ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】
ー大江戸学園:船着き場ー
悠「船、来ますかね……」
想「来ると信じて待つのみです」
おれの呟きに、逢岡さんは潜めた声で力強く頷いた。
おれたちが夜の港で息をひそめているのは、今夜、五人組の船が密入港するとの情報提供があったからだ。
これまでずっと後手を踏んでばかりだったのが、ここにきてついに、こちらから打って出る機会が訪れたのだ。
逢岡さんだけでなく、散開して各所に潜んでいる町方の全員が意気込んでいる。
往水「本当に来るんですかねぇ……ふあぁ」
……約一名を除いてはだけど。
吉音「いくみん、寝ちゃ駄目だよっ」
往水「そういわれても、ふあぁ、船が入ってきたら起こしてくださいな」
想「……はぁ」
逢岡さんも、さっまでの引きしまった顔を崩して、呆れた顔でため息をこぼしている。
この人がいると、緊張感を保つのも一苦労だ……って、案外、緊張をほぐすためにわざとあくびしてみせたとか?……いや、それは考え過ぎか。
久秀「起こすときは耳元で爆竹を鳴らしてあげる。盛大にね」
往水「ひぇぇ、おっかない」
悠「味方が動揺するだろ」
久秀「その程度で動揺する腑抜けが駄目なのよ」
久秀は笑顔で毒を撒く。頼んでみると、意外にすんなりと来てくれたのだが、機嫌は斜めらしい。
想「助力感謝しますよ。松永さん」
その気を察したのか逢岡さんが友好的に声をかけた。
久秀「ええ、それはもちろん。逢岡奉行のお困りとあらば、この松永久秀。喜んでご助力いたしますわ。……もちろん、お礼なんてものは望んでもいませんしね」
その言葉は見事なほど上っ面だけだった。手は貸してやる、ただしこれは貸し一つだ。覚えとけ。
悠「お前なぁ……」
久秀「なに?」
悠「なんでもない。スイマセン逢岡さん」
桃子「おい。お喋りもいいけど、きたようだぜ」
想「む……ッ」
鬼島さんの言葉で、緩みかけた雰囲気が、またぴんと張り詰める。
想「みなさん、手筈の最終確認です」
逢岡さんの潜めた声に、その場の全員、無言でうなずく。
悠「……」
想「いま入港したあの船が係留されて、荷降ろしが始まるのを待って、一斉に踏み込みます。船の規模からして、相手の抵抗も大きいと思いますが、ここであの船を押さえることは事態の解決に不可欠です。ですから、危険なことと承知のうえで、どうかご尽力をお願いします」
最後の言葉は、おれや吉音、久秀、鬼島さんに向けられたものだった。
桃子「いまさら水臭いこというなよ。あたいらだって端からそのつもりで覚悟を決めて来てるんだからさ」
吉音「そうだよ、想ちゃん。目安箱にも、物不足を早く解決してくださいって、いっぱい投書が来てるんだから。」
久秀「久秀の本業に五人組が介入してこられるのはムカつくし。ストレスのはけ口にさせてもらうだけだわ」
悠「そういうわけですから、おれ達に遠慮は要りません。頑張って、あの船を押さえましょう」
往水「そんじゃあ、アタシの分まで頑張ってくださいな。」
想「みなさん……ありがとうございます」
仲村の茶々を無視して、逢岡さんは微笑みながら頭を下げた。だけど、頭をあげたときはもう、笑みは消えている。
想「では、私が合図をするまで待機です。合図を出したら、一気に船内へ突入してくださいる」
吉音「うん、分かったよ!」
往水「あ、邪魔するヤツらを薙ぎ倒すのはいいんですが、あの船は壊したりしないでくださいよ。大事な証拠品なんですから」
桃子「どうして、あたいをみていうんだよ!?」
往水「いやですね、怖い顔しちゃって。冗談ですよ、冗談」
悠「あと、燃やすなよ」
久秀「ちっ」
悠「舌打ちは聞こえないようにしろ」
