ー茶屋ー小鳥遊堂はじめました【7】

ー新宿:茶屋小鳥遊堂ー

数日後。なわけだが……

『最近、北町の岡っ引の真留が、男の先輩と遊んでばかりいます。十手を預かっている身なのに不真面目です。不謹慎です。やめさせた方がいいと思います。』

悠「あーあ……突っこまれちゃったよ」

差し出し人は真留と同じ北町の子だ。相手がおれだと承知での投書だろうなぁ……。

光姫「ほっっ。さらに愉快なことになって来たの。」

悠「光姫さんまでそういいますか……」

由佳里「でもいろいろ噂になっちゃってますよ。真留さんは夜中お部屋に忍び込むくらいいれ込んでる、って」


悠「……間違っちゃいないところがまた困る」

吉音「すごいよまるるは。どこにいっても出てくるの。あれはきっと五人くらいいるね!」

悠「キジムナー、コロポックル、ピクシー、スライム、ハーヴェスト……かな」

もしくは新手のスタンド使いなんじゃないかと錯覚させられる。そもそも真留の剣魂自体がピストルズといっても過言でないし……。

しかも、実は今だって

真留「じぃ~……」

物陰から監視されてるんだよな。

久秀「残飯とか与えていいのかしらアレ?」

悠「お前は真留を野良犬扱いするんじゃない……」

コイツは本当に困った。真留の特訓には協力してやりたいけど、こっちが先に倒れてしまう。

光姫「おぬしも律儀な奴じゃのう。もっと気楽にしておればよいのに」

悠「そういうわけにもいきませんよ。真留は本気ですからね。」

光姫「かといってその無茶に付き合い続けるわけにもいくまいに、そろそろ腹をくくるべきではないかの」

悠「腹をくくる、かぁ……。」

久秀「次襲われたら再起不能にするとか」

悠「鬼かお前は!!」

久秀「あら、反撃しちゃいけないなんてルールは無いのでしょ?クスクス」

悠「はぁ……」


~数時間後~


吉音「それじゃーねー。またあしたー」

久秀「失礼するわ」

悠「おーう、おつかれかつかれー」

久秀「チッ」

閉店時間になり、吉音も久秀(舌打ち付き)も帰っていったる比較的賑やかだった今日も、これで一気に静かになる。

真留「ソワソワ」

真留はまだいるなぁ……。とりあえず気づかないふりをして、店の始末をしよう。

悠「…………」

真留「ちぇぇぇすとー!」

ガスッ!
悠「うわああっ!」

真留「……えっ?」

悠「いたたた……真留、こんな時まで狙ってたのか。ついにやられちゃったなー」

十手が叩きつけられた後頭部に、波のように痛みが広がっていく。

真留め、結構力入れて振り回してたんだな……。

真留「小鳥遊さん」

悠「ん?なんだ?そういえば何かお願い事を聴くんだったな。お手柔らかに頼むよ」

真留「小鳥遊さん、わざと当たりましたねっ!」

悠「……おぉう?」

真留「こんなのは無効です!ノーカンです!仕切り直しなのですっ!こんなのじゃぜーんぜん、一本取ったことになんてなりませんよっ!手加減なんてされても、嬉しくも何ともありませんっ!」

やべぇ……真留さんが怒り狂っていらっしゃる。これは逆効果だったのか。まさか芝居が見破られてしまうなんて……。

というか真留もそれで満足すればいいのに、どうしてそこまで真面目なんだよ。

悠「……あの真留さん」

真留「私は諦めませんからね!また明日からよろしくお願いします!!」

怒りながらも丁寧に、頭を下げて走り去っていった。あぁ本当に困ってなぁこれは……。

悠「とりあえず今夜は、ゆっくり寝れそうなのが幸いか」
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