ｰ大江戸学園:光姫の屋敷ｰ

左近「……っと、まぁ南町の逢岡様も頑張ってはくれていますが現状は変わりなしというところですねぇ。」

光姫「ふむ……やはり胃袋を握られておる状態では、立ち上がることもままならぬか。」

左近「はっはっ、初期であったならいざ知らず、今正面から挑むのは分が悪いでしょうねぇ」

光姫「あまりにのさばらせ続けておると、また酉居あたりがいらぬことを言い始めそうじゃしのう……」

左近「酉居の旦那も悪いひとじゃあ無いんですけどねぇ。いい人でもないですが」

銀次「ではお嬢、劇薬をつかうのかい?」

光姫「そうじゃな。強すぎる薬は自らの身体をも焼くことにはなるが……致し方あるまい」

由佳里「な……なにをするんですか?」

光姫「ハチ、お主は留守番じゃ。真留や唯あたりと遊んでおれ」

由佳里「ふぇ?ど、どうしてですかっ」

光姫「これからの愚行にお主を付き合わせるわけにはいかん。それにわしがおらん間に、代わりをしてくれる者が残っておらんとのぅ」

由佳里「いない間にって……」

光姫「こういう時のための副将軍なのじゃろうよ……」

左近「なんともまぁ、御立派なことで」

光姫「立派か……真に立派ならこうなる前に手を打ってでているだろう」

左近「遅すぎず早すぎず……なおかつ後の者へ希望を繋ぐ立派なものですよ。えぇ」

光姫「まったく、口の上手い奴め。それで、お主はどう動く?」

左近「そうですねぇ……まぁ、しばらくは酉居の旦那の側についてましょうかねぇ。その後は……水戸殿の話し相手にでもなりに来ますよ。謝礼分はきっちりと仕事するのが私の流儀なんでねぇ。」

光姫「ある意味、お主が一番先を見ているのかも知れんな……」

左近「はっはっ、そんなことないですよ。私はそこそこに権力があって楽にフラフラできる位置に居たいだけですからねぇ」

光姫「やれやれ……」

左近「はっはっは、それじゃあコイツを渡しておきますよ。関係する商人らの情報です」

光姫「うむ……ではゆくぞ、銀次」

銀次「了解だ」

由佳里「光姫様……!」




ｰ大江戸学園:商店ｰ

光姫「これ、ここの主人はおるかの?」

問屋「主人は私ですが、何か?」

光姫「商談がしたい。そりも大口のな。場所を移させてもらえんじゃろうか」

問屋「ふむ?わかりました。ではこちらへ」

光姫「うむ」


～～

問屋「それで商談というのはなんでしょう?」

光姫「うむ。単刀直入にいおう。お主の抱える倉庫にあるもの、すべて売ってほしい」

問屋「す……す、すべて!?」

光姫「そう。一切合財じゃ。ついでに次の仕入れ分の予約までできるとなお良いのぅ」

問屋「しかし、それほどの規模となれば、私ひとりで決断するわけにも」

光姫「金のことなら心配はいらぬ。これ、銀次」

銀次「おう。これでいいのかな?」

ドザッ!
問屋「おおっ!?こ、これは……!」

光姫「元の倍、現在の相場で考えても悪くない額じゃろう?それも現金じゃ。安心せい、全て本物じゃからの」

問屋「なんと……しかし、これは……」

光姫「なんじゃこれでは足らんと申すか。おぬしもがめつい男じゃの。しかしわしはいささか急いでおる。ここで決められぬのなら、他へ行くしかない」

問屋「ああいや待ってください!決めます!決めますから!」

光姫「おう、良かったぞ、お主が予想通りに離せる男でな。してそれを運びこむ場所じゃが……」

問屋「あ……あなたはいったい何者なんですか……」

光姫「隠居のまえに道楽をつくしてやろうという、ただのうつけ者よ」