まったく、この動く火薬庫女はこれだから怖い。っか、仲村はこの状況で、よく冗談言えたな。ある意味、大物だ。
悠「船、来ますかね……」
想「来ると信じて待つのみです」
おれの呟きに、逢岡さんは潜めた声で力強く頷いた。
おれたちが夜の港で息をひそめているのは、今夜、五人組の船が密入港するとの情報提供があったからだ。
これまでずっと後手を踏んでばかりだったのが、ここにきてついに、こちらから打って出る機会が訪れたのだ。
逢岡さんだけでなく、散開して各所に潜んでいる町方の全員が意気込んでいる。
往水「本当に来るんですかねぇ……ふあぁ」
……約一名を除いてはだけど。
吉音「いくみん、寝ちゃ駄目だよっ」
往水「そういわれても、ふあぁ、船が入ってきたら起こしてくださいな」
想「……はぁ」
逢岡さんも、さっまでの引きしまった顔を崩して、呆れた顔でため息をこぼしている。
この人がいると、緊張感を保つのも一苦労だ……って、案外、緊張をほぐすためにわざとあくびしてみせたとか?……いや、それは考え過ぎか。
久秀「起こすときは耳元で爆竹を鳴らしてあげる。盛大にね」
往水「ひぇぇ、おっかない」
悠「味方が動揺するだろ」
久秀「その程度で動揺する腑抜けが駄目なのよ」
久秀は笑顔で毒を撒く。頼んでみると、意外にすんなりと来てくれたのだが、機嫌は斜めらしい。
想「助力感謝しますよ。松永さん」
その気を察したのか逢岡さんが友好的に声をかけた。
久秀「ええ、それはもちろん。逢岡奉行のお困りとあらば、この松永久秀。喜んでご助力いたしますわ。……もちろん、お礼なんてものは望んでもいませんしね」
その言葉は見事なほど上っ面だけだった。手は貸してやる、ただしこれは貸し一つだ。覚えとけ。
悠「お前なぁ……」
久秀「なに?」
悠「なんでもない。スイマセン逢岡さん」
桃子「おい。お喋りもいいけど、きたようだぜ」
想「む……ッ」
鬼島さんの言葉で、緩みかけた雰囲気が、またぴんと張り詰める。
想「みなさん、手筈の最終確認です」
逢岡さんの潜めた声に、その場の全員、無言でうなずく。
悠「……」
想「いま入港したあの船が係留されて、荷降ろしが始まるのを待って、一斉に踏み込みます。船の規模からして、相手の抵抗も大きいと思いますが、ここであの船を押さえることは事態の解決に不可欠です。ですから、危険なことと承知のうえで、どうかご尽力をお願いします」
最後の言葉は、おれや吉音、久秀、鬼島さんに向けられたものだった。
桃子「いまさら水臭いこというなよ。あたいらだって端からそのつもりで覚悟を決めて来てるんだからさ」
吉音「そうだよ、想ちゃん。目安箱にも、物不足を早く解決してくださいって、いっぱい投書が来てるんだから。」
久秀「久秀の本業に五人組が介入してこられるのはムカつくし。ストレスのはけ口にさせてもらうだけだわ」
悠「そういうわけですから、おれ達に遠慮は要りません。頑張って、あの船を押さえましょう」
往水「そんじゃあ、アタシの分まで頑張ってくださいな。」
想「みなさん……ありがとうございます」
仲村の茶々を無視して、逢岡さんは微笑みながら頭を下げた。だけど、頭をあげたときはもう、笑みは消えている。
想「では、私が合図をするまで待機です。合図を出したら、一気に船内へ突入してくださいる」
吉音「うん、分かったよ!」
往水「あ、邪魔するヤツらを薙ぎ倒すのはいいんですが、あの船は壊したりしないでくださいよ。大事な証拠品なんですから」
桃子「どうして、あたいをみていうんだよ!?」
往水「いやですね、怖い顔しちゃって。冗談ですよ、冗談」
悠「あと、燃やすなよ」
久秀「ちっ」
悠「舌打ちは聞こえないようにしろ」
まったく、この動く火薬庫女はこれだから怖い。っか、仲村はこの状況で、よく冗談言えたな。ある意味、大物だ。