ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー大江戸学園:船着き場ー

リュウノスケ『グルルゥ……ッ』

吉音「わわっ」

その行く手を遮ったのは、顔に十字傷を負った痩せ狼……シオンの剣魂リュウノスケだ。

いつもは消えているか、眠そうにしているかなのに、いまは険呑な目つきでおれ達を睨めつけている。

悠「……新、気をつけろ。こいつ、なんか危険そうだ」

他の剣魂もみたことあるが、こいつは相当、戦闘向けの剣魂らしい嫌な気配を纏ってやがる。

吉音「うん、わかってる。でも、この子をなんとかしないと、モココちゃんに助太刀できない……!」

吉音は焦った声で言いながらも、じりじりと間合いを測っている。

リュウノスケ『ぐううぅ……ッ……』

リュウノスケはおれと吉音を同時に見据えて、一分の隙も見せてはくれない。

吉音「うー、夜じゃなかったら、マゴベエも戦えるのにっ」

悠「鳥目じゃ仕方ないよな」

吉音「違うよ、お年寄りだから寝てるんだよ」

悠「あー……そう」

どっちにしろ、いま助けにならないことは変わらない。これじゃ鬼島さんを助けに行けない!

久秀「仕方ないわね……爆ぜなさい!」

気配を殺していた久秀が跳び出すと火薬扇を開いてリュウノスケ目がけ爆破をしかけた。

寅「かかったな!」

突如、跳びだして来た黒い影が久秀めがけて何かをぶつけた。パシャっと何かが破裂する音……。

久秀「くっ……これは……水?しまった、火薬が……」

寅「火薬が濡れちまったら……テメェは無力だろ」

悠「寅……まさか、お前もそっちについてたのかよ。おれが連絡したら無視したくせに」

寅「普段電話に出ないヤツがよくいうもんだな。まぁ……そんなことはどうでもいい。悠、こいよ。狼なんかより、俺の相手をしろ!」

悠「チッ!大神、シオン、寅……同時討伐とか難易度高過ぎだろ!」

寅「いくぞ、悠!!」

おれはずぶ濡れの久秀の肩を掴んで後ろに飛ばして寅のまえに出る。

シオン「くく……外野が騒がしいようだな」

桃子「こっちは時間がないんだ。本気で行かせてもらう!」

鬼島さんは金棒をひっつかむなり、勢いよく投げ捨てた。その下から現れたのは直刀……棍棒だとおもっていたのは鞘だったのか。

一方シオンの刀は下段から緩やかな弧を描き始める。

シオン「ふっ」

おれの耳にまで風を切る音が聞こえてくるほど強烈な斬撃。シオンはしかし、揺らめくようにかわす。

桃子「うわっ……!」

シオン「どうした、桃子。時間がないんじゃなかったのか?」

桃子「ぬかせぇ!」

続けざまに振るわれた直刀が、空気を裂いてうねりをあげる。

その音だけで斬撃の激しさが伝わってくるが、それはつまり、シオンの身体にあたっていないということだ。

寅「他所に気をとられてんじゃねーぞ!」

悠「ぐっ!」

細かなジャブが雨のように降ってくる。がっちりガードを固めても、じくりじくりと骨や腹筋になダメージが蓄積してくる。

隙を見て反撃に出なくてはいけないが、コイツのジャブの速さと連射力がえげつなくて亀状態に追い込まれてしまってる……。
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