ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー大江戸学園:北町奉行所ー

真留「さぁこれで小鳥遊さんには、なんでもひとつ、いうことを聞いていただきますからね!」

朱金「い……いやいや、それはもういいだろ?やらなくていいってことにしたんだしよ」

真留「いいえ、私は一理あると言っただけで、承服したわけではありません。つまりあの約束はまだ有効だったはずです!」

勝ち誇ったように声を張り上げ、胸を張る真留。

そりゃ真留としては、いわれたことを忠実に実行しただけだみんな……。

悠「あの……朱金さん」

朱金「……しかたねーだろ、こうなっちゃよ」

はぁ、おれも覚悟を決めるしかないのか。真留の根性に脱帽しておくか……。

悠「じゃあ、真留はおれに何をして欲しいんだ?」

真留「はいっ、もう最初から決めてありましたのですよ!」

悠「……?」



ー大江戸学園:大通りー

真留「えへへっ。こうしてなにもないのに、ふたりで歩くのははじめてですねぇ」

悠「あー、そうだな」

真留「なんだか今日は、すれ違う人の顔がよく見えます。たくさんの人に見られているようです。えへへ」

悠「……実際見られている気がするなぁ」

真留が楽しげにはしゃいでいるせいで。

真留が一本のゴホウビにと望んだのは、デート一回という内容だった。特別大変なことでもなかったのでOKしたんだけど、特になにもすることなく、うろうろ歩きまわるだけ……。

なのにとても楽しそうにしている。

悠「なぁ、えっと……アクセサリーでも見に行く?」

真留「いえ、もう充分に間に合っていますから。ありがとうございます」

悠「あー……じゃあ遊覧船にでも乗る?学園内の水路を回ってくれるらしいよ」

真留「私は小鳥遊さんと一緒に、こうして歩いている方が好きです。どこにいくにも自由ですから」

こんな風に、こっちから提案しても、なにもいらないというし。

悠「なぁ真留、デートって何かしたいことがあったわけじゃないの?」

真留「え、小鳥遊さんは退屈ですか?何かした方がいいですか?」

悠「そうじゃないよ。でもせっかく何でも言う事を聴くってことになってるんだし、もったいないような」

真留「それならいいんですよ。私はこうしているだけで充分に楽しいですから。それにこういうのも初めてだし、なにするのがいいとかもわかんないし……えへ、へへへ」

悠「おお……うん……」

はにかんで笑う真留。どうやら遠慮しているわけではないらしい。

真留「でもちゃんとドキドキするし、お散歩デートってことでいいじゃないですか」

悠「ドキドキ?おれとで?」

真留「それはそうです。私だって女です。男性が側に居たら、当然意識するってものですよ。ほら、みちゆくひとに自慢もできますからね」

そうか。おれも少しは、男として見られてるのかな。もしかして真留は、朱金へのアピールじゃなくて、このご褒美目的で頑張っていたのかな。……なんて考えるのは都合が良すぎるか。

悠「……」

真留「ん?えへへへ」

目が合うと、嬉しそうに笑ってくれる。あ、こっちもドキドキしてきたぞ。

悠「……真留さえよければ、他の人みたいに手をつないだり腕組んだりしてもいいんだぞ」

真留「え……えっ、でもそれは、そんなそんな、人まで破廉恥ですよっ」

破廉恥……そういわれてしまえばそうかもしれないが。

悠「ってそうだ、破廉恥といえばまえからひとつきになってたことがあるんだけど」

真留「はいなんでしょう?」

悠「それはレギンスじゃなくてスパッツだよな?下着だけどそんな恰好でいて大丈夫?」

真留「……どうして破廉恥でそんなことをおもいだすんですか」

悠「なんとなく」

真留「ほら、ちゃんと下にぱんつをはいているから大丈夫なんですよっ。」

ローレッグの可愛いオレンジ色のぱんつ。

悠「おー……」

真留「ってなにをさせるんですかもー!」

悠「真留が自分でしたんじゃないか」

真留「小鳥遊さんが破廉恥だなんて話を始めるからです!」

悠「先に破廉恥って言ったのは真留だろう?」

真留「たっ、小鳥遊さんが、手をつなぎたいって!……手をつなぎたいって、いうから」

悠「…………やっぱり手、つなぐ?」

真留「はぅぅん……」

もじもじと恥じらう真留からは、確かに女の子らしさが感じられたのだった。
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