ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー大江戸学園:輝の瓦版屋ー

悠「おーい、輝ー!来てやったぞ!」

雑多なものの積み重なった奥へと声かける。

輝「お、来たね。まあ入って入って」

悠「お、おう……」

いつもの感じで出迎える輝。

輝「さっそくだけど、悠ちゃん、コレ見てみてよ」

輝が取りだしたのは、何かの表だった。

悠「これは……港の仕様スケジュール?さすが瓦版屋。やるじゃん」

こんなものを手に入れてたのか。

輝「そうでもないさ。これは普通の学生でも見れる普通の予定表だよ」

悠「あーそう……」

輝「それでまあ、ちょっとみてごらんよ。一番忙しい時期が、こことここ」

悠「ほむ」

輝「本土からの物資が一番暑くなる週頭さ。雑誌やその他もろもろがはいってくるからここだけこんなに多い」

悠「そっか。知らなかったな。で、これがどうかしたのか?」

いまちい輝のいってることが分からない。

輝「いいからいいから。それで、だいたい積み下ろしにはこれくらい時間がかかっていて……」

輝は赤字でさっと一隻を囲む。

悠「……」

輝「だいたい他も同じくらいかかってるってわけさ」

そういわれてみれば、同じように入港、出港が並んでいっている。

悠「ほむ。なるほどね……ん?」

輝はその港の滞在時間を囲っていっているんだが……なんか、ところどころ、ポッカリ空いてるな。

輝「ふふ、さすが悠ちゃん気がついようだねえ。」

ちょうど、一回の積みおろしの時間だけ空いた場所がある。

悠「もしかしてこれ、もともと越後屋たちがアテにしていた船が来る時間なんじゃないか?」

輝「ご明察。正確にいえば、五人組が抱きこんでいる船以外が、来るはずだった時間だね」

悠「こう見ると結構抜けが多いな。さすがに五人組といえど、一気に圧倒できるほどの力は持ってないってことか」

輝「そうだね。それがあったらもう学園は落ちてるだろうし」

悠「でもこれじゃ、本当に品薄になるぞ。五人組自身も困るんじゃないのか?」

輝「じゃあどうするのか?……非公式に船を呼び寄せ、物資の補給をするのさ」

悠「密輸船か。それを押さえると少しは楽になりそうだが、しかし一体いつ迎え入れてるんだ」

輝「それでもうひとつ。こっちの方のデータを見てほしい……」

そういいながら、輝はまたガサガサと紙の束を引っ張ってきた。

悠「……こいつは?」

輝「コレは物価上昇が始まる前からの港のスケジュールだよ。見比べてみて、気づくことはないかい?」

というからにはあるんだろうな。輝から受け取り、おれも目を通す。昔に比べて入港してくる数が減っている。これはさっきの話にあった事だ。

それ以外となると……

悠「ん、これか?五日に一度くらい、突然夜がポカッと空くな」

以前はだいたい毎日同じくらいの時間まで散らばっているところが、船の問題が明るみに出た前後から定期的に夕方~夜の時間に空白が生まれるようになった。

輝「そう。こうして表になってると結構分かりやすいよね~。怪しいと思って裏を取ってみたら案の定さ。この時間帯に荷物積みおろしの人出の手配があってね」

悠「つまりここで船を密入港させてるんだな」

輝「もちろん断言はできないけど、何もないってことはないでしょ」

さすが自称とはいえジャーナリスト、抜かりはないな。
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