ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました

ー大江戸城執行部室ー

その頃、大江戸城執行部室では南北奉行及び火盗改を集め安全会議が行われていた。

本来なら徳河詠美が議長を務めるべき会議ではあったが、彼女は別件にて不在、老中酉居葉蔵のもとで行われていた。

酉居「なんども繰り返すが、今回の全校集会は大江戸学園開校以来初の将軍不在で行われるものとなる、執行部及び奉行にかかる重圧はこれまでに大きなものとなることが予想される。諸君らには責任と誇りをもって事に当たってもらいたい。ここに出席の諸君には言うまでもないことだろうとは思うが……現在のような緊急時においても重要会議を欠席する者もいるのでな」

酉居は空席を一瞥する。席の前には「北町奉行」のプレートが置かれている。

以上だと酉居が会議を締めると出席者は各々書類をまとめて席を立つ。
皆が退席していくなか、南町奉行逢岡想が酉居に近づき、声をかけた。

想「酉居さん」

酉居「なんだ、逢岡?」

想「本日の書類ですが、よければ私から北町奉行所に届けておきましょうか?」

酉居「ふん」

酉居は不機嫌な面持ちで鼻を鳴らすと、ぶっきらぼうに書類を想の胸元に突き出した。

想「お預かりします」

酉居「やつには危機感というものがあるのか。これだから与太者上がりを奉行などという重職につけることに…」

想「では、失礼します」

酉居「ふん」





ー大江戸城前・出入口ー

大江戸城から下城した想は並び歩く火盗改長官に語りかけた。

想「天狗党の件大変でしょう」

火盗「そちらもな」

想「いえ、この件については奉行所は火盗のサポートぐらいしか出来ずに申し訳なく思っています」

火盗「なに、十分さ。火盗改の一軍だけではゲリラ戦をやられては手も足もでない。広域に同心や岡っ引を回せる奉行所の協力がなければ押さえきれない。」

想「おそれいります。酉居さんに厳しくせっつかれていたようなので」

火盗「ああ。放っておけばいい」

想「そうなんですか?」

火盗「酉居は今回の全校集会を仕切ることで自らの影響力を強めたいのだろうな。」

想「確かに少々焦られているように見えます」

火盗「そりゃあ、奴は生徒から好かれてないからな」

想「は、はは…」

火盗「それより心配なのは朱金(あかね)の奴だ。あいつまた勝手に動いてるらしいじゃないか。逢岡は何か知ってるのか?」

想「私も詳しくは知らないのですが。一度火盗改長官としておたずねになられてはいかがですか?」

火盗「それは無理だ」

想「どうしてですか?」

火盗「私があいつから好かれていないからな。はははは」

想「…………」
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