ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【9】

ー大江戸学園:城前広場ー

詠美「必要だったから。役に立ったから。そんな理由で罰を減軽するのがいいことかしら?汚職が相次いで明るみに出て来ているこの状況。幕府の権威も失墜しかけている。そんな中で副将軍ともあろう者が、無断で莫大な公金を使用する……手心を加えるどころか、より強く罰する必要があるのではないかしら」

悠「……あ?」

あまりに正論過ぎて、言葉が出なかった。

おれと徳河さんの見ているところが違い過ぎる。それは以前本人からいわれたことでもあったけど……。

平良「私から補足するが、詠美は決して心を痛めていないわけじゃない。あくまで必要だから、こうしたんだ。言葉の上っ面だけで冷たいヤツだとは、思わないでくれよ」

悠「それは、わかっているつもりだが……」

平良「さらにいえば、光姫さんが悲劇のヒロインになり、詠美がヒールになる。そうして派手に皆の目を引きつけておけば、裏で色々とコトを進めやすくなるだろう?そのあたりは光姫さんも理解されているさ」

徳河さんも、長谷河も、おれみたいな講義をする人がいるってのは織り込み済みなのか。

悠「徳河さんは、それでいいんですか?なにかもっと……」

詠美「私が憎まれるくらいで学園が平穏を取り戻すのなら、それでかまわないわ。ふ……それに少々評判が悪くなったところで、私は徳河よ。地盤は揺るがないわ」

それが本心なのか、立場からの強がりなのかは分からない。

それでも徳河さんがそうありたいと思っているのは、おれにも伝わった。

平良「心配するな。詠美には詠美の考えがある。もうしばらくはじっくり見守ってやろうじゃないか」

悠「……わかった。余計なことで手間をとらせて、すみませんでした」

詠美「かまわないわ。そうしていってくれるひとがいることは、嬉しく思うから……でも私には私の、あなたたちにはあなたたちのやり方がある。それだけよ」

悠「……あぁ」




ー???ー

五人組:壱「な……なんだと、なぜ売ったんだこの馬鹿が!」

問屋「ひぃ!?いやだって、あれだけの額を積まれちゃそりゃ売るでしょう」

五人組:弐「浅はかな……金だけ持っていて何になるというのか」

五人組:参「我々は目先の金を求めて活動しているわけではないのに」

五人組:肆「俺たちがコントロールしているのは、品数でも価格でもない。その先にある消費者だ」

五人組:伍「十分な量の品が手に渡ってしまえば、我々がいくら金を持っていようがなんの意味もない。我々だけが供給する能力を持つ……それが重要だというのに」

問屋「そんな……そんなこと、俺にはわからないよ……」

五人組:壱「わからないで済むか!なぜ俺たちにひと言の相談もなかったんだ!」

五人組:弐「まぁまぁ……やってしまったものは取り返しようがつかない。それよりはこれをプラスに捉えるようにしよう」

五人組:壱「プラスに?」

五人組:弐「いかに幕府といえど、使用した金額を考えれば、余力は残っていないだろう。

五人組:伍「そうだな。つまりは弐度目はないという事だ」

五人組:参「もう一度同じところにまでもっていけば、今度は余計な横やりも入らない……!」

五人組:弐「もう一度追い詰めることができれば、今度こそ我々の要求を飲むしかなくなる。」

五人組:肆「フン……頭をひやせ」

五人組:壱「くっ……わかった。再度の巻き返しを図ることとする。しかしそれには迅速な行動が必要だ。物資の補給と備蓄を急がねばならん」

五人組:弐「その点は癪だが……力を借りなければならないな」

五人組:参「あのひとは頼りにならない気がするけど……」

五人組:肆「地位と権力があればそれでいい。ヤツ個人になどは何の興味もないわ」

五人組:伍「ああ……。近いうちに、誰が真の学園の支配者なのかを、思い知らせてやるわ」
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