う……っ……」

桃子「だから、分かんねえけど分かった。てめえがあの構えに拘るかぎり、てめえは一生、あたいには勝てないよ」

シオン「馬鹿、なっ……わたしに、輪月を捨てろというのか……っ」

シオンは倒れたまま息も絶え絶えに呻く。

だけど、鬼島はもうそれに答えることなく、おれの方へ向き直った。

桃子「だいぶ時間を食っちまった。悠、急いで探すぞ」

悠「あ……はい!」

おれは頷きながら、鬼島の背中を追いかけて、縁側から邸内へと乗り込んだ。


~~


瑞野「う、ううぅ~っ」

五人組:壱「校長、少しは落ち着いたらどうですか」

瑞野「こっこれが落ち着いて、いぃいられるかぁっ!!」

五人組:弐「慌てたところで、今さらどうにもなりませんよ」

五人組:参「そっ、そうですよ……こっ、こうなったらもう、やるしかないじゃ、な、ないですか!」

瑞野「なぁにが、やるしかないじゃないですか、だ!貴様らがそれでよくとも、私はそれじゃ困るんだ!ああぁ!!私の経歴が、慎ましやかな老後がぁ!!」

五人組:肆「知るかよ、んなこと」

瑞野「なにぃ!?今いったのは誰だ!?もういっぺんいってみろォ!!」

五人組:伍「校長、頼むから少し落ち着きましょうよ。それに、きっと大丈夫ですよ。あれだけ大勢、用心棒を雇ったんですし」

瑞野「そっ、そうだったな……暴れるしか能のない落ちこぼれどもでも、番犬の代わりくらいは務まるよな」

五人組:参「そうですよ!きっと大丈夫ですよね、拝神さん!右京山さん!」

伊都「ん~?さぁ~。伊都わかんなぁ~い」

寅「……」

五人組:参「えっ?いや、拝神さんだったら大丈夫……でしょう?」

伊都「お金をたくさんいただきましたしぃ、船を入れたり面白いな~~なんて思っていましたけどぉ。でもこれって、負けフラグがビンビンにおっ立てられていませんこと?」

寅「…………」

五人組:壱「ま……負けフラグ?」

伊都「わたくし、最後まであなたたちと運命を共にするなんて考え、サラサラありませんの。ですからこのあたりでもう失礼させていただきますわ。ごきげんよう」
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