ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

朱金「この店が潰れるとこっちも困るからな。延命に協力ってこった」

久秀「動物園で動物に餌をやってるの間違いじゃない?」

吉音「えへへ。」

悠「なんで照れてる?」

吉音「動物みたいに可愛いってことでしょ?」

久秀「えぇ、可愛いわよ。頭の悪い猿みたいで♪」

吉音「えへへ……ん?」

久秀「頭の悪いお猿♪」

吉音「なにそれ!ひっどーい!」

悠「そういや物価とは関係ないかもしれないけど、気になることが有った」

朱金「おう、なんだ?」

悠「ちょっと前にまたこの店を売ってくれとか言う奴が来たんだ。最近なりを潜めてたのに、また面倒なことにならなきゃいいんだけどな」

朱金「ふぅん?店を欲しがるヤツねぇ……」

珍しく、というと失礼だが、朱金は何事か考え込んでいる。

久秀「久秀の店なのに久秀に話しをしに来ないで店を売れだなんて根本が間違ってるわねぇ」

悠「おれの店だっつーの」

朱金「一方では物価高で困る商人がいて、一方では新たに店舗を欲しがる商人……?がいると商人の中でも得をしている奴と損をしているヤツがいるってことか?フム」

吉音「ふむ?」

さっきも調査といっていたし、朱金はこの物価上昇に、なんらかの裏があると考えているのだろうか。

実際、学園島は物資のほとんどを外からの輸送船に頼っている。それが安定している限り、学園内部の問題外で、物価の変動なんて起こるはずがない。

もしかするとこれは意外に奥の深い問題なのかもしれないな……。




ー大江戸学園:北町奉行所ー

吉音「たのもーう。ぁ、たーのもぉーーう!」

悠「おい新、なにしてるんだ」

吉音「なんとなく雰囲気でるかなと思って」

悠「あのなぁ……。道場破りじゃないんだから」

吉音「あ、そっか」

久秀「遊んでないでとっとと楊枝を済ませるわよ。」

吉音「あはは」

吉音が木戸を押すとドアはすっと開いた。特に鍵はかかってなかったらしい。

悠「しっかしこんな不用心でいいのかねぇ、奉行所ともあろう所が」

朱金「それはな、オレがひと払いをしたからだ」

悠「おわっ……いつからそこに!」

朱金「はっはっはっ、悠こそ不用心だぞ、隙だらけだ」

久秀「いいのよ。悠はぶん殴っても蹴り飛ばしても刺しても平気だから」

悠「よくねーし、平気でもねーし!」

久秀「むしろ殴られるために隙を出してるのよ」

悠「そんなわけねーだろ!」

吉音「悠、まぞ?」

悠「そんな言葉ばっかり覚えてるんじゃないよ!」

久秀「マゾの意味分かってる?」

吉音「悠のこと」

久秀「へぇ、分かってるじゃない」

悠「分かってねーよ!お前らは本当に何にもわかってねーよ!」

朱金「さて、と。お前たちの漫才を見てるのもいいけど、あがってくれ。先客も待ってる」

吉音「先客?」

朱金「ちまちま説明すんのもめんどくせぇや。来りゃ分かるって」

おれ達は朱金について奉行所の建物に入った。
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