ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー大江戸学園:とある商店ー

悠「……と、これで勘定頼むわ」

商人A「それではえーと……ふむふむ、これだけの額になります。よろしいですか?」

悠「あー?いやそんなはずは。いつもの茶葉でいつものセット数だぞ?間違ってないか?」

商人A「……ではもう一度。これが5パック。これが2パック。これが……」

悠「ちょっと待った!単価こんな高かった?」

小鳥遊堂で使う茶葉の仕入れに来た店で、出された見積もりは想像以上に高いものだった。

詳しく見せてもらえば、どれもこれもわずかずつではあるものの、軒並み単価が上昇している。

塵が積もって山になった形だ。

商人A「実は、問屋に示された額から既に値上がりしてたんですよ。これでも勉強している方で……」

悠「値上げってどうして?」

商人A「なんでも仕入れられた量が少なかったらしくて、利益を守るためだと言われれば、同じ商人としてはうなずくしかなくて……」

この商店とは、小鳥遊堂を開いたときからの付き合いである。

嘘をついて価格を吊り上げるようなことはしない人だし、言葉は信用できる。

悠「でも船が転覆したとか遅れているとかって話しは聞かないし、本土で何かあったって情報もない……どうして仕入れ量が減ったんだろう」

商人A「そこまではちょっと聞けませんでした」

ふーむ。発注の方に手違いがあったかな。それとも外部の会社の方に何かが有った?と、ここで考えていても真相は分からないな。

悠「ありがとう。とりあえずそれはその額でいただいていくよ。」

商人A「すみません。次回からはもう少し何とかしますんで」

悠「倒れちゃ意味無いし、ほどほどにな。もちろん期待はするけど」

商人A「はい。またよろしくお願いします」

物価高……仕入れ量の減少か。

彼の言葉を疑っているわけじゃない。信じている。でもそれを頭からうのみにしてかかるのも、商売人としてはよろしくない。

一応、他の店も回って裏を取ってみるか。

~~

商人B「あいすみません。今後ともごひいきにしていただければと」

悠「いえこちらこそ、こんな図々しい男をまともに相手していただいて、ではいろいろと厳しいでしょうが、お互い粘り強く参りましょう」

商人B「そうですね。飽きずにやることが肝要と申しますからね。」

悠「ふむ……こっちでも同じか」

これまで利用したことのない店も回ってみたが、そこでも反応は同じだった。

仕入れ量が減ってしまい、価格をあげざる得ない。顧客は不満そうにしながらも、あるものすべてを買い占めていった、のだそうな。

今後さらに値上がったときへの対処も含まれているんだろう。

なにが起こってるんだ……?この状態が一部の店舗だけの事体ならまだいいんだが……。

上申して調べてもらうにも時間がかかりそうなことだな。

荷物があるし、吉音も心配だし、一度戻るか……。



ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

おや、小鳥遊堂の前にひとがいる。お客かな?

吉音「あっ、悠~おかえり~」

「おお、あなたがこの茶屋のご主人ですか」

悠「ああ。すみませんちょっと買い出しに出ていたもので。何かお出ししましょうか?」

「できうれば、このお店をいただきたいのですよ」

悠「……あ?なんですって?みせ?」

「店です。小鳥遊堂を戴きたいと考え、交渉に来た次第でして」

吉音「この人一緒にお店をしたいから、仲間にならないかって言ってきたよ」

「その通りです。いきなり大通りは勇気が要りますし、武家屋敷街では実入りが期待できませんし、手を広げる足掛かりとしてちょうど良い立地なんですよ。隣には目標になる店もありますしね」

……やれやれ、よく狙われるんだな此処は。

そういや最初ここがボロになっていたのも、奪い合いで嫌がらせされていたから、とかだったけ。
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